【ライブレポート】Bentham、一年の成長を見せたツアーファイナル「30代も変わらずにやります。よろしく!」

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Benthamによる全国ツアー<Bulbous Bow Tour 2018>の最終公演が、6月8日に渋谷クラブクアトロで開催された。当日のレポートをお届けする。

◆Bentham ライヴ画像

全国17か所を回った<Bulbous Bow Tour 2018>が、いよいよファイナルの地へと到着した。4月にリリースした5曲入りEP『Bulbous Bow』は、Benthamが新たな聴き手に向けて大きく扉を開け放った意欲作だったが、その楽曲たちがツアーを通じてどれだけ力強さを増したのか。おりしもメジャーデビューから1年が過ぎ、4人の表情はどんなふうに変わったのか。満杯のフロアを照らす灯がゆっくりと消え、19時5分、期待と興奮の幕が開く。

「ツアーファイナルへようこそ! 楽しんでいこうぜ!」



猛烈な疾走感と、強力なダンスビート。「TONIGHT」から「サテライト」へ、慣らし運転もなくバンドはいきなりトップギアだ。「透明シミュレーション」から『Bulbous Bow』のトップを飾る「Bandwagon」へ、スピードチューンを連ねて突っ走る。ギターの須田原生とベースの辻怜児は、守備を知らないFWのように最前線に走り出たまま戻らない。「Bandwagon」ではドラムの鈴木敬による強烈なマシンガンビートと、目もくらむストロボがシンクロする。ボーカル小関竜矢は扇の要に立ち、伸び伸びとハイトーンを響かせる。バンドがこのツアーでどれだけ自信を得たか、たった4曲で答えは出たようだ。

「今日しかできない音と、今日しかできない歌を届けます。俺らだけの秘密、いっぱい作って帰りましょう」

バルバスバウ(Bulbous Bow)とは、船が安定して進むために必要な船主の構造のことで、つまり“前に進む”という意図を込めたと須田が言う。明るい疾走感の内に切なさを潜ませたファストチューン「Reset」、そして「エスケープ」では、“ミラーボールが遂に回り始める”という歌詞に合わせてミラーボールが輝きだす、粋な演出もハマった。「KIDS」では小関がハンドマイクで激しく動き回り、3人がスリリングなソロ回しを聴かせる。そのまま会場全体を巻き込んだコール&レスポンス大会へ突入し、“和歌山の人!”(辻と同じ)、“狛江の人!”(鈴木と同じ)と参加者を限定しすぎた超ピンポイント指名で笑わせる。ツアーを経て鍛え上げた、盛り上げ上手の技はさすがの一言だ。

ドラム鈴木の作詞作曲による「SAYONARA」は、ツアー前半ではあまりやらなかったが“今日はどうしてもやりたかった”(鈴木)とのことで無事セトリ入り。ツアーの日々を振り返るMCタイムでは、小関が理想と現実とのギャップに悩んだことを素直に告白し、「これだけの人が来てくれて、本当に励まされます」と熱い言葉で締めくくる。続けて歌った「クラクション・ラヴ」は、これからも歌い続ける決意の歌だ。気持ちのこもった小関の歌を、力強く支えるメンバー。4人のコンビネーションには1ミリの嘘もない。

ここでライブはちょうど折り返し地点を回った。小関がギターを豪快にかき鳴らして“一緒に歌おう!”と煽る「僕から君へ」、須田がミニキーボードを持ち出して可愛らしいフレーズを奏でる「memento」、明るく広がるラテン調ダンスチューン「HEY!!」と景気のいい曲を続けたあと、突如演奏をストップして一体何が始まるかと思ったら、鈴木の“もぐもぐタイム”というツアーの恒例行事だそうで、この日選ばれた東京ならではのメニューはなんと“どぜう鍋”。演奏中のエネルギー補給という目的を逸脱し、そのまま飲み会へ突入しそうな展開をほんの一口にとどめ、何事もなかったかのように演奏に戻る鈴木がなぜかかっこよく見える。Bentham以外の誰にもできない、いや誰もやらない展開に拍手と歓声が降り注ぎ、フロアに笑顔の花が咲いた。



さあ気が付けばライブも後半だ。再び性急なビートに乗って「FATEMOTION」から「Chicago」へ。振り絞り、噛みつき、動き回る小関の“君の声がいつも響いているよ”というフレーズが頭の中でリフレインし続ける。メドレーのように曲は続き「激しい雨」へ、今度は“いつか笑える日が来る”という言葉が耳について離れない。Benthamの曲はキャッチーだ。ラストチューンは、インディーズ最初期からの代表曲「パブリック」だった。“どうやって君の事振り向かせたらイイの?”と、フロアを埋めた全員もれなく歌っている。Benthamの歌は自分の歌だと思っている人が、ここにこれだけいる。とても幸せな光景だ。

「みんなのおかげでツアーを回れたと思ってます。ありがとう」

アンコール。須田が一人でギターを抱えて現れ、飾らない言葉で感謝を告げる。みんなのマイナスの部分を、音楽で勇気づけられるようになったらうれしい。そうして歌いだした「雨と街」は、朴訥な歌いぶりだからこそ素直に胸に沁みた。途中から演奏に加わった辻と鈴木、二番を受け継いだ小関の歌も愛に満ちていた。


おおっと、そしてここでサプライズ。前日の6月7日に30歳の誕生日を迎えた小関のため、須田がキーボードで「ハッピーバースデー」を弾き、辻がケーキを持ち込み、あたたかい拍手に包み込まれた真ん中で小関の顔がくしゃくしゃになっている。「30代も変わらずにBenthamやります。付いてきてください。よろしく!」感動と興奮と感謝が入り混じった言葉に、未来への力強い決意がにじむ。

9月6日に東京・WWWで初の企画イベントやります、というお知らせにフロアが湧いた。ここから撮影OKだから撮ってどんどん拡散してくれ、という言葉で盛り上がりが二倍になった。マイナー調の性急なロックチューン「手の鳴る方へ」から、明るく開ける「クレイジーガール」へ、ライブはついにクライマックスだ。フロアはもみくちゃの大騒ぎで、辻、須田、小関の3トップが最前線に張り出し総攻撃を仕掛ける。じっくり聴かせるメッセージを何よりも大事にするBenthamだが、ライブの現場ではフィジカル勝負でも勝ってみせる。メジャーデビュー1年を経て、確かに成長した4人の姿がそこにはあった。

21時15分、ライブは終わった。ファンからの寄せ書きを添えたフラッグがメンバーに渡された。手を振りステージを去る4人の目に、渋谷クアトロの景色はどんなふうに見えていただろう? Benthamはどこまで行けるのか。答えを探す旅は、まだまだここからだ。

取材・文◎宮本英夫


■Bentham 自主企画ライブ

2018年9月6日(木)Shibuya WWW
開場 18:30 / 開演 19:00
前売 ¥3,000 +1DRINK代
*act:Bentham
※ゲストあり
チケット一般発売:7/28(土)

■Bentham ライブ出演情報

2018年6月22日 <Golden Melody Festival>台湾 台北市内
2018年6月23日 <アラスカナイズロックフェス>大阪 BIG CAT
2018年6月24日 <アラスカナイズロックフェス>名古屋 SPADE BOX
2018年6月30日 <アラスカナイズロックフェス>東京 LIQUID ROOM
2018年7月7日 大阪府 心斎橋アメリカ村周辺 19会場<見放題2018>
2018年7月10日 F.A.D YOKOHAMA - Amelie 「ビューティフルライフ」Release Tour 2018
2018年7月15日 <JOIN ALIVE 2018>いわみざわ公園
2018年7月20日 東京 渋谷club乙 - そこに鳴る<4th mini album「ゼロ」>release tour final 〜rewrite the zero〜>
2018年7月21日 <MURO FESTIVAL 2018>お台場野外特設会場
2018年7月27日 新宿red cloth "red cloth 15th ANNIVERSARY"
2018年8月9日 心斎橋BIGCAT<夏休みだョ!全員集合!>
2018年8月11日 国営ひたち海浜公園<ROCK IN JAPAN FES.2018>
2018年8月19日 <MONSTER baSH 2018>国営讃岐まんのう公園

◆Bentham オフィシャルサイト
◆リリース記念特設サイト「Bentham屋」
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