【インタビュー】フジロックの生みの親SMASH日高正博「俺は、無理だと言われたら面白くなっちゃう性分」

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■ 日本は、モノ作りではなく製品ばっかりを作ってるでしょ?

──REXY SONGを立ち上げたのもそういう一環ですか?

▲「REXY SONG」ロゴ

日高:岩盤はメディアとして発信できるし、フジロックもそういう活動もしているからね。SMASHを始めた頃は、アーティストといろんな出会いがあって、素晴らしいアーティストを日本のレーベルに紹介したんだけど、メジャーレーベルは話を聞いてくれないわけよ。「アメリカで売れたらやりましょう」とかさ、映画もそうでしょ「ハリウッドで売れたら封切り」とかね。まぁ、島国独特の発想なんだろうけど、自分たちでクリエイトしていくっていう発想がどっか抜けちゃってるなって思うよ。機械を作ることに関しては、日本人はものすごく長けてるけどさ。

──いっそ自分でレーベルを立ち上げようと?

日高:「日本人のクリエーションっていうものがなくなってるな」って感じていたし、メジャーレーベルからは見えないモノの見方もできるし、物を扱って実際にお客さんと接してるから店頭から見る感覚もある。メジャーのレーベルの人たちには、これが一番足らないよ。「警察にパクられたらその人の音楽は売りません」っていうネガティブな発想しかできねぇくせに、ジャンキーの人が死んだらバーゲンセールをやるんだよ。冗談じゃねぇって。本当におかしいと思うね。

──ビジネススキルはあっても、文化レベルが低くなってしまった?

日高:うん。文化度が文明レベルより低いんだよね。哲学っていうか、自分たちの生き方のなかで「モノをどう持っていくか」っていうこと。モノ作りではなく製品ばっかりを作ってるでしょ?

──文化ではなく文明ばかりということですね。

日高:レストランでも、女の子だって携帯をすぐテーブルの上に置く。「そんなにこの人は忙しいのかな」と不思議に思うよね。でもみんながそうでさ、バランスが上手く取れてないなと感じるよ。だからフェスティバルなんて、金払ってそこに行っちゃえば「楽しむ」か「とっとと帰る」か、どっちかしかないんだよ。「雨も降ってきやがるし、やってらんないよ」って帰るか、「開き直って遊ぶ」か。雨をしのぐ良いウェアは「製品」だけど、雨の中でイベントを楽しもうとするのは「遊び」という「文化」だよ。まぁ、一種の文化度だと思う。そこのバランスが取れれば、世の中ってむちゃくちゃよくなっていくと思うんだ。

──遊べる自分をどれだけプロデュースできるか、なのかな。

日高:豪雨のときに教えられたもんね。初年度のときなんて、「何を言ってもお客さんは聞いてくれなかった」けど、それから3〜4年で「あそこまでの装備をしていれば楽しめるんだ」と、大きく変わってきた。どうしようもなかったら、橋の下とかどこかに逃げ込めばいいだけで、それは「遊び」を自分がどう捉えるかっていうことなんだよ。音楽も「音を楽しむ」って書くけど、もちろんそこも楽しむし、山の中でやっていける自分というものも楽しむ。俺は「もっと降らんかな」って、雨を楽しんでいるよ(笑)。



──フジロックには、守られている生活では絶対できないような体験がいっぱいありますからね。

日高:俺はキャンプ人間で生まれも九州の山の中だから、というのもあるけど、旅行はキャンプが多いんですよ。ジープにテントを投げ込んで、そのへんに落ちてる木を拾ってきて火をつけてごはんを炊いて料理をして、天気がよかったら星を見たり月を見る。そうやって自然のなかにいると一番おもしろいし、フジロックの開催場所もそうやって探してきた。あちこち行ったよ。色んな人と出会って仲良くなる。それが一番面白いよ。フジロックもすごく交流が多いよね。いろんな人が出会ってて、中には結婚した人もいるしさ。

──フジロックベイビーもいるんでしょうね。

日高:9時から17時までの都会の世界だと、なかなか自分に余裕が持てないでしょう。遊びに行くって言っても決まったコースになってしまう。そうするといろんな人と出会うチャンスもなかなか少なくなってくる。だからこういうフェスティバルやイベントでは楽しんじゃうっていうのかな。便利なものは便利なものでいいと思うんですよ…ディズニーランドとかね。俺は死んでも行かないけど。

──そうですか(笑)?

日高:個人の勝手な嗜好だけど俺はダメなの。入り口はここです、これはこうですって…全部そうでしょ? 知ったことかって思う(笑)。

──ディズニーランドもフジロックも、どちらも楽しい夢の国だけど、真逆に位置するものですね。

日高:ディズニーランドは幼い子供には本当にいいと思う。ただ「連れて行ってくれ」って言われても、死んでもイヤ(笑)。

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