【ライブレポート】スカート、充実の1年を締めくくる東京キネマ俱楽部の夜
12月19日(水)、東京キネマ俱楽部でスカートを観た。映画『高崎グラフィティ。』主題歌になったメジャー1stシングル「遠い春」のリリースに伴う<far spring tour 2018>のファイナルであり、バンド形態のスカートとしては年内のライブ納め。充実の1年を締めくくるパフォーマンスを目撃すべく、普段はなかなか行く機会のない鶯谷へと向かう。
◆スカート<far spring tour 2018> 画像
東京キネマ倶楽部はかつてのグランド・キャバレーを改築したライブハウスで、レトロモダンな独特の雰囲気ゆえにある種音楽を選ぶハコ。透明感あるギター・ポップを得意とするスカートにはどうかと思ったが、演奏が始まると場の空気はあっという間にキラキラ輝くスカート色に染まる。空色のリッケンバッカーを抱えた澤部渡と、サポートの佐藤優介(Key)、岩崎なおみ(B)、佐久間裕太(Dr)、シマダボーイ(Per)が奏でるサウンドは有機栽培野菜のごとくみずみずしく、加工せずともおいしいギター・ポップの原型と言えるもの。「ストーリー」「さよなら!さよなら!」「いい夜」と、軽快なビートを連ねて一気に巡航速度に到達する。
「ツアー最終日にお越しいただきありがとうございます。新しいシングルから1曲やります」
MCが短いのは緊張ではなく、とにかく曲を聴かせたいのだろう。「遠い春」のカップリング「いるのにいない」はジャズ風味を効かせたアップテンポのネオアコ・スタイル。「ランプトン」に続けて歌った新曲(タイトル未定)は、澤部の弾くアコースティック・ギターの爽やかなストロークとダンスビートが溶け合った、切ないAORの趣きがある佳曲。リリースが楽しみだ。
「ここでゲストをお迎えします。Ropesからアチコさん!」
シェイカーを振りながら笑顔でコーラスするアチコの登場で、場の雰囲気がパッと華やいだ。「パラシュート」の間奏、口笛のメロディを吹き終えて照れ笑う澤部。間髪入れずに「視界良好」へ、途切れないグルーヴが心地よい。「せっかくなので少し古い曲も」と言って歌ったのは、3rdアルバム『ひみつ』から「おばけのピアノ」。「ストーリーテラーになりたい」では、アチコと岩崎の清楚なダブル・コーラスもばっちりハマった。さらにこのツアーのハイライトになる「遠い春」では、澤部とアチコの素晴らしいデュエットが聴けた。Ropesを始め、空気公団や(((さらうんど)))などを愛聴し、アチコの声をリスペクトする澤部のピュアな思いが伝わってきて温かい気持ちになれる。
「東京はスペシャルということで、さらにゲストを投入します!」
続いては在日ファンクのホーン隊、村上基(Tp)、ジェントル久保田(Tb)、橋本剛秀(Sax)と共に、TVドラマ「忘却のサチコ」オープニング曲「忘却のサチコ」。スキップするようにハネるリズム、村上の編曲によるホーンの明るい音色に思わず知らず体が揺れる。8年前の1stアルバム『エス・オー・エス』収録曲の「わるふざけ」も、勢いあるホーンのおかげで実にフレッシュ。「返信」はクール&ファンキーに、踊れるリズムがこの場のムードにぴったりだ。極めつけは澤部が「この曲にホーンを入れてみたかった」という「オータムリーヴス」。もの悲しくもゆったりと、明朗な中に陰りのある音色がノスタルジーを演出する。スカートにホーン、いいと思う。
再びバンド編成に戻り、曲は「高田馬場で乗り換えて」。DJ MARUKOME&スカート feat. tofubeatsという長い名前の、つまるところマルコメ味噌のキャラ「マルコメ君」のために書いた曲。西武新宿線高田馬場駅のホーム発車メロディが♪マルコメマルコメ、だというトリビアを披露しつつ、「スカート流のソフト・ロックでした」と締めくくる。いい曲だ。さらに「オルタナな曲を続けてやります」という前振りで、「さかさまとガラクタ」「手の鳴る方へ急げ」など、鋭角的でロックな側面をたっぷりと。曲そのものはメロディアスなのに演奏は鬼ハード、ギターをかきむしりぎりぎりのシャウトを聴かせる澤部が実にかっこいい。三連符のロック・バラード「ひみつ」もとことんエモーショナル。ロックなスカートも素晴らしい。
「今回は新しいシングルの曲も古い曲も、広い目線でやってます」
「花をもって」「ゴウスツ」は、共に『エス・オー・エス』の収録曲。スカートの音楽にそれほど変化はないと思っていたが、あらためて聴くと若さゆえの切迫感や孤独感がひしひしと伝わる、初期の曲には初期ならではの情緒の深みがある。そこから最新アルバム『20/20』収録曲「静かな夜がいい」の、心地よくはずむリズムで本編を締めくくる展開に、CDデビュー8年の年輪を重ねたスカートの歴史を想う。スカートの中には澤部の人生と、そしてリスナーと共に成長してきた日々が詰まっている。
アンコール。光と影が交錯するメロディが美しいミッド・バラード「花束にかえて」は、映画『そらのレストラン』挿入歌で、明るくポップに疾走する「君がいるなら」はその主題歌。2曲を収録したシングル「君がいるなら」は1月23日にリリースされるメジャー2ndシングルで、特に「君がいるなら」は澤部が「スカート史上最も開けた曲になりました」と言う自信作。初めて聴くのにいきなり乗れる、明るい輝きとキャッチーな吸引力を持つ曲。スカートを次のステージへと押し上げる1曲になるはずだ。
最後は溌溂としたアップ・ビートの「月光密造の夜」で、開放感あふれるエンディング。いいライブだった。でもまだ聴き足りない。鳴りやまない拍手に応えたダブル・アンコールは、ストレートなエイトビートのロック・チューン「ガール」をチョイスして、さっき感じた開放感に幸福感を上乗せして明るく一気に駆け抜ける。暗闇があるからこそ光が映える。澤部が本質的に持っている一対一の内省的なメッセージ性と、優れたポップ職人としての開かれたセンスの、どちらも出し惜しみしない今のスカートは強い。2019年スカートの旅、どこまで行けるか楽しみに追いかけよう。
取材・文◎宮本英夫
撮影:廣田達也
■リリース情報
2019年1月23日発売
収録曲
M1.君がいるなら(映画『そらのレストラン』主題歌)
M2.花束にかえて(映画『そらのレストラン』挿入歌)
M3.すみか
形態:CD Only
品番:PCCA.04743
価格:¥1,200+税
※紙ジャケ仕様予定
CDショップ早期予約・購入特典
スカート近年のライブ音源を集めたブートレグCD
※特典タイトル、収録曲未定
■特典は数量限定となるため、発売前であってもご予約状況によっては、先に特典プレゼントが終了する場合もございます。
■特典を確実に入手いただけるよう、お早めにお近くのCDショップ、WEBショップで特典についてご確認をいただいた上でのご予約をお勧め致します。
※特典につきましては、一部取り扱いの無いCDショップもございますので、詳細を店舗までお問い合わせください。また、ネット販売につきましても同様に、一部取り扱いの無い場合もございますので、各WEBショップの告知をご確認ください。
Major 2nd Single『君がいるなら』特設サイト:http://www.kimigairunara.ponycanyon.co.jp
■『20/20』(LP)
2019年1月23日発売
収録曲
Side-A
M1 離れて暮らす二人のために
M2 視界良好
M3 パラシュート
M4 手の鳴る方へ急げ
M5 オータムリーヴス
M6 わたしのまち
Side-B
M1 さよなら!さよなら!
M2 わたしの好きな青
M3 ランプトン
M4 魔女
M5 静かな夜がいい
形態:12inch LP
品番:KAKU-096
価格:¥2,800+税
レーベル:カクバリズム
※完全限定生産
※アナログに関する問い合わせは下記までお願い致します。
HP:www.kakubarhythm.com
Info@kakubarhythm.com
ライブ情報
「涙」第14回
2018年12月31日(月) @ 東京・下北沢 GARAGE
アフター6ジャンクション大晦日特別編 ライブ&ダイレクト・スペシャル in 下北沢GARAGE
2019年1月12日(土) @ 京都・京都 磔磔
Botanical House Vol.4
2019年3月22日(金) @ 沖縄県・那覇 Output
Output 7th ANNIVERSARY 「Analogfish20th×Output」
チケット情報はこちら→http://skirtskirtskirt.com
◆スカート オフィシャルサイト
◆カクバリズム オフィシャルサイト
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