【インタビュー】氷川きよし「歌を歌えば全部伝えられる」

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2000年、華麗なる演歌のプリンスとして「箱根八里の半次郎」でデビューを果たし、積み重ねること20年ものキャリアを経て、氷川きよしは、演歌から歌謡・ポップス・ロックまでをも自在に歌い分け、様々な音楽の顔色を表現しうる稀代のボーカリストにまで成長を遂げていた。誰も到達し得ないであろう圧倒的な歌唱力と表現力、そして多くの人を引きつけるキャラクターと甘いマスク…、日本が生んだ偉大なるボーカリストは、世界を舞台にその歌声を響かせる並々ならぬポテンシャルをも湛えている。

20年のキャリアで彼は何を思い、何を目指し、どこに向かっていたのか。20周年を記念したコンサート<氷川きよし デビュー20周年記念コンサート ~あなたがいるから~in 大阪城ホール>も成功裏に終わらせ、WOWOWでのライブ放送が待ち遠しい中、BARKS初の直撃インタビューを敢行した。


──デビューして20年前、今のご自身のアーティスト像は、あの頃の自分にとって想定内ですか?

氷川きよし:そうですね…演歌に出会ったのは高校に入ってからで、それまではアイドル歌手やヴィジュアル系バンドに憧れていましたから。

──え?そうなんですか?

氷川きよし:演歌でデビューして、ファンの皆様のおかげでヒットさせていただいたので、演歌の道をひた走ることになったのですが、どこかで変な自信はあったような気はします。自分のような存在は珍しかったし、「茶髪でピアス…そういう男性が演歌を歌ったら興味を持ってもらえるかな…」というようなイメージはあったので。

──「演歌を歌おう」と決めたところで、誰もが歌えるものではないですよね。幼少のころから歌がうまいという自覚があったのでしょうか。

氷川きよし:5歳くらいのとき、親戚の前でカラオケを歌って褒められたんですよね。そのときの「照れて恥ずかしい」気持ちと同時に「喜ばれた!」ということを鮮烈に覚えているんです。

──そのときが、アーティスト氷川きよしの誕生の瞬間だったのかも。

氷川きよし:そうかもしれないですね。もともと喋りベタですし引っ込み思案でしたけど、歌を歌えば全部伝えられると思いました。

──デビューしてからは輝かしき成功の道程を描くわけですが、挫折や壁にぶつかったことはないのでしょうか。

氷川きよし:それはありますよ。最初はコブシもうまく回せなくて「母音にフシを付けるのがコブシ」ということもわからなかったですから。それでデビューして4~5年のとき、歌いすぎで喉にきました。だましだましやってきたんですが、喉にポリープができて声ががらがらになっていったんです。「それでも歌うのがプロなんだ。お客様が待っている」と思って、そこからさらに10年ほど頑張ってきたんですけど、さすがに喉も限界に来て、もう我慢できない状態になったので、全ての予定を白紙にして1ヶ月ちょっと休んで喉の手術をしたんです。

──ずいぶん無理をしてきたんですね。

氷川きよし:でもね、手術したことで楽になって、いろんな曲が歌えるようになったんです。自分の思っている音の高さに全部いけるようになった。一番のストレスは「自分の思った音にいけないこと」でね、そこが一番つらくて「本当はここのキーまでいけるのに、できない」という思いを、何年も我慢してきましたから。思った表現ができないことって、窮屈ですごく苦しいんです。

──僕らの知っている氷川きよしの歌唱の多くは、本人にとって完璧なものではなかったんですね。

氷川きよし:手術をしたことで、いろんな曲が舞い降りてきたんです。「限界突破×サバイバー」とか、このキーを使ったら自分の一番いいところが出るという曲が出てきたから、そこから開けてきましたよ。「歌が楽しい」って(笑)。

──ミュージシャンとしても視野が広がって。

氷川きよし:広がりました。スコーンと抜けていくヌケ感とかね。これまでのイメージもありますけど、自分の持っているもの、自分の良さをもっと出せていけるということで、自分の未来が広がっていきましたよね。更に上を向いて歩けるようになりましたから。強くなれたっていうのかな。


──2020年のオリンピックに向けて日本の音楽にも注目が集まると思いますが。

氷川きよし:日本の音楽を海外の人に伝えるのであれば、僕はやっぱり「音頭」だと思うんです。しかも変に現代風にしたものではなく、スタンダードな音頭です。音頭ってループしているリズムの感じが気持ち良いので、日本独自の太鼓とか小気味のいい感じは、海外の方も嫌いではないと思うんですよね。ソーラン節のようなノリとハウスって、実は似ているんですよ。

──なるほど。今後もよりいっそう楽しみですね。

氷川きよし:演歌はもちろんですが、ジャンルにとらわれず、楽しみながら自分が歌いたいと思う曲を歌っていけたらいいと思っています。年齢的にも、もう42歳ですから(笑)、自分らしく音楽を楽しみながら、「音楽」というもので「いい言葉」を伝えていきたいんです。「自分らしく生きよう」「自分自身を否定しなくていいんだよ」「自分自身と闘っていこう」と、みんなを励ますような言葉を歌っていきたいんです。ジャンルや形式に拘らず「何を伝えたいか」「伝えたいことは何なのか」が最も重要なことですから、言葉・ストーリー…詞の内容があれば、どんな音楽でもいいんだと思っています。

──20年間歌い続けて到達した思い、ですね。

氷川きよし:そうです。「言葉を伝えるために歌っているんでしょ?」ってことです。人に喜んでもらう幸せを感じながら、音楽を楽しみたいと思っています。

  ◆   ◆   ◆


7月11日・12日に日本武道館で開催された<氷川きよし デビュー20周年記念コンサート~龍翔鳳舞~>では、年齢の数だけ歌うと宣言、3時間10分にわたって全42曲とWアンコール1曲の全43曲を披露した。20年の活動を総まとめするように、演歌・歌謡からラテン、ロック、ポップス…といった様々な曲を7色の衣装とともにパフォーマンス、どこの誰もなし得ないオールラウンドな音楽エンターテイメントを見せつけることとなった。

氷川きよしの誕生日である9月6日に開催された<氷川きよし デビュー20周年記念コンサート ~あなたがいるから~in 大阪城ホール>も、誕生日と20周年を祝うコンサートとして、氷川きよしの全てがはじける極上のステージが繰り広げられたが、10月27日にはそのコンサートの模様がWOWOWにて放送となる。ジャンルを飛び越え、歌に人生を捧げる氷川きよしの圧倒的な存在を、とくと楽しみ堪能してみてほしい。

取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也

『ヴォーカリスト 氷川きよしの魅力』

9月22日(日)午後3:00
WOWOWプライム
演歌スターだけが彼の姿ではない。「限界突破×サバイバー」で魅せた氷川きよしもまた魅力的。WOWOW単独初登場に当たり、彼の魅力を紹介。WOWOW単独初登場の氷川きよしの魅力に迫る特別番組。デビュー曲からミリオンセラーを連発し、日本レコード大賞受賞、NHK紅白歌合戦連続出場と、演歌界における不動のポジションを築いた氷川。しかしその活躍は演歌のみではなく、ポップスやロックへと領域を拡大し、“ヴォーカリスト”として新たな魅力を披露するに至っている。そんな新境地を見せる氷川のこれまでの歩みと、5年先、10年先を見据えた自身について、また20周年を迎えた今の想いを語るインタビューも合わせてお届けする。
https://www.wowow.co.jp/detail/115995/-/01

『氷川きよし デビュー20周年記念コンサート ~あなたがいるから~in大阪城ホール』

10月27日(日)午後2:00
WOWOWプライム
演歌からポップス、ロックと見事に歌いわける稀代のヴォーカリスト、氷川きよし。誕生日9月6日の20周年記念コンサート、初の大阪城ホール単独公演を収録、番組化。
収録日:2019年9月6日
収録場所:大阪 大阪城ホール
https://www.wowow.co.jp/detail/115994/001

◆WOWOW『ヴォーカリスト 氷川きよしの魅力』番組詳細
◆WOWOW『氷川きよし デビュー20周年記念コンサート ~あなたがいるから~in大阪城ホール』番組詳細
◆氷川きよしオフィシャルサイト
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