【インタビュー】プライマル・フィア「ツアーの成功がバンドの評価に反映されている」
元ガンマ・レイのラルフ・シーパース(Vo)とシナーのリーダーであるマット・シナー(B、Vo)を中心としたジャーマン・メタルのベテラン、プライマル・フィアが来日公演を行った。通算12枚目となるニューアルバム『Apocalypse』のツアーとともにバンドの20周年を迎え、日本では19年ぶりとなるシナーとのカップリングツアーが実現した。マット・シナー(B、Vo)、トム・ナウマン(G)、フランチェスコ・ジョヴィーノ(Dr)の3名はシナーのメンバーでもある為、2ステージでの出演だ。
◆プライマル・フィア画像
シナーではブリティッシュ・ハードロックンロールなステージを披露し、転換20分後のプライマル・フィアでは質実剛健ジャーマン・メタルな世界を一気に繰り広げてくれた。終始、ラルフ・シーパース(Vo)のフロントマンとして自信に満ちたステージ運び、オーディエンスとのコール&レスポンス、凄まじいハイトーンヴォイスが圧倒的な熱量で場内を包みこんでいた。2ステージをプレイする演奏メンバーには熟練の安定感があり、マット・シナーは存在感も格別に、アレックス・バイロット(G)のピッキング・ハーモニクスも冴え渡る。伝統的なヘヴィメタルと壮大なスケール感、メロディックなバランスが絶妙なバンドであり、常に観客も歌うオーディエンス参加型な一体感あるショウは、多幸感にあふれるものだった。
東京公演のステージ前には、マット・シナーとラルフ・シーパースがインタビューに応じてくれた。
──20周年おめでとうございます。日本はすっかりお馴染みになりましたね。
マット:ありがとう。日本にはもう親しんでいるから特に目新しい事はないけれど、でも来るたびに印象も違うからとても楽しいよ。ただ、今回はドイツから来たから時差ボケが酷くてね、色々と支障が出ているよ(笑)。
ラルフ:僕が初めて日本に来たのは1990年だったから、もう28年も経ってしまったと考えると怖いよね(笑)。この28年で日本も色々な面で変わったとは思う。世界中がそうではあるけどね。でも、日本のみんなはとてもプロフェッショナルだよね。ステージのセッティングにしても準備が素晴らしい。特にスケジュール表なんてどこの国にもあるけど、日本人はきちんとその通りに進行するもんね。
──20周年のツアーはいかがですか?
マット:今回のツアーは20周年ではあるけど、ニューアルバムのツアーという意味の方がバンドとしてはエキサイティングなんだ。新曲に対する反応がヨーロッパでは凄く良かったし、ライブの動員数も以前より増えた。新曲をプレイしてもみんな歌ってくれたし、ニューアルバムにともなうツアーが成功したのと同時に20周年な感じさ。ちなみに今日は本当に久しぶりに「Face the Emptiness」と「Under your Spell」をプレイするし、新曲も織り交ぜて前回のセットリストから6割は変えているよ。
──近年は各フェス出演もとても多増えましたが、ドイツを代表するバンドになった実感はありますか?
ラルフ:結論から言えばイエスさ。フェスティバルによっても違うけど、ブッキングエージェントも凄くプッシュしてくれていて、以前よりも出演する時間も後ろの方になってきた。でも何よりも僕らのツアーにたくさんの人が来てくれるようになっているから、ツアーの成功がバンドの評価に反映されているんだと思う。もうそろそろ、そうなってもいいだろ?20年経ったしさ(笑)。
──最新作『Apocalypse』は素晴らしい内容ですが、意識した点や新しい試みはありましたか?
マット:前作アルバム『Rule Breaker』はバンドとしては凄く満足の作品だった。反応も凄く良かったし世界中でチャート入りしたし、初めてアメリカのビルボードチャートにも入った。これがあっての今回のニューアルバムで、『Rule Breaker』からの違いはあまりないかもしれないね。むしろ何かを変えてやりたい気持ちもなかった。でも、もう少し細かな部分にはこだわって、楽曲も前作と同じクオリティを保ちながらも新しいものを作りたかった。期間も1年以上かけたし、間にもライブはやっていたから中断もしたけれど。完成した作品に対してはバンドがどう思うかではなくて、ファンが決めるものだから、ファンに委ねた、そしたらファンからもメディアからもとても反応が良かったし、結果的には過去最も成功したアルバムになった。そして20周年を迎え、これまで苦戦してきたイギリスでも初めてトップ50に入れて、これまで以上のインパクトを残せたと思っているよ。
──マット、アレックス(バイロット / G)、マグナス(カールソン / G)とソングライターが3人いますが、それぞれの役割りはありますか?
マット:トムとラルフも忘れないで(笑)。基本的な曲作りは僕とマグナスで行ったけど、そこにラルフも手を加える感じなんだ。トムが僕の家に来て「The Ritual」を書いたし、アレックスがアイディアを出したりラルフやマグナスとのコンビネーションで作っているよ。
──毎回テンションが下がらない作品を作るコツはありますか?
ラルフ:チームなんだよね、メンバーみんなが頑張っている成果だと思う。特にプライマル・フィアはマットがプロデューサーも兼ねていて、アイディアは全員から出してアルバム1枚作るにあたって25曲くらい用意する。全部は収録できないから、削り取る作業も必要で、最終的な判断をする人が必要となる。それがマットなんだ。「ここまでだ」という判断や「どう変化をつけるか」も大事だと思うし、「人々の心に残るメロディーにするにはどうすべきか」…そういうジャッジがね。そしてこのメンバーは全員が経験も豊富だし、その経験値も役立っているよ。
マット:バンドメンバーの良いケミストリーだよね。長い間ツアーに出たり、制作を共にしてみんなととても平和で仲が良いよ。そして今時はドラムレコーディングを大きなスタジオできちんと録る事をやらないバンドが多いよね。お金もとてもかかるし、節約するんだろうね。僕らはどんなにお金がかかろうと本物のドラムサウンドを録りたいし、できるだけ生のドラムの音を使いたい。高くついてもやるだけの価値がある。本物の人間が叩いている新鮮な音になっていると思うよ。
──トリプルギター編成なので、ギターソロバトルなんかも期待しているのですが…。
マット:うーん、曲によるかな。曲そのものが大事だからね。今回で言うと「King of Madness」では16種類のギターサウンドが入っているんだ。他にもそれぞれギタリストが輝く部分はあると思うけど、あくまでも曲のメロディーを大事にしたいのと、メンバー全員の良さを最大限に引き出す事は考えているよ。それがギターバトルであればやるだろうね。例えば、3人のギタリストがソロを弾くのでもやたらとピロピロとではなくて、短くても彼らの良さが出るような効果的な使い方をね。ニューアルバムでもアレックスとトムが二人でツインリードの部分もあるしさ。
ラルフ:今日のステージでピロピロやってもらおうか?速いやつ(笑)。
──1999年のシナーとのカップリング来日の際「あまりにも大変でもうやりたくない」と言っていた記憶がありますが(笑)、今回はいかがですか?
マット:今すでに後悔しているよ(笑)。でもやっぱりプライマル・フィアが20周年だし、何かスペシャルな事をやりたいなとは思っていたんだ。そんな時に日本のプロモーターからこの案が出て、シナーもずっと日本に来れていなかったから「このカップリングならファンが喜ぶよ」と言われて、ひとつのバンドの方が自分としては楽だけど「やるか!」と。
──ヴードゥー・サークル(マット、アレックス、フランチェスコ在籍)も日本ではとても人気があります、こちらとのカップリングツアーもありえますか?
マット:今の時点ではないかな。と言うのは、プライマル・フィアがニュークリア・ブラストと次回のアルバムから3枚の契約をしたんだ。僕らにとってはとても重要な事でね、まずはプライマル・フィアの次作の制作が最優先事項になるよ。ツアーが一段落したら来年の夏くらいから制作して、2020年始めくらいにリリースを目指したいんだ。プライマル・フィアの次がシナーになるか、ブードゥー・サークルになるかはまだわからないけど、基本的にブードゥー・サークルはアレックスのバンドだし、彼の時間さえあれば喜んで協力するしね。それがいつかは今は見えないかな。
──次作も期待しています。では最後に日本のファンへメッセージを。
ラルフ:いつ戻って来ても日本は本当に嬉しいよ。昨日もみんな暖かく迎えてくれたし、今日のライブもこっそり外を見てみたら、早くからファンが来てて嬉しくなったよ。今夜のショウを楽しんでね。
マット:とてもエキサイティングしているよ。まぁ、2ステージだからどうなるかわからないけど、乗り切ってみせるよ。ファンの為にやっているから、ライブが終わって幸せな気持ちで帰って貰って、ライブが良かったと言って貰えたら僕らもハッピーだよ。
取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Yuki Kuroyanagi
<Primal Fear 〜 APOCALYPSE Japan Tour 2018 〜>
1.Apocalypse
2.Final Embrace
3.Chainbreaker
4.Blood, Sweet & Fear
5.Face the Emptiness
6.Hounds of Justice
7.The Ritual
8.Under Your Spell
9.Nuclear Fire
10.Eye of the Storm
11.King of Madness
12.The End Is Near
13.When Death Comes Knocking
14.Metal Is Forever
〜 Encore〜
15.Fighting the Darkness
16.In Metal We Trust