【ライブレポート】ザ・デッド・デイジーズ、止まらないロックンロール・スパイラル
2018年6月、ザ・デッド・デイジーズがアルバム『バーン・イット・ダウン』を引っ提げてジャパン・ツアーを行った。
ライヴに満足したファンが次の公演に友達を誘って、彼らがさらに友達を誘って...ザ・デッド・デイジーズは日本で最も美しいロックンロール・スパイラルで上昇してきた。初めての日本公演は<ラウド・パーク16>の午前中で、まだ観衆も集まりきっていなかったが、そのライヴ・パフォーマンスが話題となり、翌2017年のクラブ・ツアーが実現した。それが大盛況に終わったことにより、さらに大きな規模での日本公演が実現したわけである。
ブロンド長髪のギタリストがレスポールでパワー・コードをガーンとかき鳴らし、拳を突き上げる。ショーの一番最初、ハード・ロック・ギター・ヒーローのカッコ良さを見事に体現したダグ・アルドリッチのポーズだけで、2018年6月26日(火)、恵比寿リキッドルームの夜が最高のロックンロール・ナイトになることが保証された。
マルコ・メンドーサ(B)、ジョン・コラビ(Vo)、デヴィッド・ローウィー(G)が次々とステージに上がり、ドラム・キットには新加入のディーン・カストロノヴォが座る。ホワイトスネイク、モトリー・クルー、ディオ、シン・リジィなどで活動してきた百戦錬磨のミュージシャン達が集結したザ・デッド・デイジーズにおいて、元ジャーニーというディーンの経歴はまったく遜色がない。
「レザレクテッド」「ライズ・アップ」と新作からのナンバーでいきなり畳みかけるライヴは、彼らの経歴よりも、今を生きるバンドとしての凄味で攻めるものだった。観衆は彼らの過去の実績を心得ていながらも、現在進行形の彼らに首を振り、拳を上げて、声援を送る。「メイク・サム・ノイズ」や「メキシコ」は既にファン達のフェイヴァリットとなっており、イントロが飛び出すたびに大きな歓声が沸き起こった。
「パーティーに行きたいかい?」とジョン・コラビは観衆に問いかける。「ビーチに行って、冷えたサケを飲もうぜ」と言われて、さすがに炎天下で日本酒はキツイだろう...と思ったが、初夏に味わうザ・デッド・デイジーズのライヴも似たようなものだろうか。ロックンロールに酔わされて、誰もが熱に浮かされた表情を浮かべている。
ロックのツボを心得尽くしたバンドによる演奏は、快感中枢を刺激しっぱなしだ。ダグはゴールドトップ・レスポールの艶のあるトーンで魅了、「メイク・サム・ノイズ」「ラスト・タイム・アイ・ソウ・ザ・サン」などではESPのカスタム・モデルで必殺スライドを決める。マルコのベースはデイジーズ・サウンドに極厚なグルーヴをもたらし、ディーンのドラムスと鉄壁のリズム・セクションを形成している。デヴィッドはギブソンSGでAC/DC直系のソリッドなリフを刻み、それに乗ってジョンがハリのある歌声で我々のエモーションを揺さぶる。彼らが単なる有名人を揃えたスーパーグループの域を超え、呼吸の合った仲間であることがバンドの演奏に絶妙なノリをもたらした。
4枚のアルバムを発表し、オリジナル・ナンバーにも定評のある彼らだが、ロック・クラシックスの数々を披露することで、さらに観衆を煽り立てていく。クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルの「フォーチュネイト・サン」はもはやデイジーズのライヴに欠かせないハイライトのひとつだし、アコースティック・コーナーではディーンがロッド・スチュワートの「マギー・メイ」でヴォーカリストとしても卓越した才能を見せつけ、ビートルズの「レット・イット・ビー」は会場がひとつにする。
『バーン・イット・ダウン』にも収録されたザ・ローリング・ストーンズの「ビッチ」に続いて、バンド紹介が行われる。紹介されるとそのメンバーを中心にカヴァー曲を演奏、マルコはシン・リジィ「ヤツらは町へ」、デヴィッドはAC/DC「地獄のハイウェイ」、ダグはディープ・パープル「スモーク・オン・ザ・ウォーター」、ディーンはKISS「ロックンロール・オールナイト」、ジョンはブラック・サバス「ヘヴン・アンド・ヘル」というロック史に残る名曲が次々とプレイされ、1曲ごとに温度が上がっていった。
本編ラスト「ミッドナイト・モーゼス」はセンセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドのナンバーだが、すっかりデイジーズのライヴの定番となっている。キャッチーなコーラスもファンにはすっかりお馴染みで、ジョンがマイクを向けると「ヘイ!ヘイ!ヘイ!」と返す。
アンコールは新作からの「リーヴ・ミー・アローン」、そしてディープ・パープルの「ハイウェイ・スター」で大団円を迎える。2017年の来日公演でもアンコールの最後にプレイされたハード・ロック・クラシックに、観衆も残ったエネルギーのありったけをぶつける。オリジナルではギターとキーボードのソロがあったが、デイジーズのショーではどちらもダグが弾きまくり、さらにエキサイティングなバージョンになっていた。
3度目にして最大の盛り上がりを見せたデイジーズの来日公演。今回のショーを堪能したオーディエンスは次回、きっと友達を誘って会場を訪れるだろう。ロックンロール・スパイラルはどこまで上昇していくだろうか。
文:山崎智之
写真:Yuki Kuroyanagi
2018年3月21日発売
ザ・デッド・デイジーズ『バーン・イット・ダウン』
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.レザレクテッド
2.ライズ・アップ
3.バーン・イット・ダウン
4.ジャッジメント・デイ
5.ホワット・ゴーズ・アラウンド
6.ビッチ
7.セット・ミー・フリー
8.デッド・アンド・ゴーン
9.キャント・テイク・イット・ウィズ・ユー
10.リーヴ・ミー・アローン
11.レヴォリューション(ビートルズ カヴァー)※ボーナストラック
ジョン・コラビ(ヴォーカル)
ダグ・アルドリッチ(ギター)
デイヴィッド・ローウィー(ギター)
マルコ・メンドーサ(ベース)
ディーン・カストロノヴォ(ドラムス)
◆ザ・デッド・デイジーズ『バーン・イット・ダウン』レーベルサイト