【インタビュー】パワーウルフ「多彩でタイト、全編緊張感に溢れている」

ポスト

パワーウルフが通算7作目となるアルバム『ザ・サクラメント・オブ・シン』で還ってきた。ヘヴィかつ荘厳なメタル・サウンドと歌えるメロディで支持を得て、本国ドイツのナショナル・チャート上位の常連である彼らだが、本作ではさらに鋭さを増したパワー・メタルがたっぷりと収録されている。ここではオルガン奏者ファルク・マリア・シュレーゲルに話を聞いてみよう。

◆パワーウルフ映像&画像

──最新作『ザ・サクラメント・オブ・シン』はどのようなアルバムになりましたか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:ヘヴィ・メタル、特にパワー・メタルが好きな音楽ファンだったら、きっと気に入ってくれるアルバムだ。それと同時に、メタルのファンでない人にも聴いて欲しい。メタルとはこれほど幅が広くて楽しい音楽なのか…と、きっと驚くよ。速くてスーパー・ヘヴィで一緒に歌えてバラードまである。このアルバムはバンドのキャリアで最も多彩な作品だ。全曲ライヴでプレイできるアルバムだし、そうしてもいいと考えているよ。「ファイア・アンド・フォーギヴ」のコーラスで「Fire! Fire!」と、会場がひとつになって叫ぶのが目に浮かぶね。音楽性が多彩というと焦点が絞れていないユルい作品と思うかも知れないけど、すごくタイトなんだ。全編緊張感に溢れているよ。日本のメタル・ファンもきっと気に入るから、ぜひ聴いてもらいたいね。

──パワーウルフは英語・ドイツ語・ラテン語という3言語のヴォーカルをフィーチュアしていますが、それは音楽面にも影響を及ぼしているでしょうか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:俺たちは曲を先に書くようにしているんだ。それで曲に合った歌詞を書く。例えば「クロイツフォイア」はまず曲があって、ドイツ語の歌詞が必要だと感じたんだ。英語の「クロスファイア」にすると、既にスコーピオンズがやってしまったこともあるけどね(笑)。それと「シュトスゲベット/stossgebet」は英語での適切な表現がなかった。“神への最後の祈り”みたいな意味かな。それらの曲にはドイツ語の響きが最も効果的だと思ったんだ。ラテン語はキリスト教や聖書のイメージを表現するのにベストな言語だ。実際、多くの聖歌や賛美歌がラテン語で歌われているしね。

──その3言語以外の言語を取り入れる可能性はありますか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:アッティラ(ドーン/ヴォーカル)が歌えるなら、ぜひやりたいけどね。ドラマーのルール(ファン・ヘルデン)はオランダ出身だから、彼からオランダ御を習っても面白いかも知れない。フランス語やロシア語も難しいけど、魅力的な発音やイントネーションを持っているし、アッティラが日本語で歌ったら最高だと思う(笑)。ただ、これからもメインの言語は英語であり続けるだろうね。アイアン・メイデンを筆頭に、俺たちが影響を受けたバンドの多くは英語で歌ってきたし、英語だったら世界中のファンと一緒に歌うことができる。ドイツでもドイツ語オンリーで歌うバンドはいるけど、どうしてもファン層が狭まってしまう。ラムシュタインみたいなバンドは例外だよ。



──パワーウルフはドイツのナショナル・チャートで常に上位にランクインして、『陰翳礼賛/プリーチャーズ・オブ・ザ・ナイト』(2013)が1位、『ザ・メタル・マス・ライヴ』も4位となっていますが、何故ドイツの音楽リスナーにパワーウルフの音楽はこれほど受け入れられているのでしょうか。

ファルク・マリア・シュレーゲル:…わからない(笑)。何故彼らが俺たちを受け入れてくれるのか、俺にもわからないんだ。パワーウルフの音楽は決してコマーシャルではないと思う。音楽的に妥協のないヘヴィ・メタルだし、メイクもしているしね。それにドイツのラジオ局は俺たちの曲をまったくオンエアしない。ただ俺たちの場合、野外フェスティバルがラジオの代わりになっているのかも知れない。<ヴァッケン・オープン・エアー>のようなメタル・フェスだと、バンドの魅力を何万人もの観衆に伝えることができる。それがさらにインターネットで拡がっていったんだ。成功というのは事前に計算することができないけど、情熱を持ったファンに恵まれていることが大きい。彼らはアルバムを買ってくれてライヴに足を運んでくれる。俺たちは本当に幸運だよ。俺たちにとって“メタルは宗教”だし、広めていくのが義務だと考えている。もっと多くの人がメタルを聴くようになる手助けをしたいね。ただ、チャート狙いで妥協することはあり得ない。俺たちはいつでもパワーウルフらしさを貫くよ。

──パワーウルフのライヴではベース担当がいませんが、どのように補っているのですか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:スタジオではチャールズ(グレイウルフ/ギター)がベースを弾いているけど、ライヴではバックトラックを使っている。俺が低音パートを担当することもあるけど、サポートのベーシストを入れるつもりはないんだ。今のバンドは5人でひとつのチームだし、15年の歴史でドラマーのルール以外はメンバー交替がなかったからね。

──本国ドイツに加えて、エピカとのダブル・ヘッドライナー・ツアーではロンドン『シェパーズ・ブッシュ・エンパイア』やパリ『ル・ゼニート』、ブリュッセル『アンシャン・ベルジーク』などのホール規模の会場でもライヴを行ってきましたが、それらの地域でもパワーウルフは支持を得ていますか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:ドイツやフランス、ベルギーでは夏になると毎週末のようにメタル・フェスが行われているし、パワーウルフのステージは毎回盛り上がっている。イギリスは市場が異なるし、もう少し時間がかかるかも知れないけど、ショーは凄い熱気だった。エピカとのツアーはパワーウルフの歴史において大きな出来事だった。彼らとは友達になったし、共に前進していく同志だよ。彼らも俺たちと同様に“メタルは宗教”という信念を持っているし、また一緒にツアーしたいね。


──『ザ・サクラメント・オブ・シン』にともなうツアーはどのような予定ですか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:既に6月のフランス<ダウンロード・フェスティバル>からツアーは始まっているんだ。まだアルバムが発売になっていないけど、「デーモンズ・アー・ア・ガールズ・ベスト・フレンド」をプレイして、すごい反響があった。もちろん『ザ・サクラメント・オブ・シン』は自信作だけど、自分たちのやっていることが正しいと確信を持つことができたよ。夏いっぱいはフェスティバルに出演して、10月から本格的なヘッドライナー・ツアー<ヴォルフズナハト・ツアー>を始めるんだ。早くもチケットがソールドアウトになった公演もあるし、より大きな会場に変更している都市もある。2019年いっぱい世界中をツアーするつもりだ。ヨーロッパ、北米、南米…日本でもライヴを行うのが楽しみだよ。ツアー・エージェントにも日本のツアーをブッキングして欲しいと伝えているし、きっと実現すると信じている。日本のオオカミと会えるのを楽しみにしているよ。

──ニホンオオカミは残念ながら絶滅してしまいました。

ファルク・マリア・シュレーゲル:じゃあ、日本のメタル・ファン達に会いに行くよ。

──まだ日本のメタル・ファンはパワーウルフのライヴを体験したことがありません。ライヴ映像作品『ザ・メタル・マス・ライヴ』などで見ることは可能ですが、どのようなステージ・パフォーマンスを期待すれば良いでしょうか。

ファルク・マリア・シュレーゲル:ヘヴィでエキサイティングで、音楽的にもヴィジュアル的にもテンションが高いライヴだ。今回のステージ・セットは『ザ・サクラメント・オブ・シン』の世界観をヴィジュアル化した、教会を思わせる大量の光と炎を使用したものになる。「ホェア・ザ・ワイルド・ウルヴズ・ハヴ・ゴーン」ではピアノをステージ上に持ち込むし、アルバムの音楽性と同じぐらい多彩になるだろう。バンドはみんなステージ上を走り回るから、火炎噴射の場所を把握しておかないと、大ヤケドをすることになる。気をつけなくてはね。

──日本の音楽シーンのことは知っていますか?

ファルク・マリア・シュレーゲル:まだ日本についてはよく知らないんだ。でもハロウィンのメンバー達に「絶対日本に行くべきだ。素晴らしい国だよ」と教えてもらった。何度も日本に行ったことがある彼らがそう言うんだから、きっと最高の経験になると確信している。日本でプレイするのは、パワーウルフの目標のひとつだよ。

取材・文:山崎智之
写真:Matteo Vdiva Fabbiani


パワーウルフ『ザ・サクラメント・オブ・シン』

2018年7月20日 世界同時発売予定
【初回限定盤CD+ボーナスCD】¥3,000+税
【通常盤CD】 ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.ファイア&フォーギヴ
2.デーモンズ・アー・ア・ガールズ・ベスト・フレンド
3.キラーズ・ウィズ・ザ・クロス
4.インセンス・アンド・アイアン
5.ホエア・ザ・ワイルド・ウルヴズ・ハヴ・ゴーン
6.シュトスゲベット 
7.ナイトサイド・オブ・シベリア
8.ザ・サクラメント・オブ・シン
9.ヴェノム・オブ・ヴィーナス
10.ナイトタイム・レベル
11.フィスト・バイ・フィスト(サクラライズ・オア・ストライク)
ボーナスCD※初回限定盤付属
1.セイクリッド・アンド・ワイルド [エピカ]
2.ウィ・ドリンク・ユア・ブラッド [サルタティオ・モーティス]
3.キス・オブ・ザ・コブラ・キング [キャリバン]
4.レザレクション・バイ・イレクション [バトル・ビースト]
5.ナイト・オブ・ザ・ウェアウルヴズ [ヘヴン・シャル・バーン]
6.ジ・イーヴル・メイド・ミー・ドゥ・イット [カダヴァー]
7.レット・ゼア・ビー・ナイト [キッシン・ダイナマイト]
8.エイメン&アタック [ミレ・ペトロッツァ(クリエイター)& マーク・ゲルツ(キャリバン)]
9.アーミー・オブ・ザ・ナイト [アマランス]
10.Nata vimpi cvrmid(ホエン・ザ・セインツ・アー・ゴーイング・ワイルド)[エルヴェイティ]

【メンバー】
アッティラ・ドーン(ヴォーカル)
マシュー・グレイウルフ(ギター)
チャールズ・グレイウルフ(ギター)
ファルク・マリア・シュレーゲル(オルガン)
ルール・ファン・ヘルデン(ドラムス)

◆パワーウルフ・レーベルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報