【連載】CIVILIAN コヤマヒデカズの“深夜の読書感想文” 第十二回/アン・マキャフリー『だれも猫には気づかない』

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こんにちはこんばんわいつもありがとうございます。コヤマです。
CIVILIANというバンドで歌を歌ったりギターを弾いたり曲を作ったりしています。

これを書いている今は9月の末日近くです。ついこの間まで暑さで文字通り死にそうになっていたのに、もうすでに夜が寒くなってきましたね。久しぶりにこの寒さを享受しようと思い、大雨が降っている日に半袖で出かけたらリアルに寒くて少し後悔しました。でも、やっと半袖以外の服が着られる季節が来たなぁという感じで、クローゼットから服を引っ張り出しては着ています。

ほんの数年前までは服なんて本当に興味がなく、というか自分に一体どんな服が似合うのか全く見当がつかなかったので、自分の着ている服がダサいことだけはわかっていたけれど、かといって何をどうすればいいのかも分かりませんでした。そもそも容姿にコンプレックスを抱えていた僕には「自分のような者が多少着る服に気を使ったところでそれが何だというんだ」という気持ちもありました。ファッション雑誌を見るのすら苦痛だったな、今思い出した。雑誌に載っている人たちは皆容姿の整った人たちばかりで、自分に当てはめてみたところでなんの参考にもならないどころか「自分もこんな姿に生まれていたら」と羨むばかりで、見ても嫌な気分になるだけでした。容姿だけじゃなく、声も、性格も、自分のことは全部嫌いだった。自分こそがこの社会の最底辺なのだ、こんな自分が生きていること自体が周囲の迷惑なのだと思いながら、それでも生きていることを止めることもできずに、申し訳なさと恥ずかしさを抱えて毎日を過ごしていました。あの頃に聴いていた音楽を聴き直すと、その時の自分の感情が今でも蘇ってきて、僕の表現の出発点はここなのだと何度でも認識させられます。

曲を作っていると必然的に自分の内面にどんどん潜っていくので、精神が摩耗していきます。精神が摩耗していくと、そもそも自分は何故生きているのだろうとか考え出すので、沸騰した頭の温度を下げるために、酒を飲んだりゲームしたり走ったり友達に会ったりします。書いてて気づきましたが本当に僕は音楽という惑星の周りを周回する衛星のような人間ですね。今回僕の精神はかなり摩耗していたので、かつて皆さんから募集したおすすめの中から、脳の温度が下がりそうなものを選びました。それはつまり、平和的で優しく裏表が無く、最後まで考え過ぎることなく読めるもの。結果的に大正解でした。

それでは、十二冊目の本のお話をします。

(この感想文は内容のネタバレを多分に含みます。肝心な部分への具体的な言及は避けますが、ご了承の上読んで頂ければ幸いです)

  ◆  ◆  ◆

だれも猫には気づかない (創元推理文庫))
アン・マキャフリー (著), 赤尾秀子 (翻訳)
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【第十二回 アン・マキャフリー『だれも猫には気づかない』】

■「動物が何を考えているのか」は全人類共通の夢

第十二回はこの方。アメリカのSFファンタジー作家、アン・マキャフリー作の『だれも猫には気づかない』です。

以前にコルネーリア・フンケの『どろぼうの神さま』を紹介しましたが、この『だれも猫には気づかない』も、読んでいて同じ空気感を感じました。つまり童話的というか、文を読むのに慣れている子だったら小学生でも楽しんで読めそうな気がします。アン・マキャフリー自体僕は初めて読みましたが、ご本人が生前動物好きだったということで、タイトルにもありますが猫の描写がとにかく可愛らしい。アン・マキャフリーの作品の中では異色のものだということですが、他の作品も読んでみたくなりました。

動物を飼ったことがある・無いに関わらず、誰もが一度は「こいつは何を考えているんだろう」と動物に対して疑問に思ったことがあるのではと思います。僕も実家でずっと犬を飼っていましたが、時々どう考えても人語を理解しているとしか思えない行動を取ったりするので不思議です。バウリンガルってありましたよね、犬の言語を翻訳してくれるというやつ。試したことは一度もないんですがどうなんでしょうあれ。将来的には玩具としてではなく普通に人語⇄獣語の翻訳機なんかが出来る日が来るんでしょうか。でも、言語が通じてしまったらそれはもう違うもののような気がします。彼らは必ずしも我々が想像しているような可愛らしい性格ではないかも知れません。でも、もし猫というものが本当にこの『だれも猫には気づかない』のニフィのような存在だったとしたら、猫がいつもこんなことを考えているんだとしたら、きっとみんな猫が好きになると思います。

『だれも猫には気づかない』はページ数もそれほど多くなく、ストーリーも単純明快で分かりやすく、お茶を片手にさっと読んでしまえるような、気軽に楽しめる本です。

舞台は中世。とある国の若い領主にずっと付き従っていた老摂政が亡くなってしまいました。摂政はとても有能で、自分がいなくなった後も若い領主がしっかりと国を治めていけるよう、自分の死後のことを見据えて様々な策を事前に講じておきました。若い領主への様々な教育などもそうですが、このとても有能な摂政の一番とっておきの策は、生前この摂政にとても懐いていた、一匹の猫だったのです。

摂政の部屋にいつの間にか一匹の猫が住み着き、その猫が三匹の子供を産みました。そのうち二匹は黒猫でしたが、一匹だけ、煙のような薄闇色の子猫がいました。その子猫が摂政と常に共に過ごすようになり、摂政はその子猫に「ニフィ」と名付けます。このニフィこそが摂政の用意したとっておきの策、若い領主の最強の護衛でした。

摂政亡き後、若い領主とその腹心たちが国を治めるに当たって、重要な書類の可決、信頼できる人間の判断など、大事な場面になるとニフィはゴロゴロと喉を鳴らしたり、ミィ!と鳴いたり、爪を立てたりするのです。ニフィの言う通りに事を進めていくと、物事が良い方向に向かっていくのに気がついた領主。ニフィがまるで文字を読めるような仕草をするので、重要な手紙の文面をニフィに確認させたりと、次第にニフィを信頼できるパートナーとして扱うようになります。

侵略を繰り返し領土を広げていた隣国の王が、若い領主と自分の親族の娘を政略結婚させようと目論み、近づいてきます。若い領主はその娘のうちの一人と恋に落ちるのですが(これもニフィの人選によって素敵な女性が選ばれました)、真に恐ろしいのはその王ではなく、王妃の方だったのです。前妃が亡くなって新たに王妃となった女は、権力欲に取り憑かれ、狡猾で残酷な手段を用いて少しづつ自分の権力を増していきました。若き領主と、その最愛の人たち、そして国を守る為、実に猫らしい方法で様々な窮地を救うニフィ。果たして悪鬼のような隣国王妃の陰謀を打ち砕くことができるのでしょうか…というお話。

僕自身が動物好きなので余計にそう感じるのですが、ニフィがとにかく可愛い。この小説を一言で説明しなさい、と言われたら「猫が活躍するのを楽しむ小説です」と答えます。政略結婚や侵略や権力闘争や暗殺など、ストーリー自体は決して牧歌的ではありませんが、登場人物たちがそれほど深刻に悩んでいないのもあり、悲惨などんでん返しなども無く最後まで安心してニフィの活躍を楽しめます。僕のことろにも来ておくれニフィ。

古来から魔女の使い魔として黒猫やカラスの存在があるように、「動物と心を通わせる」というのは人間が昔から描いてきた夢の一つだと思います。動物たちは人間のように狡猾で陰湿な嘘もつきませんし(実家の飼い犬は、動物病院に行きたくなくて仮病を使ったりすることくらいはしばしばありましたが)、彼らが我々に望むことはいつだってとてもシンプルです。お腹が空いた、遊んで欲しい、等…我々人間のように回りくどく複雑で本心の見えない要求はしてきません。本当に面倒ですね、人間って。

人間に疲れた方、言葉を発することに疲れた方、僕のように脳の温度を下げたい方、ぜひ、ベッドやソファでリラックスしながら『だれも猫には気づかない』を読んでみてください。やっぱり人間ってクsいやいや猫って可愛いなぁと微笑ましい気持ちになれるはずです。ふっと肩の力を抜くことができるような、柔らかく優しい作品でした。

気になった方は是非チェックしてみてくださいね。それじゃあまた。

CIVILIAN 最新シングル「何度でも」

2018年8月8日(水)発売
・初回生産限定盤 CD+DVD SRCL-9846~47 / 1,800円(税込)
・通常盤  CD only SRCL‐9848 / 1,200円(税込)
収録曲:
1.何度でも (『スターオーシャン:アナムネシス –TWIN ECLIPSE-』テーマソング)
2.セントエルモ
3.ハッピーホロウと神様倶楽部
4.何度でも-short Ver.- ※M4は初回盤のみ

■「何度でも」配信
【iTunes】https://itunes.apple.com/jp/album/id1406700492?at=10lpgB&ct=4547366369908_al&app=itunes
【レコチョク】http://recochoku.com/s0/nandodemo/
【mora】http://mora.jp/package/43000001/4547366369892/
【Applemusic】https://itunes.apple.com/jp/album/%E4%BD%95%E5%BA%A6%E3%81%A7%E3%82%82-single/1406700492?l=ja&ls=1
【LINE MUSIC】https://music.line.me/launch?target=album&item=mb00000000016a1ee2&cc=JP

<CIVILIAN One Man Live 2018 “again & again”>

2018年10月11日(木)東京・渋谷WWW X
2018年10月23日(水)大阪・梅田Shangri-La

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