【ライヴレポート】DEZERT、全国ホールツアー最終日「バンドがキレイゴト言わなきゃ始まんねーだろ!」
DEZERTが6月22日、日本橋三井ホールにて全国ホールツアー<DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”>のファイナル公演を開催した。同ステージのオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆DEZERT 画像
憑き物でも落ちたかのような、迷いの吹っ切れたみずみずしくも力強い音を、今宵のDEZERTはその空間に頼もしく鳴り響かせてみせたのだった。
それにしても、たった2ヵ月の間に何が起きていたというのだろう。確かに、去る4月19日に日本橋三井ホール公演をもって全国ホールツアー<血液がない!>を始めたその当日、フロントマンの千秋(Vo)は最後の「TODAY」を歌い出すにあたってこのようなことを述べてはいたのだ。
「今日、僕はここで一歩を踏み出します。誰になんて言われようと、僕はこの一歩が正しいと信じて、最後にこの曲を贈ります」──千秋
また、ツアーに出る直前の千秋インタビューにて「今度のツアーが終わる頃にはどうなっていたいか?」との質問を投げ掛けたところ、彼からほぼ即答で返ってきたのは次の言葉。「方法論を見つけてたい。漠然とした気分としてどうなっていたい、とかじゃなくてね」──結果として、そこから各地を廻り再び6月22日に日本橋三井ホール公演へと還ってきたDEZERTの放つ音とライヴパフォーマンスには、明らかなる以前との違いが色濃く滲んでいたのは間違いない。
最新両A面シングル『血液がない! / Call of Rescue』の収録曲たちがより研ぎ澄まされていたのはもちろんのこと、既存曲「「遭難」」に大胆かつ小気味よいリアレンジが施されていた点も驚かされたところで、わずか2ヵ月の間に彼らがどれだけの研鑽と鍛練を重ねてきたのか、ということが今回のツアーファイナル公演では随所に表出していたのである。
ちなみに、前述のインタビューの際には千秋から次のような言葉が発せられていたということも、今回のツアーを通してDEZERTが大きく変化を遂げたことと密接に繋がっている可能性が高い。「自分の作ったものに対して、常に感じるのは負です。そして、その作品を人前でやるとそこでポジティヴになるイメージかな。そういう変換をしたくて、ライヴをやっているところがわりとあるんですよ。ここ最近、ライヴの内容が変わってきたのもそのせいでしょうね。曲調としてどうこう的な次元ではなく、ライヴそのものとしてみたときポジティヴなものになるようにしていこう、という努力をしてるから」。
いやはや、有言実行とはまさにこのことか…。DEZERTの描き出す世界に滲む負とは、つまり理想とする願望との距離感から生まれる齟齬であることが多かった印象だけに、今回のツアーを通して理想と現実を出来るだけ近付けていくことにより、彼らはここに来てライヴバンドとしての明らかなるポジティブな姿勢を獲得するに至った、ということなのかもしれない。
そして、そんなDEZERTが、このツアーファイナルにおいていよいよの本領をさらに発揮し出したのは、本編終盤でのこと。
「キレイゴトばかりじゃ生きていけませんけど、バンドがキレイゴト言わなきゃ始まんねーだろ! あと2曲、前へ進む為に本気で決めようと思います。笑いたいやつは笑えばいい。変わったなっていうやつはあざ笑えばいい。でも、本気でいきます」──千秋
たとえば、燦然たる輝きをたたえたバンドサウンドと、救いを希求する歌詞を託した「「ピクトグラムさん」」の爽快さと痛快さから感じたのは、ライヴバンドDEZERTの持つダイナミズムと潔い強かさにほかならない。と同時に、ツアー初日と同じく本編ラストでまたも大切に歌われた「TODAY」おいては、ここであらためてDEZERTの本質と本性が露になったのではなかろうか。
「わかってたけど、このツアーを通して再確認したことがある。やっぱり、強がっていても僕は憶病者だ。(中略)辛いことから逃げたって、余計苦しくなるだけだって歌詞にしてから、もうすぐ1年が経とうとしておりますが…。何か変わったのかなって思うと、たいして変わってねーなと思っちゃいます。そう、僕たちは根本的には多分あんまり変われない。そして、それぞれがの人が歩き方や速度は違えど、きっといろんなものを抱えて生きているんだと思うんです」──千秋
この1年ほど、「TODAY」を歌う前の千秋は必ず今の率直な心情というものを明確に言葉にしてから、それを歌い出すということを重ねてきた。この夜ここから続けられた言葉にも、このツアーを経て千秋が感じてきたことが凝縮されていたのは言うまでもない。
「天才は明日を歌うし、凡人は過去を歌う。だから、僕は今日を!どうしても今日を歌いたいんです。もうさ、何が正しいとか何が間違ってるとかわかんねーからさ。とりあえず、今日を踏み出す1歩をここで歌いたい。どうせ、また戻っちまうんだからよ。進んだと思ったのは勘違いだった、ってこともあるし。皆それぞれ抱えているものがあったとしても、今日はさ。不安な未来も、明るい未来も、目を瞑りたくなるような過去も。楽しかった過去も、この5分間だけは全て忘れて“今日”だけを僕らと送りましょう。6月22日、日本橋三井ホール。今ここにいるおまえたちの5分間を、どうか僕たちにいただけませんか? 愚かな自分を愛せるようになるために。僕たちの1日を、ここから始めましょう。「TODAY」」──千秋
エモさなどという軽い言葉では到底表しきれないような、あふれ出る感情たちとアーティストとしての矜持を音としてかき鳴らしてみせる、Miyakoの表情豊かなギター。芯の太い音と、巧みな指さばきでDEZERTの音に温かみと安定感を与えるSacchanのベース。熱い魂のこもったリズムと、説得力のあるプレイで聴く者の心さえ震えさせていくSORAのドラム。それらと、千秋の内面を吐露していくような赤裸々で濃密なヴォーカリゼイションが渾然一体となっていくさまからは、それこそDEZERTの本気をひたすらひしひしと感じるしかなかった。
“♪誰もがもがいてる 時に泣き疲れて 立ち止まることもいいさ 誰もが失って 時に泣き叫んで また今日から始めればいい”
なお、ここからのDEZERTは次へと向かうための制作へと入っていくという。故にツアーは予定していないそうなのだが、12月23日には渋谷クアトロでの年末恒例企画<くるくるまわる>を開催することが決まっているほか、近々では8月3日に<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019>への出演も決定したとのこと。
本気と本音をいやおうなく受け手にぶつけてくるバンドだけに、昨今では男性ファンも急激に増えてきたDEZERTが、今ツアーをもって憑き物から解放されたその先で次に何を見つけていくのか。“今日”の時点では、まずはそれをただ純粋に楽しみにしていたい。
取材・文◎杉江由紀
撮影◎柴田恵理
■<DEZERT “血液がない!”>2019年6月22日(土)@日本橋三井ホールSETLIST
02. 胃潰瘍とルソーの錯覚
03. 蝶々
04. 「殺意」
05. 血液がない!
06. 肋骨少女
07. 「教育」
08. 「遭難」
09. Stranger
10. さぁミルクを飲みましょう。
11. 「排泄物」
12. 浴室と矛盾とハンマー
13. Insomnia
14. オレンジの詩
15. 脳みそくん。
16. 蛙とバットと機関銃
17. 「君の子宮を触る」
18. 「遺書。」
19. 「ピクトグラムさん。」
20. TODAY
encore
en1. オーディナリー
■ONEMAN LIVE<BlackHole 10th Anniversary SPECIAL LIVE “真夏のハウる日”>
▼チケット
一般発売:7月27日(土)~
【オフィシャルHP先行】
受付期間:6月24日(月)12:00~7月5日(金)23:00
https://eplus.jp/sf/detail/2991000001-P0030001
■<くるくるまわる -2019->
open18:15 / start19:00
▼チケット
前売4,000円(税込)
当日4,500円(税込)
一般発売:10月26日(土)
※オールスタンディング / 入場時ドリンク代別途必要
※営利目的の転売禁止 / 未就学児童入場不可
【オフィシャルHP先行】
※イープラス抽選受付
※枚数制限:お1人様4枚まで
▼第一次先行
受付期間:8月3日(土)12:00〜8月25日(日)23:00
▼第二次先行
受付期間:9月9日(月)12:00〜9月23日(月祝)23:00
■イベント出演
8月03日(土) 国営ひたち海浜公園
▼<アルルカンpresents STAND ALONE COMPLEX>
8月04日(日) TSUTAYA O-EAST
▼<MUCC BIRTHDAY CIRCUIT 2019 “40” 「SATOち day」~じゃっくいんざぼっくす -さとちのおたんじょうかい-~>
8月12日(月) 豊洲PIT
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