2018年を駆け抜けた、スピッツの夏

この夏、スピッツが、毎年恒例となっている自身主催のレギュラーイベントを大阪・東京・宮城の3ヵ所で開催した。

22回目の開催となった大阪の＜ロックロックこんにちは！＞は、残念ながら1日目が台風の影響で中止に。しかし予定通り開催された2日目には、去年一昨年と同イベントにオーディエンスとして参加していたというあいみょんや、5度目の出演となったORANGE RANGE、1日目に出演予定だったもうひとつのバンドindigo la Endのバンド名をスピッツのアルバム『インディゴ地平線』をもとに付けたという川谷絵音率いるゲスの極み乙女。ら豪華出演陣が熱い演奏を披露。さらに、お笑い芸人のガリガリガリクソンがVTR出演するなど、大阪ならではのユニークな演出も多いに会場を沸かせた。


8回目の開催となった東京の＜新木場サンセット＞は、毎年、スピッツメンバーが気になっている新人も含め、世代もジャンルも超えた雑多なラインナップが醍醐味のイベント。今年も、THE COLLECTORSやウルフルズのジョンB率いるジョンB & ザ・ドーナッツ！といったベテラン勢に加え、キュウソネコカミやyonige、雨のパレードといった大型フェスでも人気のバンドたち、さらにミツメやカネコアヤノ、ズーカラデルといったインディーズシーンで話題の新鋭たちが揃い、異種格闘技戦のようなライブを披露した。THE COLLECTORSは“ドルフィン・ラヴ”、ミツメは“プール”と、スピッツのカバーを披露する貴重な場面も。


9回目の開催となった宮城の＜ロックのほそ道＞は、これまで宮城を拠点に福島・岩手・山形・青森・秋田と東北地方を行脚する形で開催されてきたイベントで、今年は去年に引き続き仙台GIGSでの2デイズ開催。「宮城の」というより「東北地方の」イベントというべき地域に根差した温かさを感じさせるイベントだ。go!go!vanillas、the peggies、UNISON SQUARE GARDEN、SUPER BEAVER、ceroといった、それぞれ全く異なった個性を持つ、今勢いに乗るバンドたちの熱演が仙台の夜を濃く彩る。イベント常連であるフラワーカンパニーズは、スピッツ“メモリーズ”のカバーを1曲目にサプライズで披露し、ほぼ同世代のスピッツメンバーも驚かす貫禄を見せた。


そして、3ヵ所5公演の全てでトリを務めたスピッツは、「涙がキラリ☆」や「8823」「スパイダー」といった人気曲に加え、「漣」や「さらばユニヴァース」「甘ったれクリーチャー」といったライブではなかなか聴くことができないレアな楽曲も披露。同名のフェスまで生まれたスピッツの夏ソング「夏の魔物」も全会場で披露した。また、2016年にリリースされたアルバム『醒めない』に収録された「ガラクタ」が、大阪の＜ロックロックこんにちは！＞でライブ初演奏されるなど、ファンにも驚きを与えるセットリストで各地を盛り上げた。

さらに、毎年これらのレギュラーイベントではスピッツによるカバー曲の披露が恒例となっているが、今年はサカナクションの「新宝島」と、チャットモンチーの「シャングリラ」のどちらかが各会場のアンコールで披露された。スピッツよりも下の世代のバンドのカバー、しかも普段とはカラーの異なるダンサブルな楽曲の新鮮さに、各地のオーディエンスは大きな歓声を送っていた。

2018年の夏を、様々なアーティストたちと共に熱く駆け抜けたスピッツ。このあと、年内には＜MONGOL800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!!18＞、＜FM ROCK KIDS 30th Anniversary LIVE＞への出演が予定されている。

なお、各レギュラーイベントの詳しい模様は、スピッツの公式スマートフォンサイト「SPITZ mobile」（有料）にも掲載中。

文：天野史彬