【インタビュー】MOSHIMOが見せた変化「ロックバンドとして生き抜くために」

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■ 男の子には“怖い”って
■ 女の子はとにかく“わかるわー”って

──「ヤダヤダ」は、アルバムの2曲目。

岩淵:「ヤダヤダ」は、こういう歌詞にするかどうか、すごい悩んだんですよ。自分がネガティブな方向に引っ張られちゃうのがすごい嫌で、そういう曲は書きたくなかったし、MCでもSNSでも、マイナスなことを絶対言わないようにしようと決めていて、そこで自分の中の葛藤を言うのはどうなんだろう?と思ったんですけど。極力、ライブはみんなで馬鹿騒ぎしたいんですよね。つらいのはみんな一緒だから、言わなくてもわかるんで、つらいけど音楽で馬鹿騒ぎしようぜっていうバンドにならなきゃという時に、こんな歌詞は暗くないかな?と思ったんですけど、それでもやっぱりこの曲が呼んでる言葉は何だろう?と思った時に、こういう言葉だったので、それを書きました。MOSHIMOを結成してからコンプレックスだらけで、自分自身にもすごい自信がなかったし、どうやったら“私最高!”と言いながらずっと生きていけるんだろうというものを探していて。2018年にNGを作ることによって、周りの目が気にならなくなって、いかに自分を高めて生きて行けるかを目標にするようになって、だけど“現実にはマイナスなこともあるよね”というMCをした時に、響いている女の子がすごく増えて、それがちゃんと伝わるものを作ろうと思って作った曲です。ただ噛みつくだけじゃなくて、“こういうことって本当にあるよね”と歌うことで、だったらどうすれば自分を大事にすることができるのか。Dメロにそういう言葉を入れてますね。

── 自分を一番に愛してあげなくちゃ。あそこはいい歌詞です。

岩淵:4曲目「Yankee」は、昔、福岡にいた時、本当にヤンキーにアピールされてた時があったんですよ。苦手で、怖かったんですけど、めっちゃ気に入られてて。連絡返さなくて怒られたらどうしようとか思って、返してたんですよ。そしたら優しくていい子みたいに思われて、さらに好かれちゃって。それが怖くて、ほんとヤンキー勘弁してくれっていう思いで書いた曲です(笑)。5曲目「いいじゃん」は、ミドルバラード的な、乙女な部分を出していて、その次の「美女と野獣の逆はないよね」というのは、タイトル通り。ないっすよね、という感じ。マジなくないですか?

── めちゃめちゃいい男と、ダメ女とかそういうこと? 見た目のこと?

岩淵:見た目のことです、どちらかというと。ねぇよなと思う。

── そうかなあ。どうだろう。

岩淵:ないです。マジでないです。私の友達、看護師が多くて、お金も持ってて、自分に対してお金をかけれるんで、小ぎれいな格好の子が多いんですけど。ある時みんなで遊んで、集団で男の子と合流することになった時の、あの疎外感はヤバかったです(笑)。それでもやっぱり、私は自分のやってることに自信を持ちたいし、絶対ライブでは負けない!みたいな、熱い思いをちゃんと伝えられる人でいなきゃいけないなと思って、自分に自信をつけようと思っていろいろトライした2018年があったんで。そういう思いも込めて書いてます。

▲2018年12月26日<MOSHIMO「BARI BARI ROCK」~大忘年会 嫌なこと全部ぶっ飛ばす!!編~>@恵比寿LIQUIDROOM

── 男子的には、アルバム制作にはどんな思い出が?

一瀬:今回は、せーので録ることが多かったんですよ。ライブ感を大事にして。そこは楽しかったです。

── 自信あり、な曲は?

一瀬:ライブでやってみて、どれがみんな喜んでくれるのかなと思ってたんですけど、「釣った魚にエサやれ」は、ミュージック・ビデオが公開される前からライブハウスでかなり盛り上がってくれたんで、嬉しかったです。

岩淵:「釣った魚にエサやれ」は、メンバー全員歌ってるんですけど。本当にこの3人が言いそうなセリフを、めっちゃ考えました(笑)。一人一人、“絶対こいつこんなこと言うな”ということを踏まえて書いたので、めっちゃ楽しかった。

── デートが少ない理由を、バイトが忙しいからって言い訳するのは、颯くんのパート。

宮原:言いそう、みたいな。

岩淵:ずっと彼女にあやまってそうですもん。

宮原:歌を録ってる時も、“もっとこいつになれ”とか言われて(笑)。

一瀬:メロディをうまく歌おうとするから。そうじゃなくて、セリフだって。

岩淵:最初は“エサをやれ”で終わってたんですけど。レコーディング中に、歌詞通り歌っても面白くないと思って、1テイクだけ、ライブでどうやったら盛り上がるか?というものをやってみようと思って、それで“エサをくれ”で終わったという。むしろエサをくれたら二人はこのまま続くのに、早く気付かんかい!という。

── アドリブだったんだ。

岩淵:そうなんです。全部アドリブ。でも詞は“エサをやれ”で終わりたかったんで、歌詞カードはそのままです。

本多:この曲はノリノリでやったんですけど、やっぱりソーラン節ってみんな知ってるんだなあと思って。ライブでやると異様に盛り上がるのを、後ろから見ててすごい感じます(笑)。民謡ってすごいなと思いました。しかもここまで曲にうまいことハマるのもすごいですよね。

岩淵:おまえがそこまで遊ぶなら、私も合コン行ってやる、大漁だ大漁だ!という思いを込めてのソーラン節。漁ってやるぞ!みたいな勢いで書いてます。とはいえ、結局できないんですけど。

▲2018年12月26日<MOSHIMO「BARI BARI ROCK」~大忘年会 嫌なこと全部ぶっ飛ばす!!編~>@恵比寿LIQUIDROOM

── 響平くん、やってて楽しかった曲は。

本多:ドラマーとしては、7曲目「浮気をするならバレずにやれよ」。ツーバス踏みまくったので。

岩淵:この歌詞、超ふざけまくったな。このアルバムで一番気に入ってるフレーズが、この曲の“ハートのついたスタンプと猫語、激甘文章深夜に誤爆!”で、私の一番の激推し(笑)。馬鹿じゃないのおまえ、って。

── そこ?(笑)。まあ実話かどうかは別として。

岩淵:多少実話、ということにしておいてください(笑)。そもそも猫語というのは、暴露すると、うちのギターの一瀬くんが、女の子に送るメールを私に誤爆しがちで。

一瀬:しがちって、何年か前に1回あっただけじゃん!

岩淵:2回あります(笑)。きついなーと思って、それも含めて書きました。

── そもそもの話、バレなきゃいいのか。

岩淵:バレなきゃいい。自分でも変だと思うけど、本当は、浮気されたら嫌なんですよ。でもバンドの世界にいると思うんですけど、浮気をしてる人ほど話がうまいし面白いんですよ。魅力的に感じちゃって、引き込まれるんですけど、とはいえ、浮気がバレる詰めの甘さも嫌なんですよ。うまい人って、それすら隠すじゃないですか。やるならそのぐらいやりきれよって思っちゃう。こっちは知らないから、それでハッピーじゃないですか。自分で両方料理できないくせに手を出すなって言いたくなる。でも今の私だったら、浮気がバレたら、悔しくって見返してやるって思うかもしれない。絶対おまえの中で私が一番じゃないとかありえないって思うぐらい、今は闘志に燃えてるというか。

── いいね。この視点の恋の歌はなかなか世にないので、面白いと思う。

岩淵:こうやってさらけ出すことによって、男の子には“怖い”って言われることもあるんですけど、女の子はとにかく“わかるわー”って言ってくれる。SNSとかでも、“言いづらいこと言ってくれてて、ありがとう”みたいなメッセージが来るし。「ヤダヤダ」とかも、最初は後ろ向きな自分を見せたくないと思ったけど、最近、これは悪口ではないですけど、メンヘラちっくな女の子が、意外に(MOSHIMOを)好きと言ってくれることが多くて。女の子って、ネガティブというか、病むという言い方は変ですけど、自分がヒロインでいたいし、気づいてほしい気持ちが強いんですよ。自分もそうなんですけど。「いいじゃん」とかも、男の人に自分の弱い部分をわかってほしいけど、できないんだよっていうことを明るく歌ってるんですけど、そういうネガティブな部分をちゃんと言って、いかにその人たちの生活にちゃんと入り込む言葉を生み出せるかな?ということを、すごく思って書いたアルバムです。

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