【ロングレポート】未来に繋がる<FUJI ROCK '18>
さて、今年だけのスペシャルについて。世界で唯一の大人の移動遊園地「アンフェアグランド」がフジロックのモデルとなったイギリスの<グラストンベリー・フェスティバル>からやってきたのである。フジロックの湯沢・苗場開催20周年を記念し、グラストンベリーの会場である牧場の休耕年であるため実施された、まさにスペシャルな空間。インスタレーション、グラフィティー、サーカスパフォーマー、DJが展開され、ジプシー感やレイブ感溢れる非日常な空間にドキドキするが、何よりもこのご時世にここまでアナーキーな世界観を全面に出している光景に胸がスーッとする。妙にこのエリアに解放感を覚えてしまった…(苦笑)。毎年、その年にしかないスペシャルがあるからフジロックは欠かすことができない。かつてオレンジコートがあったこのエリアでは、誰でも参加できるドラムサークル「STONED CIRCLE」を筆頭に、ボルダリングやスラックラインの体験コーナーもあり、いろんなアミューズメントと出会いが待っている。
▲夜のアンフェアグランド
▲STONED CIRCLE
▲前夜祭の花火
個人的に声を大にして伝えたいアミューズメントが、入場ゲートの前に位置する無料エリア「パレス・オブ・ワンダー」で真夜中に最高のパフォーマンスを披露したマルチネス・ブラザーズ・ウィズ・ジョセリオのサーカスだ。綱渡りからはじまり、大車輪のコーナーでは会場に悲鳴と驚きと大きな拍手をもたらし、このチームの人気者である11歳の嵐 マルチネス小深田くんと、17歳のアラン マルチネス氏による「イカリオス」は、アランの足の上で嵐が宙返りをし続けるという彼らの得意技だ。何メートルも上昇する舞台で技を決めようとする際には、あまりにも嵐くんが愛らしいからか、「やめてー!」と思わず叫ぶオーディエンスもいたのだが、見事に技を決めて満面の笑みを振りまく嵐くんにヤバイくらい感動…。しかも、嵐&アランはステージのあとに握手や写真撮影にも応じ、子供が写真をリクエストすると、さっとステージから降りてきた。彼らのことが早速気になって調べてみたら、6男4女の大家族の暮らしぶりが最近はTVでもいくつか紹介されており、子供たちは公演のたび年に何回も学校を転校するという。汗と涙の結晶を私たちはフジロックで拝んだのだ。
▲綱渡りの模様
▲握手に応じる嵐くん
▲パレス・オブ・ワンダー
そして、子供用のアミューズメントとして、メリーゴーランド、フェイス・ペインティング、楽器づくり、布芝居、森の音楽会、焚き火 などを楽しむ事ができるのは、もはやおなじみとなったキッズランド。通りがかると常に賑わっていたように、近年のフジロックの傾向のひとつと言えば、子連れ参加の増加である。子供らもしっかりした雨具やスポーツウェアを着用するようになってきている。キッズランドでプレイパークと初めて対峙し、心と体が成長する子もいるのだろう。だがもちろん、そんなふうに果敢にチャレンジするも、マイペースにゆったり過ごすも、子供の意思次第。キッズランドでも根底にあるのは「自由」だ。
▲キッズランド
▲会場内に点在するアート、“ゴンちゃん”
それに反して、近年のとても残念な傾向がマナーの低下である。折りたたみイスの脚を折りたたまず移動する人の急増が顕著だ。イスの放置、ゴミのポイ捨て/分別、分煙について、かつての「世界一クリーンなフェス」を再びみんなの手で作り上げようと、“ルール・マナー”でも“規制”でもない、あたりまえのエチケットを“OSAHO”(お作法)とするキャンペーンが、主催者発信で初めて行われた。越後湯沢駅から会場までのシャトルバスでも流れていたオリジナル動画も制作され、KEENのブースでは、こういった問題に関する説明を聞いたらネックチューブをプレゼントするという、協賛メーカーによる建設的なブース展開も行われていた。
折りたたみイス問題に関しては、想像力のないマイノリティーの人数が今年は若干ながら減ったような気もするが、いずれにせよ、参加者の自主性を尊重してきたフジロックがこういったキャンペーンを打つというのは危機的状況だと感じている。継続的に向き合うべき課題だ。
また、KiUのブースでは、輪投げゲームをするとその参加費が全額フジロックの東日本大震災復興支援プロジェクト「Benefit for NIPPON」に寄付され、クリアすると豪華商品がプレゼントされるという試みがおこなわれていた。楽しみながら人の役に立てるというのは最高だと思ったし、実際に参加者でにぎわっていた。
◆ ◆ ◆
今年もこのロングレポートは長くなってしまった…。だが、本当はまだ書き足りない。いつも驚くフジロックの世界最高峰のサウンドシステム(◆※【チーム・フジロック座談会】世界に誇るフェスを支える鉄壁の仲間達)、初見の人々にとっては度肝を抜かれたはずのMISIAの歌唱力、木道亭が異世界と化したKENJI JAMMERの渋さ。なぜか今年初めて食べたところ天国の煮干しラーメンのおいしさ。テント宿泊者の中には夜中にペグを打ち直す人もいたほどの暴風雨に見舞われた2日目の夜中と比べたら、3日目の序盤は雨風が強いと言えども、さほど気にならなくて、一夜にして自分がタフになっていたこと。
さらになんと、同じくSMASHが主催するキャンプインフェスの元祖=<朝霧Jam>の第一弾出演者が、フジロックの場内で発表されたのだ。しかもラインナップが過去最高レベルの内容で、「絶対行くじゃん、これ」と参加をすぐ決めた人も目にした。YO LA TENGO、ボアダムス、CHAI、JOHN BUTLER TRIO+、SAKURA FUJIWARA、GOGO PENGUIN、clammbon、J.ROCC (DISCO/HOUSE SET)、KID FRESINO、ムジカ・ピッコリーノ、GA-PI、KNXWLEDGE、never young beach、mabanua、mouse on the keys、NAO KAWAMURA、YOUR SONG IS GOOD、SNAIL MAIL、TENNYSON and more! 個人的には、一目惚れしたばかりのSNAIL MAILが朝霧で観れるなんて嬉しい。ただでさえ楽しいフジロックの現場で吉報を受け取る喜びは計り知れないので、今後もこのやり方を是非。
◆ ◆ ◆
そして今年も、3日目の退場ゲートでは「SEE YOU IN 2019!! 7/26 fri. 27 sat. 28 sun」のプレゼントが待っていた。早くもみんなの胸がときめく瞬間だ。
総じて2018年のフジロックは、フェスとしての唯一無二のブランドを確固たるものにしたと言える。1997年夏の富士山麓での初開催から掲げる「自然と音楽の共生」というコンセプトを人々に根付かせた上で、今年は世界的な現行のビッグアーティストを見事ブッキングし、YouTubeでの生配信という試みも成功させた。だがもちろん、音楽との接し方にしても、参加者の意識にしても、今年のフジロックを実際に未来につなげていけるかどうかは、私たちの手にすべてが委ねられている。そういう意味でも、とても重要な2018年のフジロックだった。
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