【ライブレポート】Soanプロジェクト、2019年初ワンマン
Soanプロジェクトが、1月26日、37日に池袋EDGEでワンマンライブを行った。。
◆ライブ画像
1月26日のライブに掲げられたのは、3rdミニアルバムと同じ<「静廉鳴る共奏、静脈に宛がう。』~2019 1st Oneman Live~>のタイトル。メンバーは、Soan、手鞠、健希(from Bräymen)、祐弥(from DuelJewel)、Sachi(from 黒色すみれ)とお馴染みの顔ぶれ。
新年を愛でるライブという理由もあるのか、今宵のメンバーたちは和装姿で登場。「変わらない日常、変わらない空気…大きな何かを漠然と求めるのは辞めたんだ。何かを自分に求めるのも辞めたんだ。それだけで少し優しくなれる気がした。それを教えてくれたのは…何時も君だった」との言葉から、哀切なSachiのヴォイオリンの音色とSoanの奏でるピアノの旋律。
手鞠が人々を招くように「夕闇に鳴動する衝動と幸福の在処」を歌い出した。たおやかな音色に誘われた観客たちは、夕闇の先に見える景色の中へ足を踏み入れた。まどろむ優しい夕暮れのような調べの中、日常をすべて消し去り、曲の持つ温かさと悲しさが交錯する茜色の景色の中へ溶け込んでいく。想いを零すように切々と響くピアノの音色が、なんて温かく濡れていたことか…。
Soanのピアノの調べに導かれ呼吸をするように歌いだされたのが、「相対する質量の交錯する熱量」。その歌声と演奏は、サビへ向かい感情のレベルをゆっくりと上げていく。沸き上がる想いを抱きしめるように歌う手鞠。彼の気持ちの揺れを、優しく包みこむ演奏陣。温もりを覚えるまどろみの風景が広がっていく。
MCでは「今日は和装ですが、若干、僕に漂う極妻感がね(笑)。Soanさんも、でっかい筆で文字を書きそうですよね」と、さりげなく笑いを取る手鞠。この言葉で緊張感を消し去り、一気に親しみを覚える。もしや今年のSoanプロジェクトwith手鞠、MCでは緩やかな姿を見せてくれるのだろうか。そこへも期待したい。
「陽炎の揺らめきの向こうに、立ち枯れの君を見た。そして、使い果たされるわたし」。祐弥の奏でる二胡の旋律が、観客たちを深く色めく桃源郷な世界へ導いてゆく。「誰にも心許さずに生きる術があるなら」と、異形と化した手鞠が「黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)」を朗々と歌いあげる。そこは、まどろみの地のよう。
温かいSoanのピアノの音色に乗せ、手鞠が語りだす。「柔らかな日差し、風に揺れる花…まるでこの僕を見透かすかのように」と。ほのかに甘い香りを会場中へ漂わせるように、Soanプロジェクトwith手鞠は「林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。」を届けてきた。言葉の一つ一つを心へ刻むように、一つ一つの言葉へ感情を塗り込むように、手鞠は歌を響かせる。終盤には、手鞠がアカペラで歌う場面も登場。
そして彼は語りだした、「薄れない記憶、イメージの向こう側、心の向こう側、記憶の向こう側、何時か、また」と。零れ落ちるように響くアコギの音色と、その音を優しく掬いあげるヴァイオリンの調べ。Soanの叩くピアノの旋律が嘆く声を上げた瞬間、場面は一転。闇の中から郷愁を引き出すように「それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ」が流れだした。その歌は、魂の嘆きかもしれない。呪縛した感情を解き放つように響くその歌声は、命を鼓舞するようにも胸に響いていた。
Sachiの奏でる哀愁を抱いた和な旋律。その調べに導かれ、Soanはドラム台へ。Soanの叩くハットのリズムに合わせ、演奏は熱を帯びはじめる。それまで座っていた手鞠も立ち上がり、沸き立つ気持ちを吐き出すように「sign…-resonance-」を歌いだす。その音はスリリングな空気をフロアー中へ広げていった。何かが破裂しそうな、この張りつめた空気が心地好い。
健希のスパニッシュなギターの旋律が、哀愁と情熱を交錯させるように響き渡る。沸き上がる熱情をギターのボディを叩きながら示す祐弥。奏者たちの音が重なるごとに、そこには情熱という真っ赤な感情が上塗りされてゆく。アコギを用いた祐弥の煽情的なソロプレイを挟み、熱を抱きながら演奏は「感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛」へ。
沸き立つ高揚を歌声に乗せ、凛々しく朗々と歌う手鞠。サビで響かせた、心を掻きむしる慟哭にも似た想い。熱情した語り部となった手鞠、その熱を彷彿させるように音を響かせるメンバーたち。なんて情熱と赤い浪漫を抱かせる歌だろう。「誰かを憎んで 憎んでみたけれども」と、己の気持ちを攻めるように歌う手鞠。
そして祐弥の掻き鳴らすギターの音色に導かれ、気持ちの走るまま手鞠が「正否の相違、或いは利害の不一致」を歌い始めた。演奏が進むごとに楽曲は火傷しそうなほどに熱を帯びてゆく。触れたら壊れそうなくらいみずからを追い込みながら、手鞠は「僕は君のように生きれない」と歌い叫んでいた。
「こっから、いてこましたりましょうか、覚悟はええなっ!」、極妻風にフロアを煽る手鞠。流れだした「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」に合わせ、フロアー中から飛び交う叫び声と、拳が突きあがる。手鞠が、もっともっとと拳と声を求めてゆく。静なる姿を持ったSoanプロジェクトwith手鞠の中に潜む、動な感情だ。
馳せるピアノの音色とスリリングなハットのリズム。演奏は、ねっとりとした熱い旋律の衣をまといながら「吐情、舌上、熱帯夜」へ。がなるように歌う手鞠、うだるようなべっとりと絡みつく感情が、歌と演奏を通し身体中を覆う。その後のMCでは「完全に頭の中にIKKOさんが浮かんでるんだよね。この格好でいると足が開かなくなるから、そんな動きになるんだよな」と、笑いを取る手鞠。もちろん、シリアスなことも語っていたのも報告しておこう。
「まもなく平成という世が終わりまして、新しい時代になりますけど。我々が生きた平成の時代。未来に対して希望を込めて平和に成りますようにと平成と名付けられたんだと思います。その意に反して、平成は幸せではない時代だったと思います。でも、その時代にSoanプロジェクトwith手鞠を通して素晴らしい音楽を残せたのが誇りであり、これからも残していこうと思っています」と手鞠。
最後にSoanプロジェクトwith手鞠が届けたのが、「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。」。激しい唸りを持って奈落へ落下してゆく音の塊。その塊は、途轍もない熱を発していた。触れた人たちをグイグイと引っ張り込む強い力を持って、フロアー中の人たちの心へ衝撃を叩きつけていく。その様に誰もが心を奪われ、じっと想いを受け止めていた。テンションの高い情熱的な演奏が織りなした緊張感。それが、とても心地好かった。最後に、「よーぉ、ポン」の掛け声でライブを締めたのも、嬉しい意外性だったが。
アンコールでは、熱い手拍子に乗せ「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」をプレゼント。大きく手を振る手鞠に合わせ、会場の人たちも掲げた右手を大きく揺らす。本編で描いた哀愁や躍動する姿とは異なる、笑顔が零れる暖かなシーンだ。メンバーとファンが笑みを互いに重ねあわせてゆく。優しさに満ちたこの瞬間が、とても愛おしい。何よりこの景色、また今年も変わらずに味わえることが一番のご褒美だ。そして物語は、翌日に控えたSoanプロジェクトwith芥へと続いてゆく。
写真◎前田俊太郎
文◎長澤智典
編集◎BARKS編集部
セットリスト
「相対する質量の交錯する熱量」
「黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)」
「林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。」
「それは呪いと同義語の魂の鎖 永遠に続く祝福と云う名のカルマ」
「sign…-resonance-」
「感情を媒介として具象化する感傷の逝く宛」
「正否の相違、或いは利害の不一致」
「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」
「吐情、舌上、熱帯夜」
「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。」
-ENCORE-
「それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ」
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