「NINJA PROJECT」のプロローグ

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2018年に発表された、日本忍者協議会とエイベックスによる「NINJA PROJECT」。そのプロジェクトが公の場に現れたのは、<a-nation 2018>だった。

◆ミュージックビデオ

スタイリッシュなセットと派手なレーザーが飛び交うステージの上。全身を赤、黒でそれぞれ覆った集団が、重力無視とも言える回転技を次々に披露する。忍者の概念を壊し、現代のテクノロジーを駆使して新しい表現へと昇華したパフォーマンスは、観客たちを大いに沸かせた。


それ以降、影を潜めていた同プロジェクトだが、3月末に突如動きを見せる。赤をチームカラーとした「BLOOD WILL TELL(訳:血は争えない)」と、黒の「DARKEST BEFORE DAWN(訳:夜明け前の闇が最も深い)」による、2本のミュージックビデオが公開されたのだ。

BLOOD WILL TELLとDARKEST BEFORE DAWNがそれぞれの理想を掲げ、対立しながらも、音楽とパフォーマンスを通じて「NINJA」という日本が誇るカルチャーを「世界に発信する」という共通目的を果たしていくとのことだ。

今回公開されたミュージックビデオの楽曲はBLOOD WILL TELLの「HOKAGE」とDARKEST BEFORE DAWNの「BRGHTST BLCK」。いずれもDiploやNERVOなどのリミックスを手掛ける一方で、「Japalanta」や「Trapanese」といった「雅楽トラップ」の第一人者として高い評価を得ているRadical Hardcore Cliqueによるプロデュース曲である。


「HOKAGE」のフィーチャリングアーティストはLeon FanourakisとAwich。Leonは<BAZOOKA!!!「第8回高校生ラップ選手権 (2015年)>とAbemaTV『ラップスタア誕生!シーズン2 (2017年)』にて優勝を勝ち取った新進気鋭ラッパー。Awichは沖縄出身でアメリカへの留学経験を持ち、ウチナーグチ (沖縄語) と英語、日本語を組み合わせたスタイルを武器にHIP-HOP/R&B界隈で活躍するディーバだ。

赤という攻撃的でありつつも華やかさを持つ色を表すにあたり、シリアスでありながら雅楽の楽器の豊かさを生かしたトラック、クールな気魄に満ちたLeonとAwichによる男女ボーカルは非常に有効。「仲間」や「自由」をテーマにしたリリックも、この現代を己の美学で切り開くというそれぞれの強い意志が宿っている。男女ダンサーチームによるしなやかな身のこなしがそれをより生々しく引き立てた。まさに血の通った、情熱の炎が燃え上がるような赤い楽曲と映像だ。


「BRGHTST BLCK」はまず、母音が抜き去られたタイトルからして不穏なムードが過る。この楽曲のボーカリストとしてフィーチャーされたのはラウドロックバンド・NOTHING TO DECLAREのMas(Vo/G)。東南アジアで人気を獲得し、日本へ活動拠点を移してからもシンガポール最大規模の音楽フェスへ出演、CRYSTAL LAKEやSHADOWSなどのツアーサポートを務めるという実力派だ。

Masの強靭なスクリームを、時に哀愁と繊細さのある雅楽の音色で包み込み、時に鋭く映すトラック・メイクは、黒という色の奥深さと合致する。闇と光を描いているのは音だけでなく映像とコレオグラフも同様だ。黒と白が貴重になった、装飾が削ぎ落された場では、必然的に人ひとりの存在感が浮き彫りになる。BLOOD WILL TELLの「HOKAGE」がパーティーの絆の強さを表すならば、DARKEST BEFORE DAWNの「BRGHTST BLCK」は個の強さを表現してるとも言えるだろう。

対極的でありつつも同じコンセプトを持った2チームによって作られていくNINJA PROJECT。ようやく互いのプロローグが出揃った。いったいこの2組が今後どのように対峙し、激突し、交差していくのだろうか。そしてともにどのようなストーリーを編んでいくのだろうか。今後の彼らに活躍に期待したい。

文◎沖 さやこ

◆「NINJA PROJECT」オフィシャルサイト
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