【ライブレポート】ザ・クロマニヨンズの時間と空間を超えたロックンロール
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ザ・クロマニヨンズの全国ツアー<ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020>の東京公演(2019年11月19日(火)@TSUTAYA O-EAST)を行った。最新アルバム『PUNCH』を携えた今回のツアーは、10月30日に秋田・Club SWINDLEでスタート。2020年4月11日の北海道・名寄市民文化センターまで約半年に渡って行われる全58公演のロングツアーだ。10本目の公演となるこの日のライブでも、アルバム『PUNCH』の楽曲を中心に、「最高!」としか言いようがないロックンロール・ショーを繰り広げた。
「あしたのジョー」の丹下段平に扮した男性の前説、「打つべし!打つべし!おまえの鉄拳、叩き込め! ロックンロールの血が騒ぐ。ザ・クロマニヨンズです」という煽りに続き、甲本ヒロト(Vo)、真島昌利(G)、小林勝(B)、桐田勝治(Dr)がお揃いの“PUNCH”Tシャツ姿で登場。「オーライ、ロックンロール!」という甲本のシャウトとともに強烈なエイトビートが炸裂し、アルバム『PUNCH』の曲が次々と披露される。会場の熱狂は一気に上昇。オーディエンスは拳を上げ、激しく踊りまくりながらザ・クロマニヨンズの最新ロックンロールを全身で楽しんでいる。彼らのツアーを観るといつも感じることだが、最新アルバムの新曲が(まるで何年も前から演奏しているかのように)ライブという場所になじんでいて、凄まじく盛り上がっていることに驚かされる。
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甲本のブルースハープに導かれ、真島の裏打ちのギター、骨太のリズムセクションとともに強烈なグルーヴが「ケセケセ」、客席から「フッ!」「フッ!」という掛け声が起こり、「イェイ イェイ イェイ」というフレーズに合わせて甲本が身体をヒネってツイストを踊った「ビッグチャンス」。アルバム『PUNCH』の楽曲はツアー10本目にして、完全にライブ・アンセムになっていた。印象的だったのは、小林のベース、桐田のドラムがさらにパワーアップしていたこと。アルバム『PUNCH』を聴いたときも感じたのだが、このふたりによるリズムセクション(徹底して無駄を削ぎ落し、スピード感とパワーを最大限に発揮した)は、いまや完全にザ・クロマニヨンズの軸になっている。アルバムのインタビューの際に甲本は「僕たちよりもコビーとカツジのほうがサウンドのキモを握っているのかもしれない」という趣旨の発言をしていたが、それはライブでも存分に発揮されていた(ちなみにこの日、もっとも大きな声援を送られたいたのはカツジでした)。
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「ザ・クロマニヨンズです。よろしくお願いします」「この前、“ザ・クロマニヨンズです”というのを忘れてたことに気が付いて。それを意識してたから、今日は早目に言えました」という甲本ヒロトのユーモアたっぷりのMCの後は、アルバム『PUNCH』以外の曲をプレイし、当然のように爆発的に盛り上がる(とにかく曲をよく聴き込んでいるのだ、このバンドのファンは)。「ほかにもいい曲がたくさんあるので、ザ・クロマニヨンズのアルバムは全部聴こう」という甲本のトークも楽しい。
シングルにもなった「クレーンゲーム」もインパクト十分だった。まさにパンチを繰り出すかのように叩きつけられ、曲が進むにつれて疾走感を増していくビート、叙情性と解放感を併せ持ったメロディ、“やることやるだけ”というシンプルに真理を突く歌詞。鋭利かつキャッチーな真島のロックンロール・ギター、そして、全身全霊で言葉を放ちまくる甲本のボーカルもすさまじくカッコいい。
ライブ後半でもっとも心に残ったのは、やはりアルバム『PUNCH』の収録曲「リリイ」だった。フォーキーな手触りの旋律、郷愁を誘う歌詞の世界がひとつになったこの曲は、ザ・クロマニヨンズの歌の良さがじんわりと滲み出た名曲。真島のメロディアスなギターソロ(弾き終わった瞬間に甲本が拍手を要求する姿も何だかジンとくる)、エンディングで鳴らされる甲本のブルースハープの音色も素晴らしい。
「アルバムからは、あと1曲になりました。その前に、なんとなく盛り上がりそうな曲がここ(足元に置かれたセットリスト)あります。絶対、盛り上がると思うんですよ。ここからは最後までぶっ飛ばしていくぞ」(甲本)という言葉を合図に、ライブはクライマックスへ突入。「生きる」「エイトビート」などを次々と放ち、オーディエンスを熱狂の渦へと巻き込む。20分以上に渡って爆発的なロックンロールを叩き込む姿はまさに圧巻。痩身をしなやかに動かしながら感情豊かな歌を響かせる甲本、シンプルに研ぎ澄まされたギターを鳴らし続ける真島から目が離せない。日本を代表する伝説的ロックスターが、目の前で新しいロックンロールを生み出し続ける、奇跡のような瞬間がそこにあった。
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アンコールは、甲本、真島、小林が上半身ハダカで登場。「最後まで楽しんでくれてありがとうございました。もうちょっとやらせてください。ロックンロールやるぞ!」(甲本)と数曲を演奏。「楽しかった! またやらせてください!」(甲本)「またね」(真島)という言葉とともに90分のステージを締めくくった。
いまさら言うまでもなく、ザ・クロマニヨンズの音楽のスタイルは、2006年の活動開始以来、まったく変わっていない。パンクロック、ブルース、スカ、フォークなどをゴッタ煮にした彼らの音楽は、普遍的にして唯一無二。進化なんてまったく関係ない、時間と空間を超えたロックンロールを鳴らせるのは、やはりこのバンドだけだ。
Text:森朋之
撮影:柴田恵理
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