【ライブレポート】DISH//、雨のコニファーフォレストで真価発揮「今日、伝説のライブっぽいっす」

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いわゆる“伝説のライブ”の必須条件が、類まれなパフォーマンスにあることは言うまでもないだろう。そして、予想外のアクシデントがそのトリガーとなることも珍しくない。いわゆる“ピンチはチャンス”というやつだが、それを成し得るか否かは、ひとえにアーティスト自身が、どれだけの地力とライブに対する覚悟を持っているかにかかっている。つまり試練に見舞われたときこそ、そのアーティストの真価が問われるのだ。

8月18日、真夏の雨が降りしきる富士急ハイランド・コニファーフォレストでDISH//が見せてくれたものは、まさしく逆境から伝説への見事な変転だった。

◆<DISH// SUMMER AMUSEMENT ’19 [Junkfood Attraction]>画像

まばゆい黄色の衣装に身を包み、舞台裏からステージへと移動する4人がリアルタイムで大型ビジョンに映し出されると、ライブは4月にリリースされた最新アルバム『Junkfood Junction』と同じく「This Wonderful World」でスタート。リーダーの北村匠海(Vo)が“君と僕との素晴らしい一日にしようよ”と伸びやかに謳い上げて、DISH//史上最大規模となる野外ワンマンの成功を1曲目から約束すれば、雨もピタリと勢いを緩める。続いて「僕たちがやりました」「勝手にMY SOUL」とアルバム収録の人気シングルをロックに叩きつけ、前者では矢部昌暉(G)がブルージーなソロを披露。後者ではまたもや“きっと素晴らしい日”と歌って客席を沸かせるが、アイロニカルな響きで1曲目とは全くムードの異なる一体感を生み出していくのが面白い。



かと思いきや、大型ビジョンにスマホの枠を二つ並べてメンバーと客席のスラッシャー(DISH//ファンの呼称)を映し出し、まるでSNSでやりとりしているかのような粋な演出で見せた「スマホの中のラブレター」からはラブソングを連打。あいみょんが曲提供した「へんてこ」では恋の始まりを甘酸っぱくメロディックに謳い上げ、ギターを抱えた北村と矢部が織りなすボーカルハーモニーにも胸がキュンと高鳴る。また、橘柊生(Key/DJ)の鍵盤プレイから幕開けたバラード「理由のない恋」では、タイトル通りの率直な想いをメンバー4人で順に歌い継ぎ、その想いの深さに客席からは拍手が。『DISH// SUMMER AMUSEMENT’ 19 [Junkfood Attraction]』というライブ名が表すように、ジャンクフードのように味の濃いバラエティ豊かなアルバム収録曲を、アトラクションのように次々に供してゆく。


「シンガロングのロック、可愛い曲とやってきて、最近やらなかった曲もやったりやらなかったり……?」という矢部のMCを裏付けるように、ここで純然たるロックバンドのパフォーマンスから一転、“楽器を持って踊る”ダンスロックバンドの真骨頂で魅せるブロックに。

「TENKOUSEI」で橘が前へと飛び出し、フロント3人でダンスを見せる姿は結成初期から見慣れたものだが、今はバンドマンとしてのテクもしっかり備えているのが昔とは違うところ。DJスクラッチからドラムソロ、そしてギターソロと目だけでなく耳でも魅了し、続く「ピーターパンシンドローム」では“大人にならない子供”を表したタイトル通りヤンチャに駆け回りながらも、きっちりタイトに生演奏。橘が攻撃的なラップを放つ「HIGH-VOLTAGE DANCER」で全員が活き活きと躍動するステージに、楽器を“弾いていない”自分たちに引け目を感じていた彼らの姿は、もう、どこにもなかった。

ここで入場時に配布された紙皿についての注意映像を挟み、スラッシャーの準備が整うと、「GRAND HAPPY」が流れてトロッコに乗った4人が客席に登場! 通路をくまなく移動しながら8000人のスラッシャーと共に紙皿を上空へと投げ飛ばして、一大アトラクションを創り上げる。



空へと無数にフライングディッシュが舞う光景も、ずっと続いてきた彼らだけの専売特許だが、そこに普段と違う彩りを加えたのが強くなってきた雨足。センターステージに移動した4人は「雨ヤバいよ」「楽器大丈夫?」と不安げな様子ながらも、アルバムに収められている「乾杯」をアコースティックアレンジで届けてゆく。それに先立ち、橘はメンバー全員で歌詞を書いたこの曲の制作秘話を告白。グループの活動について悩んでいた昨年末、忘年会で想いをぶつけ合い、結局はみんなDISH//のことが好きなんだという結論に至って乾杯を交わしたのをキッカケに、泉大智(Dr)が書いてきたサビ詞が“乾杯 そんで アイラブユー”なのだという。ならば、もう上を目指して頑張っていくしかない――そうしてDISH//への愛を確かめ合ったナンバーは冷たい雨の隙間を縫い、アコギ、カホン、キーボード、タンバリンの生音で、聴く者の心をしっかりと温めてくれた。


スラッシャーたちとも「乾杯!」の声を交わし合い、さらにアコースティック演奏を続けようとするが、ここで激しく降りしきる雨に鍵盤がダウン。機材チェンジを余儀なくされるものの、動じることなく「緊急事態のMCタイム!」とメンバーにトークを振って対応できるのが、結成から8年目を迎える彼らの強みだ。矢部が泉を某テーマパークに誘ったものの断られたというエピソードで客席を笑わせ、ようやく準備が整っての「君がいないと」で4人が歌声を揃えると、既に空は真っ暗。「寒いよね。今からあったまるから」と橘が告げ、このライブに向けて7月に発表された最新シングル「NOT FLUNKY」からは、パッション溢れるバンドプレイで熱いラストスパートへと突入する。事前に公開されていたダンス動画で予習済みのスラッシャーたちは、レトロな風味のあるロックチューンで一斉に踊り狂い、ペンライトを掲げて曇った夜空を照射。BISHのアイナ・ジ・エンドとコラボしたゴリゴリのヘヴィロック曲「SING-A-LONG」では、炎が噴き上がるステージに向けて身体を揺らし、そのままUNISON SQUARE GARDENの田淵智也が楽曲提供した「ビリビリ☆ルールブック」へと雪崩れ込んで、狂騒の宴を繰り広げてゆく。

ライブの定番シングル「愛の導火線」では、北村が「まだまだ声出せるよね!?」とスラッシャーを煽りまくった末に「富士山ー!!」と絶叫。続いて火薬の特効が爆発して橘が花道へ飛び出せば、客席に掲げられた無数のペンライトも命を宿したように躍って、まさに“火がつく”とはこのことかと実感させる。スラッシャーの、そしてメンバーの心のタガを外してくれたのは、雨の中でのライブという非現実空間。これぞ、まさしく怪我の功名と言えるだろう。

「今日という日は雨が降ったかもしれない、ハプニングが起きたかもしれない。でも、ムチャクチャ楽しいです。一緒に騒いでくれるみんながいるからムチャクチャ楽しいんだなって思います。最後に、みんなに精いっぱいの想いを込めて歌います」

そう北村が感謝を伝えてのラストソングは、アルバムでも最後を飾っていた「DAWN」。壮大なバンドサウンドの響きに会場一体となってのコーラスが重なると、ゴスペルのような荘厳さを醸して、噴き上がるバーナーの炎を神聖に映し出す。最後に一人、花道へと進み出た北村は身体中でスラッシャーたちの声を受け止め、“おかわり!”コールに応えてのアンコールでは、新体制となっての再出発を刻んだ「Starting Over」で「これはみんなの歌でもあるから」と、スラッシャーたちの合唱を所望。その声と共に改めて夢への道を誓うと、「東京VIBRATION」で一斉にタオル回しの嵐を巻き起こして、北村は「たぶん今日……また伝説のライブっぽいっす」と、心の底からの本音を漏らす。そして「この時間はマジで特別で、素晴らしい一日でした!」と今日二度目の「This Wonderful World」を全力で贈り、ライブ冒頭の約束が予想とは違う形で、けれど、しっかりと叶ったことをスラッシャーと確認し合った。

「素晴らしい一日でした、ありがとうございました!」と曲終わりに北村が叫ぶと、なんと上空には約100発の花火が打ち上がって、真夏の夜の思い出を8000人で共有。橘は「雨ザンザンのなか、こんなに盛り上がってくれるファンを持ってるなんて、ホントにDISH//愛されてるなぁって感じた1日でした」と感慨深げに語ってくれたが、それもすべて“ファンはアーティストの鏡”のなせる業である。



終演後には11月より初の秋冬ツアーが全国12都市のライブハウスで開催されることも発表。より親密な空間で、またスラッシャーたちと共に夢への一歩を踏み出してくれるだろう。

取材・文◎清水素子

セットリスト<DISH// SUMMER AMUSEMENT’19 [Junkfood Attraction] >

M1 This Wonderful World
M2 僕たちがやりました
M3 勝手にMY SOUL
M4 スマホの中のラブレター
M5 へんてこ
M6 理由のない恋
M7 TENKOUSEI
M8 ピーターパンシンドローム
M9 HIGH-VOLTAGE DANCER
M10 アイロニスト
M11 GRAND HAPPY
M12 クイズ!恋するキンコンカン!
M13 乾杯
M14 君がいないと
M15 NOT FLUNKY
M16 SING-A-LONG
M17 ビリビリ☆ルールブック
M18 愛の導火線
M19 JUMPer
M20 DAWN
EN1 Starting Over
EN2 東京VIBRATION
EN3 This Wonderful World

■リリース情報

「NOT FLUNKY / THIS IS WHAT DISH// IS -完全版-」(CD+DVD)
2019年9月25日(水)SONY MUSIC SHOP限定通販リリース
価格:3,000円(税込)2,778円 (税別)
※歌詞カード付

(CD収録曲)
1.NOT FLUNKY
2.Rock Your Body Rock
+コニファーフォレスト公演のライブ音源を3曲収録

(DVD収録内容)
ドキュメント映像「THIS IS WHAT DISH// IS -完全版-」(約60分。コニファーフォレスト公演オフステージ映像&メンバープライベート映像も収録。)

予約受付サイト
https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&cd=SRC7000000016&cid=os-SRC7000000016

DISH//ニューシングル「NOT FLUNKY」配信リンク
https://smr.lnk.to/qkJ3jWN

<LIVE TOUR – DISH// – 2019>

【広島】BLUE LIVE HIROSHIMA
11月9日(土) 開場16:45/開演17:30
公演に関する問い合わせ:夢番地広島 TEL:082-249-3571 (平日11:00〜19:00)

【香川】高松MONSTER
11月10日(日) 開場15:45/開演16:30
公演に関する問い合わせ:DUKE高松 TEL:087-822-2520 (平日11:00~18:00)

【大阪】Zepp Namba
11月15日(金) 開場17:30/開演18:30
公演に関する問い合わせ:キョードーインフォメーション TEL:0570-200-888(毎日10:00~18:00)

【福岡】Zepp Fukuoka
11月21日(木) 開場17:30/開演18:30
公演に関する問い合わせ:キョードー西日本 TEL:0570-09-2424 (月〜土曜 11:00〜17:00※日曜・祝日休み)

【鹿児島】CAPARVO HALL
11月24日(日) 開場15:45/開演16:30
公演に関する問い合わせ:キョードー西日本 TEL:0570-09-2424 (月〜土曜 11:00〜17:00※日曜・祝日休み)

【北海道】Zepp Sapporo
11月29日(金) 開場17:30/開演18:30
公演に関する問い合わせ:マウントアライブ TEL:011-623-5555 (平日11:00〜18:00)

【宮城】チームスマイル・仙台PIT
12月1日(日) 開場15:30/開演16:30
公演に関する問い合わせ:キョードー東北 TEL:022-217-7788(平日11:00-18:00/土10:00-17:00)

【富山】MAIRO
12月7日(土) 開場15:45/開演16:30
公演に関する問い合わせ:キョードー北陸チケットセンター TEL:025-245-5100(火~金12:00~18:00 / 土曜10:00~15:00 ※休業日:月・日・祝日)

【新潟】新潟LOTS
12月8日(日) 開場15:45/開演16:30
公演に関する問い合わせ:キョードー北陸チケットセンター TEL:025-245-5100(火~金12:00~18:00 / 土曜10:00~15:00 ※休業日:月・日・祝日)

【愛知】Zepp Nagoya
12月12日(木) 開場17:30/開演18:30
公演に関する問い合わせ:サンデーフォークプロモーション TEL:052-320-9100(毎日10:00~18:00)

【山梨】甲府CONVICTION
12月15日(日) 開場15:45/開演16:30
公演に関する問い合わせ:キョードー東京 TEL:0570-550-799(平日11:00~18:00・土日祝10:00~18:00)

【東京】Zepp DiverCity
12月26日(木) 開場17:30/開演18:30
公演に関する問い合わせ:キョードー東京 TEL:0570-550-799(平日11:00~18:00・土日祝10:00~18:00)

≪チケットについて≫
スタンディング6,900円(税込・ドリンク代別)
指定席6,900円(税込・ドリンク代別)※大阪・福岡・札幌・愛知・東京のみ
着席指定席6,900円(税込・ドリンク代別)※大阪・福岡・札幌・愛知・東京のみ
着席皿ファミリー//席6,900円(税込・ドリンク代別)※大阪・福岡・札幌・愛知・東京のみ

≪各席種注意事項≫
■スタンディング
※3歳以上はチケットが必要となります。
※整理番号順でのご入場となります。

■指定席
※3歳以上はチケットが必要となります。
※3歳未満のお子様は大人1名につき1名まで膝上に限り無料。ただしお席が必要な場合はチケットが必要です。

■着席指定席
※完全着席の席です。お座りになってご覧になりたい方はこちらの席種をお選びください。
※3歳以上はチケットが必要となります。
※3歳未満のお子様は大人1名につき1名まで膝上に限り無料。ただしお席が必要な場合はチケットが必要です。

■着席皿ファミリー//席
※完全着席の席です。
※子供(中学生以下)1名につき、大人(高校生以上)3名までお申し込み頂けます。
※3歳以上はチケットが必要となります。
※3歳未満のお子様は大人1名につき1名まで膝上に限り無料。ただしお席が必要な場合はチケットが必要です。

■ライブ/イベント情報

<長岡米百俵フェス~花火と食と音楽と~2019>
2019年10月12日、13日
新潟県の東山ファミリーランド

<週刊少年ジャンプ「NARUTO-ナルト-」20周年記念『NARUTO to BORUTO THE LIVE 2019』>
2019年10月6日(日) 14:00開場15:00開演予定
幕張メッセ イベントホール

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