【インタビュー】AK-69、使命を胸に

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■ヒップホップがもっとお茶の間に出ていくように
■「なんでもっと見せないの?」って

──客演メンバーにコメントを。まずは、「Lonely Lion」で歌っている清水翔太。

AK-69:勿論ずっといいシンガーだなと思ってましたけど、前回の武道館の前ぐらいに、UVERworldのTAKUYA∞を介して会うことになって、酒を飲むようになり。「一緒にやるならこういう曲作りたいね」という話をしながら、ブルース・スケールで歌が始まって、90’sっぽいいなたいビートが入ってきて、歌は今っぽいオートチューンではなくて……みたいな。王道のヒップホップみたいなことが逆に今は新しいと思っていて、その通りになったんですけどね。翔太と出会ってこういう曲ができたことには運命を感じたし、翔太のファンもすごい喜ぶんじゃないかな。渋いんだけどキャッチー、みたいな。「Lonely Lion」というお題も良かったし、これもいいアンセムになったと思います。

──男の生きざまですね。そして「You Mine」には、ラッパーのt-Aceが。これはちょっと意表を突かれたというか。

AK-69:t-Aceはヒップホップ・シーンにずっといて、年も近いし、般若の弟分みたいな感じで前から知ってたんです。前はこんなにエロを前面に押し出してる感じではなかったんですけど(笑)。今それですごい旋風を巻き起こしてますけど、ヒップホップの枠を超えるレベルでBUZZってるのって、昔はなかったことで。俺と毛色は違うけど、シーンの最前線を走ってる俺がそういうBUZZを取り込んで一緒に作ることによって、さらに大きな波紋にして、ひいてはヒップホップがもっとお茶の間に出ていくようにしたくて。日本はヒップホップのポピュラーさが、海外に比べて全然劣ってるじゃないですか。まだイロモノっぽいというか、そこを変えたいという思いがあって、t-Aceみたいに話題になってる人と一緒にムーブメントを起こすのは、シーンにとってもすごくいいことだと思うんですね。

──まさに。

AK-69:その相手が作られたラッパーで、急に人気が出た奴とかだったらやる気しないですけど、t-Aceは苦労人で、あいつの根底にある反逆精神とか、アーティストとしてのかっこよさがしっかりあるのをわかった上でやりたいなと思ったんです。結果、いい曲が出来たんで良かったなと。このアルバムで唯一、すげえネアカな曲ですね。

──ポップですよね。馬鹿で可愛い男の本音丸出し。

AK-69:女をはべらかしてると言いつつ、好きな相手に真面目に話してる。これも女の子へのアンセムになったんじゃないかな。あとは若い客演の3人は、3人とも全然違うんですけど、すげえいい奴らに出会えたなと。

──「MINAHADAKA」ですね。Lui Hua、OZworld a.k.a. R’kuma、Hideyoshiの若手ラッパー三人衆。

AK-69:そもそも俺のアパレルのブランド(「BAGARCH」)の、モデルをやってもらってたんですよ。俺も若い子のヒップホップをめちゃくちゃチェックしてるわけじゃないんで。OZworldは知ってて、HideyoshiとLui Huaは存在だけしか知らなかったんですけど。俺のスタイリストがヒップホップ・マニアで、「すごいイケてますよ」って勧められて3人に(モデルを)オファーしたんです。でもどうせ一緒にやるなら「音楽も作ってみよう」って、作ったらやっぱり良かったですね。俺が彼らの年の頃、最前線にいる人がフック・アップしてくれることはなかったんで、俺がそうなったあかつきには、そうしたいなと思ってたのもあったんですよ。3人ともクオリティが高いし、いい才能だなと思いましたね。もっと注目されたらいいなと思います。

──みんな二十歳そこそこ。今の若いラッパーって、たとえば90年代の日本語ラップとかまでさかのぼって聴いたりしてるんですかね。

AK-69:どうなんですかね? 昔の話まではしてないですけど、今の子は今の音楽しか聴かない奴もいるし、向こう(海外)のラップをまったく聴かずにラップ作ってる子もいるみたいなんですよ。

──マジですか。それは逆にすごい。

AK-69:Hideyoshiはお兄ちゃんの影響でロックバンドやってたとか、そういうバックボーンがあってこの感じなんだなとか、そういう発見はありましたね。たぶんこの世代からすると、俺は得体の知れない域だと思うんですよ。もちろんAK-69をみんな聴いて育った世代ですけど、クラブで同じイベントに出ることもないし、実体がよくわからないから交わりようがない(笑)。偉そうに言うわけじゃないけど、そこで俺が下りていって接触したことで、彼らもすごい刺激になってたっぽいんで。俺からすると普通のことも、彼らからするとすごい驚きだったみたいで、俺が1キロぐらいある金のチェーンをレコーディングの時に外してバーン!とテーブルに置いたらみんな「うわー」みたいな(笑)。車1台見ても「ラップでこんなに稼げるのか」って思うだろうし、ヒップホップ・ドリームじゃないけど、「俺たちもこんなふうになれるんだ」って思ってもらうことで、おこがましいですけど、一人でも多くの人に希望を与えられたらとは思いますね。

──それ絶対大事ですよ。

AK-69:今まではそれを控えめにしてたというか、そんなに見せてなかったんですけど。ある時知り合いに、「AKくんみたいにヒップホップで成り上がってここまでいった奴はほかにいない。なんでもっと見せないの?」って言われたんですよ。日本人は控えめだから、「俺、稼いでるから」みたいなのは美徳とはされないけど、でもラッパーという職業として、「俺もラッパーになりたい」と思うことを地で行ってるのはアンタしかいないのに、「なんでそれを見せないの?」って。俺の中でそれは当たり前のことだったんで、わざわざ見せるつもりはもうなかったんですけど、最近インスタとかでちょいちょい見せるようにしてます。特にヒップホップを志してる若い奴らに見せることは、大事かなと思うんで。

──なるほど。

AK-69:だから武道館にも3人を呼ぶんですよ。自分の力じゃないにしても、あのステージに立って、舞台の裏側を見て、空気を感じてくれたら、ものすごく大きな経験になると思う。俺のキャリアを使ってステップを踏んでくれたらいいなって、すごい思いますね。俺も自分でガイシホール(名古屋)をやる前に、くぅちゃん(倖田來未)が客演で呼んでくれてあそこに立って、すごい経験を踏ませてもらったんで。自分がされて良かった経験は、みんなにも出来るだけしてほしいんです。まあ、そんな偉そうな気持ちだけじゃないですけどね。

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