【インタビュー】龍玄とし、羽生結弦に引き出された「さらなる可能性」
■さらに進化、深化した歌になる
──向こう側にある「音色」という絵。まるで銀河の集まりのような、一つの小宇宙に見えました。
とし:あれは元々、令和という年号が発表された時に、令和の英語訳が“Beautiful Harmony”だという報道がされたんです。実は同じタイトルの自分の曲があって、“令和ってビューティフルハーモニーなんだ。龍玄としの時代じゃないか”とか思ったりして(笑)。だから縁起よく、金屏風のようなイメージで、まずは金をベースに塗ってみたんです。令和という時代を、美しいハーモニーの時代にしたいなという願いを込めて、描いていったんですけど、「マスカレイド」という曲に“音色”という言葉が出てくるので、それを絵のタイトルにして、“これからの新しい時代、世界中の人たちみんなで奏でるビューティフルハーモニーの音色を宇宙に響かせよう”というそんな願いを込めて描いたのが、あの絵です。
──一つひとつのテーマや意味を知ると、さらに楽しめると思います。<マスカレイド・展>はこのあと、9月22日から長野県北野カルチュラルセンター、10月26日からグランフロント大阪で開催されます。
とし:本当にまっさらな気持ちで感じていただきたいです。と言いながらだいぶ説明をしてしまいましたけど……映像と音とのコラボレーションも、東京は「マスカレイド」一つだけでしたが、長野からは二つに増えて、大阪ではできれば四つくらいまで増やそうと思って、今、制作中です。自分で作った音楽と自分で描いた絵を、今度は動かしてみて、プロジェクションマッピングとして作品を創作することも、新しい挑戦でもあるし、自分なりの表現ができるかなと思って、トライしています。
──今後は、絵を描くことが音楽作りにフィードバックすることもありそうですか。
とし:圧倒的にありますね。「マスカレイド」も、<Fantasy On Ice 2019>の時には、もうだいぶ違う「マスカレイド」になっていたし、自分で言うのも何ですけど、“自分もこんなにいいパフォーマンスができるんだな”という可能性を、羽生さんの演技や羽生結弦という「人柄」によって引き出して頂きました。今後、「CRYSTAL MEMORIES」もそうですけど、また新たな世界観が生まれて、自分の中でさらに進化、深化した歌になるんじゃないか、という、すごいワクワク感があります。相乗効果として、今度は絵がもたらしてくれる歌、そしてこれから生まれてくる新たな音楽も、とても楽しみにしています。
──そして、今まさに音楽を制作中なんですよね。
とし:はい。『IM A SINGER Vol.2』です。これは、どこまで話していいかわからないですけど、かなり幅広い音楽ジャンル、また幅広い年代の楽曲を網羅しているので、楽しみです。もう少しレコーディングも残っていますが、早く聴いていただきたいです。
──実はブログでは、ちらりとネタばらしをしていて。クイーンの曲と、松任谷由実の曲は、どうやら入りそうです。
とし:そうですね(笑)。ユーミンさんの「真夏の夜の夢」は、<Fantasy On Ice 2019>でも披露させて頂いていたので、今回入れることにしました。今まで自分の歌ってきた世界観とは違うアレンジをあえて取り入れて、「サルサロック」という新たなジャンルにチャレンジする龍玄とし、みたいになっています。ブログでちらりとお聴かせしたクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」も、いわゆる“超完コピ”したんですよ。コーラスも、全部自分でやったんですが、ハモリのフレーズ一つ取っても、尋常じゃないんです。メロディの飛び方もすごい。それを何十回も録って合わせたら、あんな美しいハーモニーになる。それを解析しただけで、鳥肌が立ちました。今はデジタルレコーディングでいろんなことができますけど、アナログの時代に、こんなフレーズをどうやって生み出し、どうやってレコーディングしたんだろう?と。フレディ・マーキュリーというアーティストの偉大さを改めて感じて、それを歌わせて頂き、そこでインスパイヤーされたものがまた絵に返っていくんです。あんな(メロディの飛んだ)歌い方をしたのに、一緒にすると、超美しい、刺激的なビューティフルハーモニーになる。だから絵を描いている時も、こんな様々な(激しい)描き方をしても、全体で見るとビューティフルハーモニーになる。美しく調和のとれた絵となる。70年代に作ってくれた、クイーンの素晴らしいナンバーが、今僕に、絵に向かうアイディアと想像力を与えてくれた。それはもう、時空とジャンルを超えたクリエイティブなアートコラボレーションですね。
──まさに。
とし:クイーンとのコラボレーションで、絵の中に魂が宿っていると言っても過言ではない。それも音楽とのコラボレーションなんですね。思いもよらない緻密なメロディーライン、レコーディング手法で作り上げた斬新なる美しきアート、だから今でも輝き続ける曲なんだという、偉大さを感じました。完コピしましたから、龍玄とし流のものにはなっていますけど、本当にリスペクトを込めてやらせてもらいました。
──そういう曲が令和の時代に出る。運命だと思います。
とし:ありがたいです。自分が子供のころに、近所のお兄ちゃんに、“としくんの声はフレディ・マーキュリーに似ているから”と言われて、そうなんだと思って、当時はキッスとかクイーンが流行っていた時代なので、小学生ながらに聴き始めた。海外のボーカリストとして初めてすごいと思った、自分の声に似ているとそのお兄ちゃんに言われた人の歌を、40年以上たって、子供の頃に聴いたあの気持ちに戻って歌えるなんて、こんな幸せなことはない。それこそシンガー冥利に尽きる、まさに“IM A SINGER”で、こんな機会を与えてもらって本当にありがたいなと思います。
──アルバムの完成を楽しみにしています。
とし:はい。また、これからも音楽を絵で表現するという龍玄としならではのアートの世界も追求していきたいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。
取材・文◎宮本英夫
◆写真ページ
<マスカレイド・展 音の世界を、描く>
2019年9月22日(日)〜10月6日(日)
会場:長野県北野カルチュラルセンター(公益財団法人北野美術館 別館)
開館時間:10:00〜18:00(17:30最終入場)
■大阪 EXIBITION
2019年10月26日(土)〜11月17日(日)
会場:大阪府グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル 地下1階イベントラボ
開館時間:10:00〜20:00(19:30最終入場)
前売りチケット:チケットぴあにて販売
大人:前売り1,800円(当日 2,000円)
学生(小、中、高校生):前売り800円(当日 1,000円)
※入場時、学生証の提出をお願い致します(小学生は除く)
未就学児童:無料
※会場への直接のお問い合わせはご遠慮ください
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