ソウルフルで力強い声を持った本格派のシンガー=MAX、日本デビュー・アルバム『ヘルズ・キッチン・エンジェル(ジャパン・バージョン)』リリース
「ライツ・ダウン・ロウ」がウェディング・ソングとしてジワジワと広まり、現在ロングヒットを記録している男性シンガー=MAX。ソウルフルで力強い歌声を持ち、サマーソニック2018&来日公演も決定しているMAXの日本デビュー・アルバムがリリースされた。すでに配信でリリースされている1st作に加えて、4曲のボーナス・トラックを収録した日本盤独自仕様となった『ヘルズ・キッチン・エンジェル(ジャパン・バージョン)』の発売を機に、気鋭の若手シンガーの全容を紐解いていきたい。
MAXは1992年生まれで先月誕生日を迎え現在26歳。ニューヨーク出身のミュージシャン/俳優/ダンサー/モデルだ。弁護士の両親に育てられた彼は最初に、役者として頭角を現している。16歳でアリアナ・グランデとともにミュージカル「13」に抜擢され、「CRISIS〜完全犯罪のシナリオ」、ブライアン・ウィルソンの自伝映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディ」に出演するほか、イタリアのハイ・ブランドDolce & Gabbanaのモデルとしても活躍する。恵まれた才能を持った彼は、幼い頃から歌って踊ることが大好きで、徐々にシンガーとしての活動へシフトしていく。影響を受けたアーティストはジェームス・ブラウンやマイケル・ジャクソン、プリンス、ビリー・ジョエルなど。そのことからも俳優兼ミュージシャンにありがちな雰囲気系のアーティストでなく、本格派志向のシンガーであることが分かる。
MAXは俳優業と並行して曲を書いたり、楽器の練習をしたりしていた。さらにはYouTubeにカバー曲などをアップしていたところ、フォール・アウト・ボーイのピート・ウェンツの目にとまり、彼のレーベルと契約を結び、2015年に初のオリジナル曲「ジバリッシュfeat.フーディー・アレン」をリリースし、同年のYouTube Music Awardsを受賞。現在では2,270万回再生を記録する人気を獲得した。翌年にはデビュー・アルバム『ヘルズ・キッチン』を発売。本作に収録された「ライツ・ダウン・ロウ」が彼のミュージシャンとしてのキャリアを決定付けることになった。この曲はツアーで各地を飛び回る彼に週末を費やして会いに来てくれていた、付き合い立てのガールフレンドのために書いたものと、MAXはインタビューで語っている。
「この曲はナサニエル・モッテとリアム・オドネルという2人の友達と一緒に書いたんだ。妻のエミリーとは付き合い始めた頃だったけど、僕にとっては彼女が結婚相手になると確信していたから、その気持ちをインスピレーションにしたよ。彼女に喜んでもらえるような、僕らの愛を具現化した曲を書こうとした。恋人同士だった時に、この曲を添えて彼女にプロポーズしたよ。だからこの曲は僕らにとってもすごく特別なものだけど、それがまさかこんなにも世界中に広まるなんて思いもしていなかったね」
「ライツ・ダウン・ロウ」は世界中の人々にとっての“ウェディング・ソング”として徐々に人気を獲得していったが、この曲の個性豊かなミュージックビデオがその人気を後押しした。同曲にラップを乗せたバージョン違いの「ライツ・ダウン・ロウ feat.ナッシュ」のMVは、MAXと奥さんのエミリーが同じ空間のなかで、若き日から老いたときまで共に人生を歩むことを表現している。彼らが年老いたときの映像では、ふたりともに特殊メイクを施すことで、リアリティのあるストーリーを感じられる。このミュージックビデオ制作についてMAXはこう説明する。
「相手の女性は僕の奥さんに演じてもらったよ。ビデオのストーリーは実話に基づいていて、最初の方で……女性が入れ替わるのは、例えば僕が別の女性と付き合って喧嘩別れしたり、僕が何人か違う女性と過ごしているのは、自分に本当にふさわしい相手を探しあぐねる様子を描いたんだ。最終的にはエミリーと一緒になって……曲調はハッピーだけど、僕とビデオの監督もリアルな結末を求めていたから、幸せも終わりがあるからこそ美しいことを描き出したかった。それで彼女が病気になって亡くなり、僕も死んで、最後の場面では同じ部屋に別の若いカップルが引っ越してくるという結末になったんだ。人は誰しもいつかは死ぬけど、後に残したものは引き継がれて、新たな暮らしが営まれていくことを映像で表したんだ。ビデオ全体を通して、愛が持つ美しくて前向きなエネルギーを伝えたつもりだよ。そうやって生きていけば、後の世界にもその前向きなエネルギーは引き継がれるんだってね」
MAXが説明してくれた「ライツ・ダウン・ロウ feat.ナッシュ」のミュージックビデオに加えて、他にもウェディング・バージョンの映像作品もあり、こちらでは実際に、MAXの結婚式のプロポーズ・シーンなども収録している。そんな「ライツ・ダウン・ロウ」も収録したフル・アルバムは、先述のヒット・シングルのようなバラードだけでなく、エレクトロからベース・ミュージックなど、バラエティに富んだダンス・ポップ作品だ。多彩なサウンドを行き来しながらも、芯のあるMAXの歌声がひとつの世界観を生み出している。このアルバムにおいて彼はどんな個性を打ち出そうとしたのだろうか?
「音楽的にいろんなジャンルやヴァイブを巡る旅のような感覚を味わってほしいのと同時に、アルバム全体でひとつの世界を生み出したい思いもあったよ。どの曲もインスピレーションの源に誠実に向き合おうとしたし、僕は「ライツ・ダウン・ロウ」みたいなバラードであっても、「10 ヴィクトリアズ・シークレット・モデルズ」のようなテンポの早い曲でも、同じようにエネルギッシュに気持ちを込めて歌うことにこだわったよ」
多彩でありながらもひとつの世界観を生み出せるのは、MAXという人物のキャラクターを培ったニューヨークという土地柄も影響していると言える。アルバムのタイトルでもあり、彼が身体に刻んでいるタトゥーでもある“ヘルズ・キッチンズ・エンジェル”はニューヨークのエリアの地名だ。
「僕に一番インスピレーションを与えてくれた街の名前を付けたかったんだ。僕は地元に対する意識がすごく強いんだよ。ニューヨークで育つと街を歩くだけでも、いろんな音楽や多様な文化に触れることができる。地下鉄にストリート・パフォーマーが乗り込んできたりもするし、ブロードウェイをはじめ、いろんなショウを観る機会もある。僕もうんと子供の頃から美女と野獣とか、ライオンキングとか、そういうクラシカルなブロードウェイ・ミュージカルに連れて行ってもらっては、帰り道で再現していたみたいだよ」
そんな多彩な文化を受け入れる柔軟な感覚があるからこそ、「ライツ・ダウン・ロウ」のようなストレートなラブ・ソングが、世界中の人々に受け入れられたのだろう。実際にMAXはLGBTQのコミュニティからも支持されている。 「ニューヨークで暮らしていれば、多様なカルチャーや人種、宗教、セクシャリティに囲まれているのも当たり前で、それを受け入れ、また受け入れてもらって生きてきていることが分かる。その感覚をいく先々で拡散したいと思っているよ。人は誰しも本来の自分であるべきだし、ありのままの自分を愛するべきなんだ。突き詰めると、あの曲の主旨もそこにあると思う。愛のメッセージは、まずありのままの自分を愛するところから始まるわけだからね」
MAXはサマーソニック2018に加えて、単独公演が8月21日に渋谷CLUB QUATTRO、8月22日に梅田SHANGRI-LAで予定されている。日本に行くことが楽しみでならないというMAXは、来日についての抱負を語ってくれた。
「サマーソニックは世界でもベストなフェスティバルのひとつと聞いているから、すごく楽しみだね。それに日本のファンは世界で一番熱心に音楽を楽しむって、色々な人から聞いているので、そのエネルギーを体験するのが楽しみだよ。あと、ハラジュクにも興味がある。日本のファッションは個性的で大好きだよ。食べ物ももちろんね。日本のカルチャーはニューヨークのみならず、アメリカ全土で流行っているから、それを実際に現地で体験できると思うと、今からワクワクしてくるよ」
彼の近々のリリースを紹介すると、ノア・サイラスとのコラボ曲「チーム」、同じニューヨーク出身のラッパーのジョーイ・バッドアスをフィーチャーした「スティル・ニューヨーク」などがある。また今回の来日は、今後に予定される2ndアルバム『ハウス・オブ・ディヴァイン』の名前を冠したツアーということなので、サマソニと単独公演ではMAXのヒット曲と共に新曲をいち早く聴ける貴重なタイミングとなる。なお、この日本バージョンの『ヘルズ・キッチン・エンジェル』には「ライツ・ダウン・ロウ」のさまざまなリミックス・バージョンが収録されている。国内盤と合わせて、来日公演にもぜひ足を運び、今のニューヨークが生みだした、気鋭シンガーのポテンシャルを体感してほしい。
『ヘルズ・キッチン・エンジェル(ジャパン・バージョン)』
SICP-5800 ¥2,200+税10曲+ボーナス・トラック4曲収録/通常盤/歌詞対訳付き
http://www.sonymusic.co.jp/artist/max/discography/SICP-5800
■収録曲
1. ヘルズ・キッチン・エンジェル
2. ジバリッシュ feat. フーディ・アレン
3. ロング feat. リル・ウージー・ヴァート
4. ホラ
5. ライツ・ダウン・ロウ
6. 10 ヴィクトリアズ・シークレット・モデルズ
7. ホーム
8. マグ・ショット feat. シラー
9. ベースメント・パーティー
10. ロスト・マイ・ウェイ
11. ライツ・ダウン・ロウ feat. ナッシュ
12. ライツ・ダウン・ロウ(ノット・ユア・ドープ・リミックス)|
13. ライツ・ダウン・ロウ feat. ティニ(ラテン・アーバン・ミックス)
14. ライツ・ダウン・ロウ feat. ナッシュ(ノット・ユア・ドープ・リミックス)
◆MAX オフィシャルサイト(英語)