【インタビュー】とけた電球、三人が丹精込めて作り上げたハイ・クオリティーな最新音源「STAY REMEMBER」

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■“いろいろなことがやりたい”という好奇心がありつつ
■バンドのグルーブや技術がある程度成熟してきている


――4曲目の「日々のかけら」は、温かみに溢れたスロー・チューン。

岩瀬:僕は今回のEPの中で、この曲が一番好きです。僕は友達がいないんですよ。うちのメンバーは三人とも友達がめっちゃ多いというタイプではないと思いますけど、僕は本当に遊びに行くことも稀で、悩みを相談する友達もいなくて。そういう中で、俺はマジで孤独だなと、ふと思ったときがあったんです。それで、僕が仲がいいと思っている人にとって、僕が悩みを相談できる友達であったりとか、しんどいときに支えてあげられる人になれるといいなと思ったんです。そういう思いを込めて書いたのが「日々のかけら」です。

境:これは、岩瀬の人柄が本当ににじみ出ている曲だなと思いますね。これもデモで持ってきたときは弾き語りで、歌も歌詞もほぼできあがっていて、この曲は今回のEPに入るべき曲だなと思ったことを覚えています。あと、僕らはバラードをリード曲や表題曲にすることが多くて、気合を入れてアレンジしないといけないことが多いんですけど、今回はバラードがリードじゃないということが決まっていたんですね。だから、変な話、純粋にこの曲のために演奏ができたというか。変に煌びやかにしなくてもいいし、変に誇張表現しなくてもいいというところで、すごく気持ち良く弾かせてもらいました。

――エレピの音が、すごく良い味を出しています。

境:ありがとうございます。スタジオにたまたまビンテージのフェンダーRhodesがあって、それを使わせてもらったんです。それに軽くコーラスをかけて、フワッとさせたらものすごくいい音で、ビックリしました(笑)。

高城:この曲は「覚えてないや」との対比みたいなところで、内省的な感じなのかなという印象ですね。演奏に関しては、みんな四畳半で弾いているような感覚の小さい音で弾いていて、僕も小さい音で叩きました。で、ハイハットは14インチが一般的なんですけど、この曲は16インチにして、ちょっと温かくなるというか、点がばらけるようなハイハットの音にしてみたんです。そうやって、ある意味雑さみたいなものを表現しました。


――Aメロは無機質な8ビートでいって、Bメロからゴーストを入れてロールするという流れになっているのも絶妙です。

高城:1番も2番もそうですけど、歌がいろいろ語るAメロ後のBメロはすごく感情が出ているというか、泣けるポイントという印象があって。無意識かもしれないけど、そこでみんなの演奏も一気にギア・チェンジができたのかなという気がしますね。

――歌に寄り添った結果、ああいうアプローチになったんですね。それに、アウトロのギター・ソロも必聴です。

岩瀬:でも、これも適当です(笑)。フレーズも決めていなかった。最後にギター・ソロを入れてエモい感じにしたいなと思っていて、エモくするなら機材もエモくしようと思って、僕がこのバンドを始めてからずっと使っているTokaiのジャズマスターを、アンプに直結して弾きました。

――えっ、アンプ直結ですか? ファズをかけているのかと思いました。

岩瀬:いや、アンプだけで、こういう音がするんですよ。ちょっと名前を忘れちゃいましたけど、カナダのマイナーなアンプで、真空管のコンボアンプ。先輩に安く譲ってもらったアンプで、僕は結構好きなんですよね。

――そういう機材を使って、アドリブでソロを弾かれたんですね?

岩瀬:そう。その場の感覚で弾いて、しかも実際は倍くらいの尺を弾いて、途中で切ってもらったんです。

――感情がダイレクトに出ているという意味で、アドリブをチョイスしたのは正解だったと思います。「STAY REMEMBER」を締めくくるのはグルーヴィかつ煌びやかな「僕を忘れないでね」というミディアム・チューン。

岩瀬:この曲は素材だけが2~3年前からありました。でも、そのときは僕もうまく作れなかったし、バンドでやってみてもうまくできなかったんです。今回のレコーディングで何曲か作らないといけないとなったときに、そういえばこれをやっていなかったなと思って。サビが気に入っていたので、もう1回作り直して、今の形に落とし込みました。今回のアレンジは、よくできたなと思います。

境:作曲の名義が岩瀬と僕になっているのは、岩瀬が9割くらい作ったところに僕がCメロを加えたんです。なので、フィフティー・フィフティーの共作ではなくて、ほぼ岩瀬が作った曲です。岩瀬が話したように、この曲の素材は結構前からあって、アレンジも4種類目くらいなんですよね。岩瀬は結構多作なので、ちょっとアレンジが気に入らなかったりすると、すぐにボツになるんですよ。でも、僕もこの曲のメロディーは覚えていたので、引っぱり出してきてやろうよと言って。岩瀬も言ったように、これは今の自分達じゃないと形にできなかった気がしますね。今のとけた電球は“いろいろなことがやりたい”という好奇心がありつつ、バンドのグルーブや技術が、ある程度成熟してきているんです。そういう一番いいタイミングで引っ張ってこれた曲じゃないかなと思います。

高城:この曲のドラムは1番のAメロはマーチングで、2番はゴーストを入れたパターンで、4つ打ちあり、8ビートあり…というふうに、いろいろやっています。弾き語りでも形になる曲ではあるので、バンドでやるからには派手さとか、場面転換、メリハリといったことを意識するべきだなと思ったんです。ちょっと、“ミュージカル感”みたいなものを意識していた気がしますね。ビートや、ちょっとしたフィルインも、うまくハマったかなとは思います、結果的に…ですけど。曲順的にも、この曲を5曲目に置いたのは良かったですね。今まではバラードを一番最後に置くことが多くて、当初は「日々のかけら」を最後に持っていこうかという話もあったけど、「僕を忘れないでね」を最後に置くことで、自分達はこれがやりたいんだという意思表示になったと思っています。


――心地好い余韻が残る終わり方になっていますよね。「僕のことをわすれないでね」の歌詞は、ファンの皆さんに向けたメッセージかなとも思いましたが……。

岩瀬:いえ、これも元カノの歌といえば、元カノの歌です(笑)。

境:でも、ファンに向けた歌かなと思われたのはわかります。僕も最初に歌詞を読んだときに、これはバンドのことを歌っているのかなと思ったんですよ。それで、岩瀬に聞いたら、違うと即答されました(笑)。

岩瀬:違う。付き合っていた人と別れたときに、別れることになったけど、出会ったことが運命だとしたら、また来世で出会えるといいね…ということを歌った曲です。

――なるほど。ロマンチックな歌詞なんですね。

岩瀬:はい。一応、ロマンチストやっているんで(笑)。

一同:“やっている”って(笑)。素でロマンチストじゃん(笑)。

岩瀬:それは、どうかわからない(笑)。

――いえ、岩瀬さんは、ロマンチストだと思います(笑)。さて、「STAY REMEMBER」は、テイストの異なる魅力的な5曲がバリッと並んだ好盤に仕上がりました。本作のリリースを記念して、来年3月1日にTSUTAYA O-WESTで行うライブは、どんなものになりますか?

境:TSUTAYA O-WESTでワンマンというのは、僕らとしては結構挑戦なんですよ。バンドの最初の頃に出た大会の会場がO-WESTだったんですけど、すごく緊張してしまって、そのときのことは全く覚えていないんです。それも含めて、O-WESTは僕の中で思い入れのある場所なんです。そこでワンマンをするというだけでもズッシリとくるものがあるし、今から緊張している。こういう気持ちのときはいいライブができることが多いので、そうなるようにがんばります。

高城:今年の始めにベースがやめて、三人でバンドを進めていかないといけないという状況になって。今回の「STAY REMEMBER」は僕も作曲に参加したり、境の作曲が増えたりしたし、CDの盤面だったり、特典とかも含めて、三人で丹精込めて作ったという感覚が強いんです。僕達らしさが伝わる作品になったと思うし、それをライブでもお客さんと共有できたらいいなと思いますね。境と同じように、僕もO-WESTには思い入れがあって、そこでみんなと一緒に最高の空間を創ることを楽しみにしています。

岩瀬:境が話した大会のときのことは僕はよく覚えていて、最悪だったんですよ。当時は今の曲を何倍もわかりにくくしたような曲が多くて、見ている人がポカンとしていて、それがすごく悲しかった。今はもっとわかりやすくて、みんなが楽しめる曲ができているので、あのときのリベンジをしたいというのはありますね。それに、このライブは3~4ヶ月前くらいに決まって、それからずっとMCで何を言おうかなと考えているんです。普段のライブでは適当なことばかり言っているけど、せっかくO-WESTでやるし、ワンマンということで、僕らを見たくて来てくれた人がいる場なので、とけた電球を6年やってきて感じたことだったり、僕らの音楽に救われている人がいるとしたら、そういう人達に僕が思っていることをちゃんと届けられるようにしたいんですよね。僕らのことを応援してくれている人には本当に感謝しているので、今度のO-WESTでちょっとでも恩を返せたらいいなと思っています。

取材・文●村上孝之


リリース情報

とけた電球「STAY REMEMBER」
11月28日リリース
HPTD-0003¥1800(+tax)
1.新鮮な身体
2. ロードムービー
3. 覚えてないや
4. 日々のかけら
5.僕を忘れないでね

ライブ・イベント情報

とけた電球ワンマンライブ『想いがハジケル3秒前』
1st.E.P.『STAY REMEMBER』リリース記念ライブ
1月30日(水)大阪・心斎橋Music Club JANUS(企画ライブ)
3月1日(金)東京・渋谷TSUTAYA O-WEST(ワンマンライブ)

<タワーレコード インストアライブ>※観覧フリー
12月15日(土)タワーレコード難波店5階イベントスペース
12月21日(金)TOWER RECORDS新宿店7階イベントスペース
1月14日(月祝)名古屋パルコ西館1階イベントスペース

<新宿ロフトの年末大感謝祭2018年末ダヨ!全員集合!!>
12月27日(木)新宿ロフト
とけた電球他、全13アーティスト出演!

12月29日(土)新宿SAMURAI
とけた電球/GOODWARP/スロウハイツと太陽/CRAZY WEST MOUNTAIN/アマアシ/tonetone

ニアフレンズ「俺らがやらなきゃ誰がやるツアー」
1月12日(土)滋賀県・浜大津B-FLAT
とけた電球/ニアフレンズ/Arakezuri/Blume popo/The Satellites/The Dragers

ぼこた&もも姉pre.「米音~come on~vol.7」
1月19日(土)新潟県GOLDENPIGS BLACK
とけた電球/ニアフレンズ/Chronograph/useless human being/clumsy dolt/Monstera

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