【インタビュー】FIVE NEW OLD、洗練感とポップさが同居し新たな領域に歩を進めた「WHAT’S GONNA BE?」

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FIVE NEW OLDのメジャー3rd EP.「WHAT’S GONNA BE?」が3月13日にリリースされた。フェスへの出演や様々なジャンルのアーティストとの競演、海外進出などを経て制作された本作は、より心地好さを追求していることが印象的だ。ライブを意識した作品でいながらパワフルだったり、ドラマチックな方向に振るわけではなく、彼らならではの洗練感を継承しつつオーディエンスと一緒に楽しめる楽曲群を提示しているのは実に見事。新たな領域に歩を進めたFIVE NEW OLDのメンバー4名に集まってもらい、「WHAT’S GONNA BE?」についてじっくりと話を聞いた。

■“誰も置いてけぼりにしない”ということが根っこにあった
■そこをみんなで考えて形にしていきました


――「WHAT’S GONNA BE?」の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

HIROSHI:去年の夏ごろから制作を始めたんですけど、ちょうどそのタイミングで夏フェスに出させていただいたり、ワンマン・ツアーが始まったり、タイにライブをしにいったりしたんですね。今まで以上に多くの人の前で演奏する機会が増えたので、新しいEP.を作るにあたって、よりみんなに届くものにしたいという思いがあって。そこから“リズムで一緒に楽しんでもらえるもの”というコンセプトが出てきて、それを意識して制作に入りました。それに、今回のEP.は久しぶりに、ケータイのヴォイスメモにギターを弾きながら鼻歌を歌ったのを録るという古典的なやり方に立ち還ったんです。そういうやり方で1コーラスを作って、いいリズム感のものにするためにメロディーがリズムにどう乗るかということを何個か用意して。それをWATARUに投げて、彼が主軸になってアレンジをどんどん組んでいくという、今までとはちょっと違うやり方にしました。今までは全部ゼロベースからWATARUと一緒に作っていたのを、今回は僕が素材を作ってアレンジを彼に任せるという流れにしたんです。

――本作は4曲収録されています。それぞれの曲を順番に紹介していただけますか。

HIROSHI:じゃあ、僕からいきますね。1曲目の「What’s Gonna Be?」はリード曲ですけど、今回の制作で一番最後にできた曲です。作るにあたって意識したのは、わかりやすさと、お客さんが感じる新しさのバランスを上手く取ることでしたね。わかりやす過ぎても陳腐なものになってしまうし、こっちがやりたいことだけをやっても、お客さんを置いてけぼりにしてしまうというのがあって。今回のEP.は“誰も置いてけぼりにしない”ということが根っこにあったので、そこをみんなで考えて形にしていきました。

WATARU:「What’s Gonna Be?」はHIROSHIから渡された素材を元にして、キーになるリズムとメロディーを組んだ状態のものを最初に作りました。で、単調過ぎると退屈になってしまうので、遊びを入れようと思って。それで、N*E*R*Dやゴリラズ的なちょっと癖のある要素を入れて表現したい部分を際立たせたというのが、この曲の構造の特徴だと思います。あとは、オルガン系のパッドやリバーブをかけたギターを入れて、世界観を深めたという感じです。


――セクションの合間に入るフレーズがいいフックになっていますし、いつもながら少ない音数で世界観を構築しています。ギターに関しては、シングルコイル・ギターの良さを活かしていることもポイントといえますね。

WATARU:今回は、ほぼシングルコイルのギターしか使っていません。3曲目の「Better Man」は歪むギターやアンプを使ったし、より耳に近い音像にしたくて、あえてラインで録ったりしましたけど、基本的にシングルコイルで、生のアンプで鳴らすという録り方をしました。

――伝統的なシングルコイル・トーンですが、それが繊細さや洒落た雰囲気を醸し出していて、シングルコイルPUの良さを改めて感じました。

WATARU:そう、シングルコイルいいんですよね。

HIROSHI:ちょうどストラトを買ったタイミングだったんだよね?

WATARU:うん。そのストラトがすごく良くて、今回のレコーディングも、最近のライブもメインで使っています。

HAYATO:あのストラトは、見た目もカッコいいよね(笑)。ドラムに関してはHIROSHIから話があったように、今回はリズムに重点を置こうということになって。これまでのFIVE NEW OLDを振り返ってみると、初めて聴いた人にとってわかりやすいビートだったり、ノリやすかったりするビートという部分が薄かった気がするんですよ。「What’s Gonna Be?」は、わかりやすくてノリやすいビートということを、今回の4曲の中でも一番実践できた曲といえますね。それに、僕はロック畑出身なのでレコーディングする時にフィル・インが多めだったり、自分の癖を入れたりしがちだったけど、そういうのを極力なくしてみようと思って。なので、シンプルなビートを気持ちよく聴かせることに徹したドラムになっています。

――ビートの心地好さに加えて、ドラムの音もカッコいいです。

HAYATO:音に関しては、前々回のアルバムからお世話になっている敏さん(渡辺敏広)というエンジニアさんが作ってくれるドラムの音が最高なんですよ。「What’s Gonna Be?」のドラムの音は、僕もすごく気に入っています。


――FIVE NEW OLDのライブを観るとよくわかりますが、HAYATOさんのドラムがロック感に溢れていることはこのバンドの個性であり、魅力になっていますね。

HAYATO:ありがとうございます。自分が育ってきたロック畑の色を100%出すまではいかないけど、上手く活かしたドラミングができたらいいなというのがあって。洋楽のバンドは繊細なドラマーなんだろうなと思ってライブを観たらめっちゃパワフルということがよくあるんですよね。そういうことを知って、自分も等身大でいいんだと思って、自分の個性を殺さないようにしています。

SHUN:この曲はリズムを崩さずに、どうグルーブを創るかというのがあって。キープするのが中々難しいと思いながら、それがこの曲の肝になるところなので、ドラムとベースのリズムを止めないというところをすごく意識しました。でも、レコーディングはスムーズでしたね。エンジニアの敏さんは僕らがやりたいことをすぐにわかってくれるので、パッと弾いただけで良い音を作ってくれるんですよ。それに、すごく演奏しやすい環境を作ってくれるし。だから、すごくリラックスしてレコーディングに臨めました。すごく心地好いグルーブをパッケージできたと思うので、聴いてくれた方にそこを楽しんでいただければと思います。

HIROSHI:「What’s Gonna Be?」は、どういう歌を歌おうかなと思っていたところがあったけど、2~3テイク歌ったら終わりました(笑)。いつもは通して何度か歌って、ブロックごとに細かいところを直していくんですけど、この曲は特に直しもなくて。逆に生々しさが出て、この曲がより躍動感を持ったかなと思います。


▲HIROSHI (Vocal, Guitar)

――皆さんの上質なプレイも注目です。「What’s Gonna Be?」の歌詞についても話していただけますか。

HIROSHI:今回は僕達にとってチャレンジングなことをしたというのがあって。今までだったら歌で聴かせ切っていたところにリズムという要素が入ってきて、お客さんと一緒に楽しめる余白を残すということで、普段やってきた手法とは違うことにいろいろトライしたんです。そこに対する不安や悩みがあったけど、それでも僕達は次の段階に進むんだという気持ちがすごく強かったので、腹を括ってみんなで前に進んでいこうという意志を固めることができた。そこに至るまでの自分の紆余曲折を「What’s Gonna Be?」の歌詞には込めたというか。自分とか、いろんなものに対するフラストレーションを爆発させてしまおうということを、思いきりポップに書きました。

――洗練感のある楽曲でいながら歌詞は熱いということも魅力になっています。2曲目の「Please Please Please」は、キャッチーかつ穏やかなミディアム・チューン。

SHUN:この曲はHIROSHI君やWATARU君がよく聴いていたんだろう音楽のエッセンスが色濃く出た曲ですけど、テーマとして“みんなで歌える曲”というのがあったんです。叫んだりするんじゃなくて、ちゃんと口ずさめる曲を作ろうと。僕は元々J-POPとかが好きで聴いていたタイプなので、FIVE NEW OLDの曲は難しくて歌えないという話をしたんです。英語だから難しいし、このメロディーはどういう符割りになっているんだというものが多かったので、俺でもわかる英語の歌を作って欲しいという提案をしたんですね。それで、“Please Please Please”と繰り返す簡単なサビになったし、歌中も中学校で習うような単語で構成してくれたし、メロディーの符割りもわかりやすいものになった。そういうところで、この曲はFIVE NEW OLDの新しいポップネスを提示できたんじゃないかなと思います。

HIROSHI:SHUN君からそういう提案があったので、この曲の歌詞はなるべく辞書を引かないようにして書きました(笑)。SHUN君に簡単な歌詞にしてほしいと言われて、改めて洋楽のトップ・アーティスト達の歌詞を読み返してみたら、たしかに難しい単語はほとんど使っていないんですよね。マルーン5にしても、エド・シーランにしても。クィーンもそう。歌詞カードを見たことがなくても“We Are The Champion”と歌える。そういう強さはあるなと思って、「Please Please Please」はより普遍的な言葉で自分の言いたいことを伝えるというところに立ち還って書くことができたので、すごく良かったと思います。内容はラブソングとも、僕らからファンに向けたメッセージとも取れるようになってはいますけど、とにかくわかりやすいですよね。ひねったことを一緒に歌うよりもストレートなことをライブで一緒に歌ったほうが楽しいし、安心感が生まれるんじゃないかなと思って、そういう歌詞にしました。

WATARU:「Please Please Please」は、デモの段階では年代的な色みたいなものがもっと濃かったんですよ。'90年代初期のトレンディー感というか(笑)。そのままいくんじゃなくて自分達の色や今っぽさ、王道感みたいなものを出したほうがいいなと思ったんです。特に難しいことをせずに表現しているので、そういうところに落とし込んだという感じですね。イントロでギター・メロディーが入ってきたりするのは王道というか、昔ながらという感じだけど、それがこの曲には合う気がしたんです。


▲WATARU (Guitar, Keybords, Chorus)

――昔ながらということでは、アウトロでギターが入ってきて、そのままフェードアウトするという構成もこの曲にフィットしていますね。

WATARU:僕的には弾きどころが、そこだったんです。ギター・ソロではなくて、曲の終わりを彩る要素という捉え方ですよね。そこは、ギターのメロディーが一番上がっていくところでフェードアウトするようにしてもらいました。昔の洋楽は、おいしいところでフェードアウトするんですよ。それも楽曲の聴きどころになっていて、僕はそこに良さを感じていたので、同じようにしたいなと思ったんです。

HIROSHI:あのギターの消えていき方はすごくいい。でも、ライブはフェードアウトできないじゃん(笑)。どうするの?

WATARU:……どうしよう。

HIROSHI:弾き倒すとか?

WATARU:いや、それはないと思う(笑)。

HIROSHI:楽しみだなぁ。続きはライブで…ということで(笑)。「Please Please Please」の歌は、「What’s Gonna Be?」と違って優しくて、ポップな曲なので、自分が得意なファルセットを増やしたりしました。この曲は“聴いてくれた人にとって心地好い歌”ということを、より意識しました。

HAYATO:この曲のドラムは、生のスネアと打ち込みの音をブレンドしたことがポイントです。HIROSHIの理想は打ち込みのドラム・サウンドだったけど、完全な打ち込みは嫌だなというのがあって、生と打ち込みの音を混ぜることにしたんです。だから、音は打ち込みっぽいけど、タイム感は生という形になっている。プレイ的には僕が小学校くらいの頃に聴いていたJ-POPのベタベタな8ビートという感じ(笑)。叩いてみたら、それが一番気持ち良かったんですよ。シンプルな8ビートというのは奥が深くて、フレーズで悩んだりした部分もあったけど、“ザ・王道のドラム・ビート”という感じのビートになっています。ここまで8ビートの曲は、FIVE NEW OLDではなかったんですよ。だから、すごく新鮮でした。

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