【インタビュー】ネクライトーキー、キャッチーな楽曲とあどけない歌声、ネガティブな歌詞が一体になった1stフル・アルバム『ONE!』

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キャッチーな楽曲と、あどけなさを感じさせる歌声、ネガティブな歌詞などが一体になった独自のロック感が印象的なネクライトーキー。彼らにとって初の全国流通音源となる1stフル・アルバム『ONE!』が12月5日にリリースされた。活動をスタートさせると同時に大きな注目を集め、始動から1年半あまりで全国流通盤をリリースしたことからも、彼らのポテンシャルの高さはうかがえる。ネクライトーキーの中心人物である朝日(Gt)とバンドの象徴的な存在のもっさ(Vo,Gt)に、バンドの成り立ちや『ONE!』についてじっくりと話を聞いた。

■ガムシャラにやってきて長期的な展望を考えることがなかった
■だからアルバムは名刺代わりになるものを作ればいいかなと


――まずは音楽との出会いから教えてください。

朝日:僕は、オアシスと出会ったことがきっかけになって音楽を始めましたけど、一番影響を受けたのは『星のカービィ』というゲームのサントラを手掛けている石川淳さんです。『星のカービィ』の音楽を作曲している人は何人かいるんですけど、その中で自分的に一番しっくりくる曲を作ったのが石川淳さんという作曲家だとわかったんです。『星のカービィ』に限らず、石川さんが作る曲は大好きで、コンポーザーとしてかなり影響を受けています。

もっさ:好きなアーティストを一つだけあげるとしたら、断然チャットモンチーさんです。出会ったのは高校生のときで、私が知ったときはもう高橋久美子さんが脱退されていたんです。でも、二人になってからも大好きです。あと、小さい頃に一番聴いていたのはBEGINさんです。親の影響で、よく聴いていました。

――二人はどんなふうに出会って、ネクライトーキーを結成されたのでしょう?

朝日:僕はネクライトーキーの他にもう一つバンドをやっていて、そのバンドではボーカル&ギターをやっているんです。すごくシンプルな音楽をやっている3ピース・バンドで、それとは真逆のバンド……女性ボーカルで、キーボードもいるようなバンドをやってみたいと思っていたんです。そういう構想が昔からあったんですけど、ずっとボーカルが見つからなくて。実は、もっさとは(もっさが)高校生のときに、一度会っているんですよ。もっさが僕がソロで作った曲をカバーして、ネットにあげてくれているのを聴いて、めちゃくちゃ声がいいなと思って、コンタクトを取ったんです。でも、まだ若かったので遠慮して、そのときは諦めた。そこから5年くらい経って、そういえばあの子はどうしているんだろうなとフト思ったんです。それがもう一つのバンドのライブの日で、楽屋で彼女のTwitterを見たら、バンドをやっていると書いてあって、その日のライブを観にきていることがわかったんです。

もっさ:お客さんとして観に行ったんです。コッソリと(笑)。

朝日:それで、客席をバァーッと探して、5年ぶりにもっさと会って、バンドやろうよと誘ったんです。

もっさ:そのときは、すごくビックリしました。まず、気づかれたことがビックリだったんですよ。ライブに来ているということを、全く伝えていなかったので。しかも、バンドに誘われると思っていなかったから、“この人、正気なんかな?”と思いました(笑)。

朝日:その後もっさがやっているバンドのライブを観に行って、すごくいいと思ったんです。3ピースのガールズバンドでストレートな音楽をやっていたけど、曲に対してこだわりを持っていることを感じたんですよ。それに、もっさはすごく素直にステージに立つ人で、この人と一緒にバンドをやったら絶対に面白いだろうなと思って。それで、改めて連絡を取り直したんです。

――リズム・セクションの二人とは?

朝日:ベースの藤田は僕がやっているもう一つのバンドのベースで、そのバンドでサポート・ドラムをやってくれていたのがタケちゃん(カズマ・タケイ)なんですよ。タケちゃんはそのバンドではサポートだったけど、ネクライトーキーを組むにあたって正式メンバーとして誘いました。

――ずっと前から女性ボーカルのバンドをやりたいと思っていたということは、ネクライトーキーを結成した時点で、やりたい音楽性も見えていましたか?

朝日:見えていました。見えてはいましたけど、やっぱりバンドというのは生き物で、動き出すとみんな言うことを聞かないというのがあって(笑)。それに、実際にリハをしたり、ライブをしたりすることでわかることもあるんですよね。それで、僕が当初思っていたものからは変わっていきました。


――では、1stフル・アルバム『ONE!』について話しましょう。アルバムの制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?

もっさ:こういうアルバムにしようという構想やイメージは、特になかったです。テーマを考えて曲を作ったことがなかったし、フル・アルバムを作るということもイメージしたことがなかったから。

朝日:結成してからずっとガムシャラにやってきていて、長期的な展望を考えたりすることがなかったんです。だから、アルバムを作るにあたっても、コンセプトとかはなくていいかなと思って。とりあえず、ネクライトーキーの名刺代わりになるものを作ればいいかなと思っていました。

もっさ:タイトルもシンプルに、“ONE”でいこうという(笑)。

朝日:コンセプトやテーマがないから、意味のあるタイトルは付けようがなかったんです(笑)。

――ここまでの集大成であると同時に、今の自分達のリアルな姿をパッケージした作品といえますね。一本筋を通したうえで幅広さを見せたアルバムになっていますが、それも自然な結果でしょうか?

朝日:そうですね。曲を並べて、こういう曲もあったほうがいいかなと思って作ったのは、最後に入っている「夏の雷鳴」くらいだったから。ネクライトーキーは何でも好きなメンバーが揃っていて、こういうのはやりたくないみたいなことを言う人間はいないんですよ。だから、ごく自然にいろんな曲をやっています。

――曲を揃えていく中でアルバムの指針になった曲などはありましたか?

朝日:そういうのも特になかったです。ただ、僕の中で特に思い入れが強い曲をあげるとしたら、8曲目の「だけじゃないBABY」ですね。これは、ネクライトーキーを結成する前に作った曲なんです。


▲朝日(Gt)

――「だけじゃないBABY」はグラス・ミュージックっぽさがある曲なので、バンドの芯になるものができた後にバリエーションとして作った曲かなと思いました。

朝日:むしろこっちが原点なんです。でも、そういうふうに感じたのはわかります。最初にYouTubeでミュージック・ビデオを公開しようとなったときに、「タイフー!」か「だけじゃないBABY」のどっちかにしようという話になって。「だけじゃないBABY」を最初に出したら勘違いされるよという話になりましたから。カントリーバンドだと思われるよと(笑)。そんなふうにネクライトーキー的にはちょっと異質な曲だけど、僕は思い入れがあるんです。この曲の歌詞は“一人で、ずっとなにかを探している”みたいな歌詞で、本当にそういう気持ちだったんですよ、このバンドが始まる前は。なにもできずに、ずっと一人で悶々としている状態だったから。それが、今はメンバーとちゃんとこの曲を完成させて、音源になったというところで、この曲の最後の“光はいつでも明日へ向かう心の中にあったんだ”という歌詞が、書いたときは願望だったけど、ちゃんと事実として歌えるようになった。それが、すごく良かったなと思っているんです。

――夢を追い続けることの大事さを、あらためて感じます。それに、どっぷりグラス・ミュージックではないというアレンジも絶妙です。

朝日:カントリーじゃなくて、ちゃんとJ-POPにしようと思っていました。ガチ過ぎると、なんか急にマニアックになってしまって、それは違うなというのがあったから。だから、キーボードやギターのフレーズも、カントリーとJ-POPの複合みたいな感じなんですよね。いいところに落とし込めたかなと思います。

もっさ:私の中で特に印象が強いのは、「明日にだって」ですね。最初は朝日さんが考えたメロディーが乗っていたんですけど、それをずっとライブでやっていく中で、メロディーを変えたくなっちゃって。それで、「変えない?」みたいな話をしたら、「じゃあ、全部好きなように変えていいよ」と言われて、“えっ、私が考えるの?”みたいな(笑)。どうしようと思ったけど、メロも歌詞も全部作り直したんです。そういう作り方だったから、私の中ではちょっと不思議な曲なんですよね。オケは朝日さんらしいのに、メロディーは自分なので。

――朝日さんはメロディーを変えることに抵抗感はなかったんですね?

朝日:なかったです。むしろ、もっさが考えたメロディーと新しい歌詞が乗って、やっとこの曲は完成したと感じました。曲を作って、歌詞を書いて、全部のパートを自分で作り込んで、これでいってほしいと言うときもあるけど、この曲は違っていたんです。基本的にネクライトーキーの曲は僕が編曲を担当していて、特にキーボードとかはガッツリ作り込んでからサポートの人に頼んでいるんですけど、「明日にだって」だけはキーボードを一切入れていない状態で渡して自由に弾いてもらったんです。だったら、メロディーと歌詞も全部もっさに任せようかなと思って。あきらかに、これは違うだろうというものになったらなにか言ったかもしれないけど、そうはならなかった。だから、僕は正解だったと思っています。


▲もっさ(Vo,Gt)

――展開パートでレゲェ調になる構成もポイントですね。

朝日:レゲェなのか、ボサノバなのかという、ちょっと謎なパートですよね(笑)。ああいう展開が入ると、すごく日本的というか、ちょっと前の邦楽っぽくなるなと思いつつ入れ込みました。僕はフジファブリックさんがすごく好きで、この曲は彼らをイメージして書いたので、そういう感じは多分フジファブリックさんからきているんだと思います。ただ、最近はこういう手法を採るバンドがいっぱいい過ぎて、逆にスタンダードなくらいになっているから、自分の中ではごく自然という感じです。

――組み合わせの妙というところで、この展開は秀逸です。「明日にだって」の歌詞についても話していただけますか。

もっさ:えっ? 歌詞ですか……いや……たぶん……その……。

――あれ? 困ってます?

もっさ:いや、歌詞の話をするのは恥ずかしいんです(笑)。この曲の歌詞は、なんですかね……。

――“ダメな自分から変わりたい”という前向きなことを歌いつつ、清々しくはないという独自のテイストになっています。「明日にだって」の歌詞を読んで思ったのですが、朝日さんが書かれる歌詞はネガティブで、この曲も明るくはないですよね。それは、朝日さんの作風に合わせたのでしょうか?

もっさ:いえ、それはないです。私のほうがポジティブだと思うし。

朝日:そうだね。だって、俺は“明日”という言葉は使わないから。僕は後悔とか、“あのとき、ああっだたら”みたいなこと……つまり過去を歌っているんですよ。そういう中で、もっさが作った曲は唯一明日に向かっている。そんなふうに、自分の中から出てこない言葉が出てくるのは面白いなと思いますね。

もっさ:今の話からもわかるように、私は朝日さんの歌詞に寄せようと思ってはいないです。ただ、私は中~高生の頃に朝日さんの曲をめちゃくちゃ聴いてきたので、自然と影響は受けている気がするんですよ。だから、歌っていることが違っていても似た感じの歌詞になるというのはあると思います。

朝日:でも、影響を受けるだけで、こんなに似るかなと思うときもありますね。それくらい、僕ともっさは似ているんです。

もっさ:似ていますね。でも、だからこそ朝日さんが創る音楽に惹かれたわけだし。

朝日:たしかに、そうだね。根っこが似ているんだろうね。

――今回もっささんは「明日にだって」の他に、「ゆうな」というスロー・チューンも書かれていますね。

もっさ:これはネクライトーキーを組む前から、私が弾き語りで歌っていた曲です。だから、今回のアルバムの中で、この曲だけちょっと違うんじゃないかなという気がするんですよ。私はやるつもりは全くなかったんですけど、入れようということになって、“えっ?”と思いました。

――でも、純粋にいい曲ですし、アルバムのいいフックになっていると思います。

もっさ:ありがとうございます。ちょっと前に作りすぎて、今歌うのが恥ずかしいというか。歌詞がストレートですよね。お父さんに向けた思いを、こういうことは若いうちにしか言えないから書いておこうと昔に書いたんですけど、すでに恥ずかしい(笑)。でも、ネクライトーキーはこういう曲調だよということに縛られずに好きな曲をやろうという気持ちになって、アルバムに入れることにしました。

――アルバムに入れるにあたって、もっささんが弾き語りで歌われていたのを朝日さんがアレンジしたのですか?

朝日:勝手にアレンジしました(笑)。もっさの弾き語りも良かったので、できるだけその延長線上で変えることを意識しましたね。もっさが、この曲好きだけど、バンドでできるかなと言っていたので、「いや、できるって」と言って。気持ちを込めて自分なりに編曲したら、もっさも気に入ってくれました。

もっさ:朝日さんは“勝手に”と言いましたけど、すごく私のことを考えてくれたんだと思います。アレンジしてくれたデモを聴いて、すごくいいなと思いました。

――ネクライトーキーの幅広さがわかるということでは、ケルト音楽が香る「がっかりされたくないな」も注目です。

朝日:僕はCDショップに行って、ワールド・ミュージックの棚で適当に“ピュッ”と買ったりすることもあって。特に、アイリッシュやケルトがすごく好き。なので、そういうテイストも自然と出てくるんですよね。それに、ああいう音楽はすごく日本人と相性がいいと思うんですよ。だから、出てきたときは素直に活かすようにしています。あと、この曲はちょっとゲーム音楽っぽいんですよね。RPGっぽさがある。冒険だったり、船出をイメージして作ったことを覚えています。歌詞の内容は、全然違いますけど。

――そうなんですよ。曲は抒情的ですけど、歌詞はなんというか……。

朝日:暗いですよね(笑)。

――暗いです(笑)。やるせない日々を描いて、そこから抜け出すために立ち上がれというような歌詞かなと思ったら、やるせない状態のまま終わっていて衝撃を受けました。

朝日:そう。他の曲はがんばって結論を出したりしているけど、この曲は最後の歌詞が“それを眺めていたかったな”という言葉になっている。“本当のことが光る”みたいな言葉の後に、“それを掴むんだ!”とかではなくて“それを眺めていたかったなぁ”という。掴むことができたのかがわからないまま終わっていく。そういう意味では、変な曲ですよね。というか、このアルバムは暗いです(笑)。

もっさ:暗いね(笑)。「がっかりされたくないな」も、すごく暗いし。私は、この曲は多分「だけじゃないBABY」と同じ頃に、朝日さんが作ったんじゃないかと思っているんですよ。

朝日:うん、近い。

もっさ:やっぱりね。この曲は、すごく悩んでいるときに書いたんだろうなと思って歌いました。

――ネクライトーキーは楽曲やアレンジ、それぞれのプレイなどはリスナーの気持ちを上げるものになっていますので、ドンヨリした印象は受けなかったです。

朝日:そうですね。これで曲も暗かったら、救いがないというか(笑)。僕は多分バランスを取る癖があるんだと思います。あまりケルトに寄り過ぎないようにしたりするのもそうだし、編曲するときもそれぞれの楽器のバランスを考えるし。

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