無能なルシッド、池袋から始動「君たちの負の感情を、僕たちにすべて投げ捨てていって」
■無能なルシッド 1stワンマン@池袋EDGE ライブレポート
彼らの始動ライブは、場内を黒く染め上げるように…いや、心の内側に秘めた感情をゆっくり解き放つように始まった。演奏は、途中から気持ちを揺さぶるように一気に躍動。沸き上がる痛い感情を叫ぶように、その音は唸りを上げ襲いかかってきた。1stシングルとしても発売になる「何も無い…何も無い…何も無い…」、激しさと暗鬱な表情を重ね合わせたこの歌は、闇(病み)の中で蠢く気持ちを解き放つことで、絶望の中から、痛みを通して生を感じようとしていた。
「俺たちが無能なルシッドだ!」。無垢の叫びに続き、楽曲は「コンフリクト」へ。狂ったように笑う無垢。重厚さと激しさを抱いた楽曲が衝撃をもってフロアーへ襲いかかる。早くも客席の最前では、頭を振り乱し、飛び跳ね、演奏に合わせ騒ぎ狂う人たちの姿も。それとは対象的に、彼らの姿を凝視する人たちもいる。暴れようと、心惹かれ固まろうが、すべて自由。とはいえ、演奏が熱を上げるごとに何時しか後ろの観客たちも身体を揺らし、その場で小さく飛び跳ねていた。その熱が伝わるごとに、無能なルシッドは観客たちを自身の懐へ取り込むライブを見せてゆく。
挑みかかる熱いライブとは裏腹に、MCでは意外とフレンドリーな姿を見せるメンバーたち。そこのギャップも、彼らに惹かれる一面か。
「殺れるかー! 拳で来いっ!」。「陰口ピエロ」は、メンバーと観客たちが共に頭上高く右手を掲げ、声を張り上げ騒ぐ様から始まった。躍動する演奏に合わせ、絶叫と拳を突き上がる風景が場内に描き出されてゆく。タイトなビートの上で、歪むギターが気持ちを荒ぶらせる。観客たちを熱狂の中へグイグイ引き込む無垢。「頭をちょーだい」の声を合図に、観客たちは「蜜売」に合わせ激しく頭を振り出した。歪んだ音を振りまき疾走する演奏に触発され、大きく身体を折り畳む。無垢が激しさの中へ抑揚を描いた声をぶつけ、観客たちの心を揺さぶる。途中ジャジーな転調も加え、荒ぶるだけじゃないドラマを作り上げていく。
「人は誰しも、悩みや痛みや弱い部分を抱えて生きていると思う。それは、何も恥ずかしいことじゃない。無能なルシッドはそんな弱い部分を持ち寄って拭いあえる場所でありたいと思っています。君たちの負の感情を、僕たちにすべて投げ捨てていってください」
無垢の言葉を曲へ投影するように会場中を支配したのが、重く激しい姿と哀切で美しい音色を交錯させた「死にたい君に贈る歌」だ。弱い心模様を、負の感情を、彼らは黒い音に乗せ、心を浄化するように解き放つ。今にも心壊れそうな表情で歌う無垢。乱れゆく彼の心情を強く揺さぶる演奏。その様を、誰もが心射抜かれるように見つめていた。
「みずからの場所は自分で作るものだ。他人に何かを期待したり、そんなことじゃ前には進めないよ。」無能なルシッドは奈落へ突き落とす衝撃的な演奏に乗せ、「無欲」を通しメッセージを突きつけた。揺れ動く切ない感情のままに歌い嘆く無垢。彼の想いを、激烈な演奏が未来へ続く道標として盛り立てる。熱狂するも良し、その想いを心で抱きしめるのも、それは触れた人の自由。ただ、心に救いを求めたいとき、無能なルシッドの歌が何かの道標になるかも知れない。
「僕たち無能なルシッドの4人は本音をぶつけあって一つになり、ここに立っています。この仲間とやっていてすげぇ楽しいと感じています。僕と君たちとが一つになったら、すごく楽しいライブになっていくと思います。俺たちと一つにならないか!」
最後に無能なルシッドは、剥き出しの感情を荒々しくさらけ出すように「自我殺傷」をぶつけてきた。暴れ騒ぐ観客たちも何時しか会場中の大半が心に抱えていた負の感情を吐き出し、気持ちを開放していた。胸に何かモヤモヤを抱えているなら、まずは飛び込んでみればいい。その上で彼らの歌が、心に必要なのかどうかを判断すればいい。そんな最初の投げかけを、この日、無能なルシッドは示してくれた。
この日が、無能なルシッドにとって始まりを告げた日。これから彼らがどんな剥き出しの想いをメッセージしてゆくのか。気になったら、まずは無能なルシッドの動きをチェックしていただきたい。
TEXT:長澤智典
編:BARKS編集部
1st Single「何も無い…何も無い…何も無い…」
2,160円(税込)/ 2,000円(税抜)
MLCD-001
1.何も無い…何も無い…何も無い…
2.陰口ピエロ
3.蜜売
4.死にたい君に贈る歌
<無能なルシッド全国ワンマンツアー「全国能無の集い」>
3月28日(木) 札幌SUSUKINO810
3月30日(土) 八戸FORME
3月31日(日) 仙台SPEACE ZERO
4月01日(月) 郡山CLUB#9
4月02日(火) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
4月06日(土) 大阪北堀江club vijon
4月07日(日) HOLIDAY NEXT NAGOYA
4月08日(月) 金沢AZ
4月14日(日) 香川GET HALL
4月15日(月) 岡山IMAGE
4月17日(水) 福岡graf
TOUR FINAL
4月21日(日)池袋EDGE
■チケット情報
e+にて12月15日より受付開始
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002280383P0030001e