【詳細レポート】MUCC、「憩いの場でありたい。地獄の底ではありますが」
コンセプトアルバム『壊れたピアノとリビングデッド』の発表に合わせて、2月からスタンディング会場を廻るツアー<壊れたピアノとリビングデッド>をスタートさせたMUCC。そのファイナル公演が4月1日にZepp Tokyoで行なわれた。先ごろ公開した同公演のオフィシャルレポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。
◆MUCC 画像
ステージは赤いオペラ幕で閉じられ、シアトリカルなムードも漂っていた。そこに流れ始めたのは、時間をねじ曲げていくような怪しいピアノの音色。SE「壊れたピアノ」に合わせて、オペラ幕がゆっくりと開くと、『壊れたピアノとリビングデッド』のジャケットを描いた巨大バックドロップが目に飛び込んできた。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>3月31日(日)@Zepp Tokyo
コンセプトアルバム『壊れたピアノとリビングデッド』を2月に発表したMUCCが、2月から4月にかけてスタンディング会場でのツアーを行なった。そのファイナル公演となったのが4月1日のZepp Tokyo。SEが流れるなか、まずステージに現れたのは期間限定メンバーである吉田トオル(Key)。SEに合わせて生ピアノを弾き始めた。続いてステージに登場したSATOちはリズムを刻み始め、さらにYUKKEもアップライトベースで、そしてミヤはキーボードを弾き始めた。SEが徐々に生演奏へと変わり、ねじ曲がった時間や空間は、今、現実のものになっていく。最後に現れた逹瑯は、まず深々とおじぎをして、ブルースハープでそこに加わった。
メンバー5人とも、“リビングデッド”なホラー調メイクを施し、異様なオーラさえ放つ。その彼らが1曲目として選んだのは、アルバムの曲順どおり「サイコ」だった。ミヤのギターリフを合図に、一気にバンドサウンドが炸裂する。まくしたてるようなラウドな音、そして声を歪ませながらスクリームも上げる逹瑯。狂気の世界にファンを引きずり込んでいく。続く「アイリス」では、ライトを浴びた逹瑯の姿がバックドロップに巨大な影を作り出し、呪いのようなセリフと共に、今度は倒錯した世界を広げていった。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>3月31日(日)@Zepp Tokyo
アルバムごとにサウンドアプローチを変化させているMUCC。しかし今回、彼らはホラーというコンセプトを打ち出してアルバムを完成させている。コンセプトという軸があることによって、いろんなことができる器用さ以上に、バンドの個性が際立つことになったと思う。ライヴでは過去の曲もセットリストに加えられていたが、吉田トオルのピアノやキーボードを加えたアレンジにどれも変化し、癖や個性の強いアンサンブルになっている。
「令和!」──逹瑯
最初のMCで逹瑯はそう叫んだ。4月1日に新元号が発表されたからだ。
「令和元年初日(5月1日)に、またライヴやります。なんでもない1日になると思いますけど(笑)。令和! 令和!」──逹瑯
▲<壊れたピアノとリビングデッド>3月31日(日)@Zepp Tokyo
時事ネタでコール&レスポンスも起こしながら「自己嫌悪」へ。その中盤で、ミヤは吉田トオルが弾いていたグランドピアノを占拠。バンドサウンドが静まったところで一人弾き始めたのはクラシックの「エリーゼのために」。正しい音階を探しながら弾いた旋律は、原曲以上にもの悲しい。そしてミヤはピアノフレーズを徐々に変化させながら曲へと展開。こうした驚きのアレンジも、ライヴの見どころや聴きどころ。またバラード「レクイエム」で聴かせた逹瑯の歌は、悲しみを帯びた感情的ボーカルで会場にいる全員を曲に引き込んでいった。
そしてライヴ中盤、ヘヴィネスと緊張感ある「In the shadows」でファンを圧倒。曲が終わっても誰も声すら上げられないほどに。そして次の瞬間、グランドピアノにスポットが当たると、静かにイントロフレーズを奏で始めたのはミヤだった。YUKKEはアップライトベースで、SATOちは繊細なドラミングで、吉田トオルはキーボードで加わっていく。そうしたアレンジで広がる曲は「積想」だった。炎が灯るランタンを手に歌う逹瑯。これがまた絶品であり、逹瑯のシンガーとしての実力と成長を痛感させた。最後の一音が終ったとき、大きな拍手がメンバー5人を包み込んだ。ここからメロディックな「百合と翼」に添加し、一体感溢れるライヴへと塗り替えていったMUCC。曲ごとに自由に空気もライヴの様相も操っている。ライヴバンドの実力も再確認させた。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>3月31日(日)@Zepp Tokyo
続くMCで、年度末の忙しい時期にライヴをブッキングしてしまったことに、社会不適合者の集まりとして、まずお詫びをする逹瑯。そして来てくれたことに感謝しながら言葉を続けた。
「みんなの楽しみでありつづけられるように頑張っていきますから。ライヴはお互い、憩いの場でありたい。地獄の底ではありますが(笑)。平成という、出会った時代が終わっていくのは寂しいもんですが、令和生まれのお嬢ちゃんがワーッてなれるように、これからも頑張っていこうと思ってますから。いいですか、孫を連れてくるんですよ!」──逹瑯
さっき抱いた尊敬の念もぶっ飛ぶような、親しみある口調も魅力のひとつだろう。しかし再び曲へ突入すれば、実力をフルに発揮する。ライヴ後半、「始めようか! Are You Fuckin' Ready!!」と逹瑯が叫び、楽器陣の4人がギラギラした生命力ある音を叩きつけていく。客席フロアではやむことのないクラウドサーフが起こり、激しい光景が広がっていった。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>4月1日(月)@Zepp Tokyo
そしてこの日の本編ラストを締めくくるのは『壊れたピアノとリビングデッド』のラストナンバーである「Living Dead」。荘厳なフレーズが広がり、スモークがステージ上の5人を包んでいく。シルエットになった彼らが、力強く、しかし悲哀に満ちたメロディを紡ぎ続けていった。ひざまずいた逹瑯は、生々しい感情で歌い上げる。音と歌に呪縛されるように、身動きせずに、ただただ聴き入るファン。演奏を終えたMUCCは、立ち込めるスモークと共にステージから去っていった。
暗転した会場が、我に返ったのはしばらくしてからのこと。アンコールがフロアから起こり始めた。それに応えて「令和!」とブレないコールで現れたのは逹瑯。そこにメンバーも加わって、いきなり始まったのは茨城なまりのあんちゃんたちのトーク。話題は4月1日ということでエイプリルフール。それにしゃべり始めたら止まらない。「このまましゃべってて、終電なくなったらどんすんの?」とファンに話題もふる逹瑯。“朝までお台場のラウンドワンで過ごす”と何人かのファンが答えたもんだから、逹瑯は「スポッチャでしょ。だったらその前に、アンコールという名のスポッチャ始めよう!」と宣言した。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>4月1日(月)@Zepp Tokyo
ここから突入したアンコールは、メロディックデスなMUCC。ファンもクラウドサーフやウォールオブデスで熱狂のマックス状態。過激ぶりを極めながらライヴはエンディングまで突っ走った。
ステージ後方のバックドロップはスクリーンに切り替わり、メンバーの画像が映し出された。続けてツアーのエンドロールでも流れるかと思わせたが、映ったテロップは“壊れたピアノとリビングデッドはまだまだ終わらない”というメッセージ。そこから発表されたのが、5月1日からのホールツアー、さらに全国の各地方で行なう<MUCC 2019 Lock on snipe tour feat.壊れたピアノとリビングデッド>、各メンバーの誕生日に合わせた<MUCC BIRTHDAY CIRCUIT 2019「40」>の開催だった。発表のたびに湧き上がるファンの大歓声。そしてとどめは歓声を浴びながら、再びMUCCがステージに現れたことだった。
▲<壊れたピアノとリビングデッド>4月1日(月)@Zepp Tokyo
会場に響き始めたキーボードフレーズと共に、ガシャドクロのバックドロップが上昇。ハードコアなステージから5人が最後に叩きつけたのは「TONIGHT」だった。暴れ狂うファンに、さらに煽るように攻撃的サウンドを浴びせかけるMUCC。それでも誰もが笑顔というライヴ。とんでもなくいかれた“憩いの場”がここに広がっていた。
取材・文◎長谷川幸信
撮影◎西槇太一
■<壊れたピアノとリビングデッド>2019年4月1日@ZeppTokyoセットリスト
02.アイリス
03.オルゴォル
04.ヴァンパイア
05.G.G.
06.絶望楽園
07.TIMER
08.自己嫌悪
09.マゼンタ
10.鎮痛剤
11.レクイエム
12.In the shadows
13.積想
14.百合と翼
15.遥か
16.夕紅
17.フライト
18.カウントダウン
19.Living Dead
encore
en1.Mr.Liar
en2.MAD YACK
en3.蘭鋳
en4.大嫌い
en5.TONIGHT
■ホールツアー<壊れたピアノとリビングデッド feat. 殺シノ調べ>
5月01日(水) 中野サンプラザ
open17:00 / start18:00
5月02日(木) 中野サンプラザ
open17:00 / start18:00
5月19日(日) 名古屋特殊陶業市民会館ビレッジホール
open17:00 / start18:00
6月09日(日) グランキューブ大阪
open17:00 / start18:00
▼チケット
全席指定 ¥6,900(tax in)
・イープラス http://urx2.nu/Q2yV
・ローソンチケット http://urx2.nu/Zok2
・チケットぴあ http://urx2.nu/RpSj
※未就学児入場不可 / 営利目的の転売禁止
■<MUCC BIRTHDAY CIRCUIT 2019「40」>
7月26日(金) 東京 新木場STUDIO COAST
open15:30 / start16:30
出演:MUCC/X-SUGINAMI/ROTTENGRAFFTY/メトロノーム/lynch.
▼<SATOち day>〜じゃっくいんざぼっくす-さとちのおたんじょうかい-〜
8月12日(月・祝) 東京 豊洲PIT
open16:00 / start17:00
▼<逹瑯 day>〜Happy Birthday to 逹瑯 -君とムックとあの人とあの人とあの人-〜
8月21日(水) 大阪 なんばHatch
open18:00 / start19:00
■<MUCC BIRTHDAY CIRCUIT 2019 Grand Final「40」>
▼<YUKKE day>〜YUKKE限定 LASTGIGS -孤独の40歳児、今日だけは許して下さい-〜
11月5日(火) 東京 TSUTAYA O-EAST
open18:00 / start19:00
<BIRTHDAY CIRCUIT>詳細情報
■収監ツアー<MUCC 2019 Lock on snipe tour>
7月01日(月) 青森 Quarter
7月03日(水) 秋田 Club SWINDLE
7月05日(金) 盛岡 club Change WAVE
7月06日(土) 山形 ミュージック昭和Session
7月08日(月) 仙台 Rensa
7月09日(火) 郡山 CLUB #9
詳細情報
▼<MUCC 2019 Lock on snipe tour #5『中国型壊れたピアノとリビングデッド収監5days』>
7月15日(月・祝) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
7月17日(水) 広島 CLUB QUATTRO
7月18日(木) 周南 RISING HALL
7月20日(土) 松江 AZTiC canova
7月21日(日) 米子 AZTiC laughs
詳細情報
▼<MUCC 2019 Lock on snipe tour #6『中部型壊れたピアノとリビングデッド収監6days』>
8月27日(火) 長野 CLUB JUNK BOX
8月29日(木) 名古屋 Electric Lady Land
8月30日(金) 名古屋 Electric Lady Land
9月01日(日) 四日市 CLUB ROOTS
9月06日(金) 浜松 窓枠
9月08日(日) 岐阜 club-G
詳細情報
▼<MUCC 2019 Lock on snipe tour #7『九州型壊れたピアノとリビングデッド収監9days』>
9月14日(土) 沖縄 桜坂セントラル
9月15日(日) 沖縄 桜坂セントラル
9月18日(水) 宮崎 WEATHR KING
9月19日(木) 鹿児島 SR HALL
9月21日(土) 長崎 DRUM Be-7
9月23日(月・祝) 福岡 DRUM LOGOS
9月25日(水) 佐賀 GEILS
9月27日(金) 熊本 B.9 V1
9月28日(土) 大分 DRUM Be-0
詳細情報
▼<MUCC 2019 Lock on snipe tour #8『関西型壊れたピアノとリビングデッド収監7days』>
11月10日(日) 和歌山 CLUB GATE
11月12日(火) 滋賀 U☆STONE
11月14日(木) 神戸 太陽と虎
11月15日(金) 神戸 太陽と虎
11月17日(日) 奈良 NEVERLAND
11月19日(火) 大阪 味園ユニバース
11月30日(土) 京都 KBSホール
詳細情報
▼<ウッサン!ウムサン!ウィールキサン!MUCCと行く日帰り収監バスツアー in沖縄>
9月16日(月・祝)
※詳細は後日発表
■コンセプトアルバム『壊れたピアノとリビングデッド』
【朱ゥノ吐VIP会員限定受注生産盤 ※FC限定盤 (CD+スペシャルブックレット)】
MSHN-056 ¥5,000+tax ※別途、送料+手数料がかかります
※スペシャルブックレット:東名阪ツアー<壊れたピアノとリビングデッド>、<壊れたピアノとリビング デッド feat. 殺シノ調ベ>完全密着撮り下ろしライヴ写真をブックレットにまとめ後日発送
【通常盤(CD ONLY)】MSHN-057 ¥3,000+tax
01. 壊れたピアノ
02. サイコ
03. アイリス
04. ヴァンパイア
05. In the shadows
06. 積想
07. 百合と翼
08. カウントダウン
09. Living Dead
※CD収録曲は朱ゥノ吐VIP会員限定受注生産盤と通常盤共通
◆BARKS内『壊れたピアノとリビングデッド』特集ページへ
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