BUCK-TICKの新たな一歩を目撃せよ、<ロクス・ソルスの獣たち>WOWOWで独占放映
去る5月25日と26日の両日、幕張メッセ国際展示場にて<ロクス・ソルスの獣たち>と銘打たれた単独公演を実施したBUCK-TICK。両日を通じてのべ24,000人を動員したこのライヴは、タイミング的には最新シングル「獣たちの夜 / RONDO」(5月22日発売)のリリースを受けてのものということになる。そしてこのうち第二夜の公演の模様が、7月20日、WOWOWで独占放映されることになった。
『ロクス・ソルス』とは、ダダイストやシュールレアリストたちに高く評価されたフランスの奇想的で実験的な小説家/詩人で、言葉の錬金術師などとも呼ばれるレーモン・ルーセルの1914年の著作のタイトルであり、この言葉自体はラテン語で“人里離れた場所”を意味するのだという。確かにこの公演には、世の喧騒から隔絶された場所に集った者たちだけが目撃・体感することのできる謎めいた儀式、のような匂いが伴っていたように思う。もちろんそうした感触というのは、今回の公演にのみ限ったものではないわけだが。
筆者自身はこの両公演のうち第二夜を目撃したが、何よりも興味深かったのは、きわめてBUCK-TICK然とした、彼らのライヴ以外の何物でもないひとときだったにもかかわらず、実はそこで繰り広げられていたのが、これまでに味わったことのない実験的なステージ・パフォーマンスでもあったという事実だ。
すでにその公演内容については各方面で報じられているだけに、実際にその場に居合わせなかった読者にも知られているはずだが、今回のライヴでは「獣たちの夜」と「RONDO」というふたつの最新曲が重要な局面で初披露され強烈な存在感を発揮していたのみならず、フロア中央に設置されたセンター・ステージに移動してのアコースティック・アレンジでの演奏といった、BUCK-TICK史上初の試みもみられた。実のところ、ライヴの一部にそうしたセクションを設けるアーティストはめずらしくない。が、BUCK-TICKの場合はそこで“いかにもアコースティックでやると映えそうな曲”を披露するわけではなく、そこでの選曲と料理法自体が意外性に満ちていて、しかも結果的には新鮮な発見をもたらしてくれた。
具体的にそこで何が演奏されたかについては、今となっては伏せるまでもないことだが、この場では敢えて書かずにおきたい。また、そうした選曲面での意外性については、ライヴ全編を通じても同じことがいえた。特定のアルバムに伴う公演ではないだけに、この二夜の演奏プログラムは実に自由度の高い、しかもいわゆるレア楽曲が満載のものとなっていたことを付け加えておきたい。
視覚的な面においても、新たな要素が盛り込まれていた。たとえばホログラムを用いた演出もとても印象的だった。とはいえ、当日の観衆のなかにも、それをしっかりと目にすることができずにいた人たちが少なからずいたに違いない。というのも、いざステージが幕を開ければ、視線は自動的に正面に向けてロックオンされてしまい、その左右や後方、長く伸びた花道の奥にどんな風景が広がっているかまで、一度には捉えきれなくなりがちだからだ。たとえば象徴的なオープニングを経て、黒衣に身を包んだ櫻井敦司がステージ上に登場した瞬間の、会場全体の風景のディテール。それを正確に言い当てられる目撃者はどれほどいるだろうか? スクリーンに映し出された彼の妖艶で挑発的なたたずまいに息を呑み、その背景や周囲にあるものが目に入らなかったという観客が、実は大半だったのではないだろうか? これは、筆者自身がそうだったからこそ言えることでもある。
今回はこの二夜公演から8週間ほどを経てのWOWOWでの放映ということになるが、これはライヴ会場に足を運ぶことができなかった人たちにとって貴重であるばかりでなく、実際にその場にいた目撃者たちにとっても、興奮の裏側で見落とされていたさまざまな場面が補完され、記憶がより鮮明に塗り替えられる機会となるに違いない。
しかも今回、WOWOWでは、これに先がけて『劇場版BUCK-TICK ~バクチク現象~ I+II』(7月18日)や、昨年12月29日の日本武道館公演<BUCK-TICK TOUR No.0 -FINAL->(7月19日)も放映する。これは、この日本が誇るべき稀有なロック・バンドに、最近になって改めて興味を持ち始めた人たちにとっても、その魅力を深堀りするうえで絶好の機会といえるだろう。30周年の節目を超え、新たな局面へと歩みを進めているBUCK-TICK。彼らが次にどこに向かおうとしているのかを探るうえでも、見逃したくないプログラムである。
文◎増田勇一
撮影◎田中聖太郎写真事務所
『BUCK-TICK Live 2019「ロクス・ソルスの獣たち」』
収録日:2019年5月26日
収録場所:千葉・幕張メッセ国際展示場9〜11ホール
番組オフィシャルサイト: https://www.wowow.co.jp/bt/
▼関連番組
『劇場版BUCK-TICK 〜バクチク現象〜 I+II』
2019年7月18日(木)深夜1:50
『BUCK-TICK TOUR No.0 -FINAL-』
2019年7月19日(金)深夜0:30
『BUCK-TICK 〜CLIMAX TOGETHER〜 ON SCREEN 1992-2016』
2019年7月19日(金)深夜3:05
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