【インタビュー】内田直孝、逆境に立ち向かって成長したことに気付けるソロ・シングル「Adversity is the first path to truth.」
■僕らは目まぐるしく生きれば生きるほど自分の精神の時間は早めることができる
■「時の流れも羨むくらいに僕らは光のようなスピードで進んで行こうよ」
――「光のように」は、“365回の後悔”という言葉が印象に残りました。どんなときに出来た曲ですか。
内田:この曲だけ、CDを作るために書いた曲です。別にマイナスな意味ではなくて、後悔のない一日って僕は経験したことがないんです。それは何にしてもそうなんですけど、例えば小さい話だと「いや~、やっぱり今日のお昼、明太子じゃなくて昆布のおにぎりの方が良かったかも」とか。
――そういう後悔は日々ありますね(笑)。
内田:小さいですけど、そういう後悔が1つもない一日を僕は経験したことがないんですよ。みんなすごく失敗したときに後悔って言うけど、気付いていないだけで後悔って大なり小なりあって、365日後悔しない日はないんやけど、じつはそれを全部持って行ってるんやでって。それでも感情を殺さずに生きられているっていう、それだけで結構OKなんじゃないっていうことを歌いたかったんです。光の速さって僕は知らないですけど、ただ自分が生きる時間の速さをすごく感じるんです。まるで光のような速さやなって比喩できるぐらい、時間の流れはめちゃくちゃ速くて。ただ、それは精神的な話で、時間の流れというのは時計の針が1つ動けば1秒という決められた物質的なもので、どんなに頑張ってもスピードを上げられないですよね。でも、僕らは目まぐるしく生きれば生きるほど、自分の精神の時間は早めることができる。だから、「時の流れも羨むくらいに僕らは光のようなスピードで進んで行こうよ」というメッセージを込めて書いた曲です。
――それを歌えたのは、まさに年齢を重ねたからこそですよね。
内田:はい、そうだと思います。30代だからこそ書ける視点だと思いますし、30代の人が共感してくれたらいいなって思って書いています。
――それに、今10代の子が30代になったときにわかるかもしれないし、それでいいと思って曲を作っているという。
内田:そうなんです。そういうものを作りたいと思うようになりました。だから、このシングルは今の自分の気持ちが一番表れている作品になりました。
――こういう曲が書けると思わなかった、という気持ちってありますか?
内田:「少年とミサイル」の“誰かの為だなんてとんでもない”という言葉は、ここ数年の自分の音楽活動を考えると、書くとは思わなかったです。今までは「誰かが喜んでくれるように」と思ってやってきた自覚があるので。それを裏切るじゃないですけど、でもそれが今の本音というか。まず自分がしっかりしていないと、発信も受信もできないなって。それをちゃんと伝えたいと思いました。それは僕だけじゃなくて、何かを献身的にやっている人でも、絶対にまずは自分を大事にしているはずだし、そういう人にこそ自分のために精一杯生きてほしいし。そういう意味では、“誰かの為だなんてとんでもない”という言葉を書いて歌ったときは、ちょっと自分で震えました。初めてライヴで歌ったときのことをすごく覚えているんですけど、自分で自分を殴っているような感覚だったんです。それがたまらなく気持ち良くて。歌って、こういうもんやなって。人に向けて歌う前にまずは自分に歌えるかっていうところが、自分で歌う意味というか。人の歌を聴いて良いなと思う感覚とは絶対に違う感覚を得られるのが、実は自分で発信している人間の一番の特権なんやなって思いました。
――自分自身のことを歌うことって、喜びもあると思うんですけど、それがしんどいときはないんですか。バンドで歌うときよりも、歌ったことがよりダイレクトに自分に返ってくると思うんですけど。
内田:いや、それはまったくないですね。どれだけ自分の心に対してつらいことを歌ったとしても、それでしんどくなることってないんです。今は、歌えば歌うほど、自分が開拓されていく感じがしていて。「もっともっと行け」というか、ステージに立って歌うことに圧倒的に不安がなくて、すごく強い状態なんです。良いとか悪いとかじゃなくて、歌うことに迷いもない。それはRhythmic Toy Worldのミニアルバムにも言えることで、「クリティカルヒット」で“届くためにやってるんじゃなくて届くやつのためにやっている”という言葉を僕が書けた時点で、そうなってしまっているんです。適当にやっているわけでも、反抗的なわけでもなくて、俺の歌を聴いて響かない人に対しては、逆立ちして歌っても響かないですし。それよりも、今の状態を良いと思ってくれた人のために自分を磨いていった方が、絶対的に有意義だと思うんです。だからこそ、「届くかな?届かへんかな?」とかはもう、思っていないんです。「歌って、届いた、良いなって言ってくれた」その人のためだけに歌うという、ひたすらそのループなので。クリティカルヒットされた人でライヴ会場が埋め尽くされていた方が、絶対に良いでしょうし。
――そこにいる人全員に合わせて何かをやっていたら、自分がなくなっちゃいますもんね。
内田:そうそう。この数年間やってきて、そのことにやっと気付きました。「もっとこういう風に歌った方が聴きやすいかな」とか、「こういう風にやった方が楽しんでもらえるかな」とか考えていた時期もあったんです。それをやった結果、自分の中に何が残ったかと言われると、「う~ん、何かあったかな」というのが正直なところで。でも、残ったものは、やっぱりお客さんですよ。最終的に残ったのは、今目の前にいるお客さんです。その人たちのために音楽をやるというのが、一番正しいと思うんです。
――先日のインストアイベントで、まさにそういうお客さんたちが目の前にいたわけですね。
内田:うん、「これや!」と思いました。
――では、このシングルのタイトルが『Adversity is the first path to truth.』になった理由、意味について教えてください。
内田:これは、「逆境は真理への第一歩」という意味なんです。レコーディングしていたときに(プロデューサーの)SHO-TAさんが提案してくれて。意味がこのシングルにピッタリだっていうことと、これだけ長いとみんなタイトルで言わずに「ウッチーのソロ」って言うはずやから、「リズミックのウッチーがソロを出した」っていうことが、直接的に情報としてわかりやすいんじゃないかなって。
――なるほど、すごく戦略的ですね!
内田:そうなんですよ、なかなか戦略的だと思いました。
――まずは内田さんのソロが出ているということが伝わって、その上でタイトルの意味を知ってもらえばいいという。
内田:そうです。僕は、上京したときにやっていたバンドがあって、上手くいかずに解散したんです。でもバンドをやりたくて親に頭を下げて東京に出させてもらったので、何かしら音楽活動をしていないと夢が遠ざかって行っちゃう気がして。そのことが怖くて怖くて仕方なくて、あまりギターも弾けなかったんですけど、弾き語りでライヴ活動をしていたんです。でも曲もないし、歌も30分も歌えないくらいだったんです。それもあって自分的には音楽をすることが楽しくなくて、「音楽がつらい、でもやらないと」みたいな時期があったんです。そこからリズミックを組んで10年が経って、自分の過去のトラウマじゃないですけど、つらかった音楽の記憶を今の自分でぶっ飛ばしに行こうっていう意味での「逆境」、あのときの逆境に立ち向かうことで、この10年間音楽に費やしてきた時間で、内田直孝という音楽家がどういう人間に成長したのかということに、気付けるんじゃないかと思うんです。そういう意味でこのタイトルにしました。
――今の音楽活動を指して、逆境と言っているタイトルではないということですね。
内田:そうではないんです。メジャーからインディーズで再スタートするということを、自分たちで別に逆境とは思っていないので。むしろ戦っている感じが強くて、より歩を進めるための決断というところが大きいですから。逆境というのは、僕個人の人生に於いての言葉です。バンドを組む前のところからの自分に対しての、カウンターアクションみたいな感じですね。
取材・文●岡本貴之
リリース情報
1st SINGLE「Adversity is the first path to truth.」
4月3日リリース
STR-1052 / \1,000+tax
1. 電影少女
2. 少年とミサイル
3. 光のように
Rhythmic Toy World
4th MINI ALBUM『PLACE』
4月3日リリース
STR-1051 / \1,800+tax
1. はじまり
2. クリティカルヒット
3. アンダンテ
4. 未来へのセッション
5. 2019
6. ネバギバ
7. パドル
ライブ・イベント情報
4月12日(金)【千葉】LOOK ※ワンマン
4月20日(土)【三重】四日市 CLUB CHAOS ※ワンマン
4月21日(日)【兵庫】神戸 太陽と虎 [Guest]MAGIC OF LiFE
4月23日(火)【福岡】小倉 FUSE[Guest]KNOCK OUT MONKEY
4月24日(水)【岡山】CRAZYMAMA 2nd Room [Guest]KNOCK OUT MONKEY
5月10日(金)【長野】松本 ALECX [Guest]グッドモーニングアメリカ
5月17日(金)【茨城】水戸 LIGHT HOUSE ※ワンマン
5月19日(日)【栃木】HEAVEN’S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4) ※ワンマン
5月24日(金)【岐阜】柳ヶ瀬 Ants ※ワンマン
5月25日(土)【静岡】静岡 UMBER [Guest]MAGIC OF LiFE
6月6日(木)【岩手】the five morioka [Guest]真空ホロウ、CIVILIAN
6月7日(金)【福島】郡山 CLUB #9 ※ワンマン
6月14日(金)【大阪】梅田 Shangri-La ※ワンマン
6月15日(土)【愛知】名古屋 CLUB QUATTRO ※ワンマン
6月21日(金)【群馬】前橋 DYVER [Guest]MAGIC OF LiFE
6月26日(水)【宮城】仙台 LIVE HOUSE enn 2nd ※ワンマン
6月28日(金)【北海道】札幌 COLONY ※ワンマン
6月30日(日)【富山】SOULPOWER [Guest]GOOD ON THE REEL
7月4日(木)【福岡】Queblick ※ワンマン
7月5日(金)【広島】CAVE-BE ※ワンマン
7月25日(木)【東京】恵比寿 LIQUIDROOM ※ツアーファイナルワンマン
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事の関連情報
【インタビュー】「DAM CHANNEL」20代目MCに森 香澄、サポートMCにチャンカワイが就任「プライベートな部分も引き出せたら」
2024年3月のDAM HOT!アーティストはアーバンギャルド、フジタカコら4組
【イベントレポート】<ビッグエコー35周年記念カラオケグランプリ>決勝大会が大盛況。応募4,061件の頂点決定
2024年2月のDAM HOT!アーティストはOHTORA、我生ら4組
2024年1月のDAM HOT!アーティストRKID'z、EINSHTEINら3組
2023年12月のDAM HOT!アーティストは学芸大青春、the paddlesら4組
【インタビュー】Rhythmic Toy World、通算100曲目の現在地に新局面と集大成「長い年月を経てここに辿り着いた」
Rhythmic Toy World、通算100曲目の最新曲はライフソング「命の絵」
2023年11月のDAM HOT!アーティストはACE COLLECTION、3markets[ ]ら4組