M!LK・山﨑悠稀、ラストパフォーマンスで「M!LKは僕の宝物」
変幻自在をコンセプトとするM!LKの突然変異ユニットとして昨年2017年に誕生し、M!LKのライヴにたびたび登場してきた5人組ダンス&ボーカルユニット・BLACK M!LKが、初ワンマンライブを大阪と東京で開催した。
◆BLACK M!LK、M!LK ライブ画像
6月30日には東京・Zepp DiverCityにて最終公演を行ない、2000人のオーディエンスが詰めかけた場内を<RED SIGNAL BATTLE>というツアー名の通り燃え盛る炎のごとく熱く盛り上げた。また、この日をもってM!LKの山﨑悠稀がグループを卒業するということで、終演後にはM!LK5人でのラストパフォーマンスも急遽敢行。思い出のナンバーを詰め込んだステージの模様はLINE LIVEにて配信され、5人の新たな旅立ちを世界中のみ!るきーず(M!LKファンの呼称)にリアルタイムで届けた。
甘くキュートなムードのM!LKとは対照的に、クールかつワイルドな印象を全面に押し出したBLACK M!LKは、6月13日に6曲入りの1stアルバム『THE LOCK』をリリースしたばかり。MIZUKI&HAYATOのタフなボーカルに、HARUKI、JINTO、DAICHIの切れ味鋭い迫力満点のダンスで魅せるという構成も、5人で歌い踊るM!LKとはまったく異なるものである。
各日2公演が行われた今回のツアーだが、中でも最終日の2部は特にエモーショナルなライブとなった。客席から自然発生するクラップを浴び、コンセプトカラーである赤と黒に統一した衣装でフェンスの張られた舞台に登場するや、「東京、盛り上がってんのか!? BLACK M!LKワンマンライブ、泣いても笑っても今日が最後だ!」とMIZUKIが一喝。レーザー光線が飛び交うなか「Don’t look back」をハードなダンスとアグレッシヴなボーカルでドロップすると、メンバーの熱い気合いがヒシヒシと伝わってきて胸を打たれる。それもそのはず、この5人でファンの前に立つのは、これが最後のステージになるのだ。
「たった30分、たった1800秒、たった6曲にすべてを込めるぜ!」というMIZUKIの言葉から始まった「MUKATSUKI」では、彼の渾身のシャウトに続いて、HAYATOが「もっと!」とヘッドバンギングを煽動。曲に込められた怒りの感情を露わにし、ダンサー陣の動きもよりダイナミックなものとなる。スレンダーに躍動しながら小技を利かせるDAICHI、直線的なモーションでパワフルな男らしさをアピールするJINTO、サバンナの獣を思わせるしなやかな動きで魅せるHARUKIと、三者三様のアクションには目を奪われるばかり。普段の愛らしさの陰に、こんな高いスキルを隠し持っていたのかと驚くばかりだ。
ミラーボールが煌めく「HYBRID」では、ボーカル陣も負けじと二人だけで軽やかに歌い踊り、「声出せ、東京!」とHAYATOが客席にコール&レスポンスを招いたところで、3人がアクロバティックなダンスで合流。そして名前を呼ぶだけの短いメンバー紹介から、「この5人と会場の全員でアゲてアゲてアゲて、溜めて溜めて溜めて、一緒に行こうぜ!」(MIZUKI)と、DAICHIのバク転&投げキスから始まる見応え充分のソロダンスで高揚感を掻き立て、そのまま「Charge」へと繋げる息もつかせぬ展開に、オーディエンスのテンションも急上昇だ。それはメンバーも同様で、MIZUKI&HAYATOはエモーショナルに歌い上げながら、迸る感情のままにフェイクまで。安定した歌唱力に芝居心を活かした表現でBLACK M!LKの音楽を支えるHAYATOに、甘い声を張り上げてたまらない色気を醸すMIZUKIと、BLACK M!LKは彼らの知られざる魅力を間違いなく開花させている。
ここで水分補給した口元をセクシーに拭い、ジャケットを片肌脱いで翻す「More」へ。メンバー同士が妖しく絡み合うデンジャラスな振りつけで悲鳴を湧かせつつ、5人一体となった息の合ったフォーメーションダンスが、赤いレーザー光線と相まって艶やかな空気を振りまいてゆく。さらに「Bye Bye」では力強いリズムに加え、差し込む光が彼らの行く手を照らすようなドラマティックな演出に、思わず胸が詰まる一幕も。
アルバム収録6曲をすべて披露し終え、「次でホントに最後です。みんな後悔のないように、全力で楽しんでいきましょう!」と告げるや、ざわつく客席に、HAYATOは「HARUKI! 頑張れよ! ありがとう!」と、4人とは違う道を選んだHARUKIに激励の声をかける。そして再び贈られたアルバムリード曲「MUKATSUKI」では、涙を堪えながらも懸命にファンへの想いを届けようとするHARUKIと、そんな彼の肩を抱き、声をかけるメンバーの姿があった。「みんな、ラストだぞ!」と拳を煽るHAYATOに、客席のペンライトはHARUKI(悠稀)のイメージカラーである緑に染まって、彼の新たな旅立ちを祝福。曲が終わると5人は無言で立ち去り、アルバム収録の6曲を無駄なく凝縮した30分のステージを、忘れられない思い出として刻み込んでくれた。
そして終演から3時間後。同じステージでM!LK5人のラストパフォーマンスが幕を開けた。赤と黒に染められた先ほどまでと一転、昨年末にリリースされた1stアルバム『王様の牛乳』の白い王子様衣装に身を包み、ステージに立つ5人が振り返って始まったのは、3年前のCDデビュー曲「コーヒーが飲めません」。「盛り上がっていきましょう!」と佐野勇斗が号令をかけて、いつも同じように元気よく、M!LKらしさ満点の愛らしいポップチューンで若さを弾けさせてゆく。しかし、ソロパートで山﨑が聴かせた低音ボーカルは着実に大人びて、デビューから3年の成長と進化を確かに感じさせてくれた。
続く「miruku!」は学校生活での経験を元に、M!LK結成以前に悠稀自身が作詞した楽曲で、10代の思春期ならではの甘酸っぱさは、まさしくグループと同じ名を持つ代表曲にふさわしい。センターで山﨑も活き活きと躍動的に踊ってみせ、曲終わりには配信を見守っているみ!るきーずのために、30秒のスクショタイムも。ステージ上に集まったメンバーは“可愛い”担当の山﨑にちなんで全員でブリッコポーズを決め、塩﨑太智が「ウチの悠稀可愛いでしょ」と呟くと、なんとメンバーからサプライズで4枚の寄せ書きが山﨑にプレゼントされる。み!るきーずからのメッセージがビッシリと書き込まれた緑の布に、メンバーからのコメントも書き入れられた幕は、佐野の言う通り「みんなの想いが詰まってる」もので、吉田仁人も「俺らもコレ読んだらヤバい」と漏らしたほど。もちろん山﨑は「家に持って帰る」と大喜びで受け取った。
続く恒例の自己紹介も「悠稀、大好きだよ~!」という塩﨑の叫びから始まり、佐野も「みんなが大好きハ・ル・キ」と今日だけのアレンジを。山﨑悠稀という人間が、どれほどメンバーに愛されているかを教えてくれるが、笑顔にあふれた通常モードもここまで。み!るきーずへのメッセージを山﨑が贈ると、メンバーの涙腺が次々に決壊する。
「ホントに僕のすべてがM!LKで、M!LKは僕の宝物だったなって思います。それはこれからも変わらないし、僕が新しい夢に向かってM!LKじゃなくなっても、今まで僕がいた期間がM!LKの4人の支えになったらいいなと思うし。これからは僕がいなくなっても、み!るきーずの皆さんが4人のことを支えてあげてください。ホントにたくさんの愛をありがとうございました。同じ空の下で僕も頑張ってるって想いを込めて、次の曲を歌いたいと思います」──山﨑悠稀
そう語って贈られたのは、初期からファンに愛されながらも、未だ音源化していない幻のセツナソング「星空スコープ」。共に過ごした時間を糧に、それぞれ新しいページへと進んでいこうと歌うリリックは、今の5人に恐ろしいほどシンクロして、涙で歌えなくなる塩﨑の肩を、吉田と山﨑が抱き寄せるシーンも。板垣瑞生から繋ぐソロボーカルも、皆、涙に濡れて、それでも懸命に歌い上げる山﨑の歌声は、さすがメインボーカルとして長年M!LKを支えてきた力強さにあふれていた。“迷った時は この空をみつめよう”――そう5人で歌ったこの瞬間は永遠だ。
「次の曲で僕、山﨑悠稀が参加していた5人のM!LKは最後になります。み!るきーずとM!LKの絆はホントに凄いし……だから支え合って、これからもホールツアーとか武道館とか紅白の司会とかも絶対やってください。それは僕との約束です」
涙を振り切りながら宣言したラストソングは『王様の牛乳』のリード曲「約束」。ファンやメンバー同士の絆を投影した思い出深い楽曲は、たとえ一人きりでも新しいドアを開くんだと決意を歌うナンバーで、そんな山﨑悠稀の背中を押すべく、涙に暮れるメンバーも“同じ空の下一人じゃない”と、少しずつ歌声に力を取り戻してゆく。曲が終わると山﨑は4人に肩を押されて一人ステージの階段を下り、残った4人が眩いスポットライトに照らし出された。そこで顔を上げて前を見据える4人も、山﨑も、これからが新しいスタートなのだ。
今後新しいM!LKになっても、5人で過ごした日々は永遠に輝き続け、5人で交わした“約束”を支え続けてくれるだろう。その約束が叶う日まで、どれだけの時間がかかっても、きっと彼らは諦めはしないはずだ。
Text by 清水 素子
Photo by 笹森 健一
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