【インタビュー】グッド・シャーロット「このALの僕達は、若い野生馬に戻って走り回っている」
■ でもこんな時代だからこそ、バンドは面白いんだ
── 先ほど今作は、「ポップカルチャーに合わないかも」みたいな話もありました。日本ではまだパンクやロック、“バンド”というものが元気な状況にありますが、アメリカではシーンが縮小しているように感じています。実際、活動していての肌感覚はどういうものですか。
ベンジー:今は音楽が聴かれる形が変わって、デジタルが主になっているからね。音楽もほとんどがデジタル化されている。それもあって、今ストリーミングで聴かれているものの大部分は、ビート重視の曲になっている。そういうものの中身を分析して、音楽のDNAまで調べると、すべて同じ、一握りのプログラムで作られているんだよね。だから、リスナー、特に若い子にとってはそこが耳が慣れている周波数なんだよ。いまどきの子が最初に音楽に触れるのは、スマートフォンを通じてだから。そもそもアコースティック・サウンドではないからね。
ジョエル:うん、だから生楽器のアコースティックな音にはなじみがなくて、デジタル系の音の方が聴きやすいって思ってるだろうね。
ベンジー:そうそう。音のトーンとか、周波数のレベルとしてね。その影響はあると思う。カルチャーそのものがデジタルの方向に動いているっていう。だから今はオーガニックで、生楽器を使った音楽が育つような環境ではないんだ。だからバンドにとっては厳しい状況にはあるとは思うよ。成功しているバンドがない、とは言わないけどね。
ジョエル:でもこんな時代だからこそ、バンドは面白いんだけど。
ベンジー:それはある。もちろん、そんな中でも出てくるバンドはあるし、息を吹き返すチャンスだってあると思う。でも現状は厳しいね。カルチャーって移り変わっていくもので、僕たちも見てきたけど、2010年から11年くらいにかけては、「音楽ビジネスは死んだ」って散々言われていたけど、じゃあ今どうなったかっていうと、音楽ビジネスの利益は史上最高レベルに達しているわけで。ただ、ストリーミングとかが主流になって、ビジネスの中身が変わったっていうだけなんだよね。でも僕は自然の摂理を信じているし、自然には自己修正能力が備わってると思っている。だからいつかまたバランスが取れて、いい時期もやってくるはずだよ。
ジョエル:でも自然の世界でも、絶滅する動物はいるけどね。
ベンジー:確かに。
ジョエル:ただ、今いるビルの外に出かけて、いつもトラが何百匹もうろついていたら、そんなに珍しいとは思わないよね。でもそれが1匹だったら「おお!なんてきれいなんだ!」って息を呑むと思うんだ。それと同じで、今のポップカルチャーではロックバンドがすっかり少なくなってしまったけど、なかなか見かけないだけに、良さが評価されるところもあるんじゃないかな。5人の野郎どもがステージに立ち、楽器を手に取って、みんなをひとつにまとめる、ワクワクさせる音楽を生み出すっていう、その姿には心を動かされるものがあると思うよ。珍しくなればなるほど、見たときにワクワクするっていう。そういう気持ちや体験を、お客さんのために作り出せていることは名誉だし、幸せだと感じるね。僕たちの側も、お客さんからエネルギーを受け取っているしね。
── バンドである理由をちゃんと保って、だからこそできることがあると。
ジョエル:そうだね。
── 現在、アメリカとヨーロッパのツアーが発表されていますが、またツアーで日本に来てくれる予定はありますか?
ベンジー:うん、近々ね。今調整しているところだよ。
── 楽しみにしています。本日はありがとうございました。
ベンジー:あぁ、僕たちも楽しみだよ。(日本語で)ありがとうございます!
取材・文◎吉羽さおり
通訳◎染谷和美
◆ ◆ ◆
アルバム『ジェネレーション Rx』
WPCR-18077 ¥1,980 + tax
[Track List]
01. Generation Rx / ジェネレーション Rx
02. Self Help / セルフ・ヘルプ
03. Shadowboxer / シャドウボクサー
04. Actual Pain / アクチュアル・ペイン
05. Prayers / プレイヤーズ
06. Cold Song / コールド・ソング
07. Leech (feat. Sam Carter) / リーチ (Ft. サム・カーター)
08. Better Demons / ベター・デーモンズ
09. California (The Way I Say I Love You) / カリフォルニア(ザ・ウェイ・アイ・セイ・アイ・ラヴ・ユー)
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