【インタビュー】ヴァースオーヴァー、ブラジルから怒りのヘヴィアルバム
ニュー・サード・アルバム『ヘルズ・インク』を引っ提げ、ヴァースオーヴァーが日本初上陸を果たす。ヴァースオーヴァーは、テクニカル・ギタリスト、グスタヴォ・カルモ率いるブラジリアン・ロック・バンドだ。
◆ヴァースオーヴァー映像&画像
1997年に、シンガーのロドリーゴ・カルモとギタリストのグスタヴォ・カルモという兄弟によって結成されたヴァースオーヴァーは、2000年に『Love、Hate & Everything In Between』を、2002年に『House Of Bones』をリリースしているが、当3rdアルバムは、16年振りとなるフルアルバムだ。死、不正、紛争、レイプをはじめとする現代問題をテーマとし、人々の悲鳴や未だ多く残る悲惨な事柄への抵抗と叫びが込められている。曲間で聞くことのできるポルトガル語による怒りの表現も聞きどころだ。
「『ヘルズ・インク』とは怒りです。我々が住んでいる現代の地獄に対していつも受け身でいることが最悪の薬であることを想起させるためのアルバムなのです。とにかく行動することが必要です。それを表現するにはヘヴィに、テクニカルに、そして信念とともに考え抜いた音楽を構築した結果、ここに怒りのアルバムが完成したのです」──ヴァースオーヴァー
──前作から16年という時間が経過していますが、その期間の活動について教えてください。
Gustavo Carmo(G):『House Of Bones』をリリースしてからはプロジェクトの活動を行っていたんだ。ロドリーゴとリアンドロも一緒にね。EPも発売したし、アメリカでプレイしていた。自身でも活動をしていてインストゥルメンタルのレコードやDVDも発売した。他にもBLACK SABBATHのトリビュート・バンドでも活動していたよ。もっとヴァースオーヴァーの活動に専念しないとね(笑)。
──ヴァースオーヴァーはカルモ兄弟が結成したバンドなんですよね?
Mauricio Magaldi(Dr):もう結成から20年だね。MTVや音楽雑誌から影響を受けて、ヘヴィでプログレッシヴでブラジリアン魂を忘れない音楽を目指した。RUSH、DREAM THEATER、IRON MAIDEN、MEGADETHに憧れていたよ。そして初めてのデモ「Endurance」を1997年に制作したんだ。
Gustavo Carmo(G):そのデモがDie Hard Recordsの目に留まり、デビュー作となる『Love Hate And Everything In Between』をリリースすることができた。それからナップスターが登場し、音楽業界全体が大きく変わっていったね。
──バンド名はどのようにして付けたのですか?
Gustavo Carmo(G):バンド名を考えていた時、RUSHの「Counterparts」のブックレットでVerse And Overという文字に惹かれたんだ。その意味を考えながらメンバーとも話し合いを重ねて、この名前で行くことに決めた。そのブックレットのデザインはヒュー・サイムによるものだ。何か縁を感じるよね。
──今回、アートワークはヒュー・サイムによるものなんですよね。
Gustavo Carmo(G):音楽と同様にアルバムには素晴しいカバーとブックレットが不可欠だと思う。ヒュー・サイムは、オレ達のバンド名の起源にもなったRUSHを手掛けたことで知られる才能ある人物だよ。細部にもこだわったCDだからその目で確かめて欲しい。あのRUSHを手掛けてきたヒューがオレ達のアルバムを担当してくれたなんて夢のようだよ。
Mauricio Magaldi(Dr):バンド結成20年という大きな節目だからこそ、彼にアートワークを依頼すべきだと思った。そしてその価値を今感じている。彼がその仕事を受けてくれるかはわからなかったけどね。
──『ヘルズ・インク』は、どのような作品になりましたか?
Gustavo Carmo(G):誇りに思える素晴しいアルバムになったよ。この20年間は山あり谷ありだったからね。このアルバムは今のバンドのあるべき姿を映し出しているんだ。
Leandro Moreira(B):影響を受けた音楽が反映されているし、何よりもオレ達自身が成長したと思う出来映えになった。
──ニュー・アルバムではどのような方向性を?
Rodrigo Carmo(Vo):ソングライトとレコーディングに3年以上も要したんだ。とにかく自身に忠実になるよう心掛けた。曲はアグレッシヴだし歌詞は正確性を重視した。思い描いたものを映し出した真実の作品といえると思う。世界の現実と不条理を歌っているんだけど、プロダクションにも拘っているからぜひ聴いて欲しいし、多くの人々に届いてほしいな。
──『ヘルズ・インク』というタイトルはどういう意味ですか?
Mauricio Magaldi(Dr):現在の世界はソーシャル・メディア、ウソのニュース、共感と理解性の欠如、無意味な惨い戦争、政治の分極化という状況に陥っている。それら”地獄”に対して自分達なりの考えや警告を発信したいと思ってこのタイトルになったんだ。
──アルバムの中からオススメの曲を挙げるとすれば?
Mauricio Magaldi(Dr):「Lady Death」かな。プログレッシヴな曲だ。
Gustavo Carmo(G):「Howl In Pain」は、バンドのことをよく表している曲だよ。ギター・ソロもいい出来栄え。でも「Blame The Victim」のギター・ソロには勝てないね(笑)。ビデオにもなった「Enemy」もいいよ。
──これからのバンドの予定は?
Gustavo Carmo(G):音楽業界は大きな変化を遂げてきたよね。コンピューターがあれば誰もが音楽を制作できるようになった反面、あまり感心できない音楽も数多く創られるようになった。だから制作する側も聴く側もいいものと悪いものとを聴き分けることのできるフィルター機能が必要だよね。それには経験や感性が必須になる。これは一夜にして手に入れることができるものではない。近年はマーケットが混乱してきたけど、ネットの発展によってそれまでは不可能だったマーケットにも音楽を簡単に届けることができるようになった。これは大きいよね。だからより大きく前進するのみだと思う。
Rodrigo Carmo(Vo):今は、日本でもこうしてアルバムがリリースされることになってうれしい限りだよ。活動を開始してから20年、やっと日本のみんなにアルバムを聴いてもらえるんだ。楽しんで欲しい。多くのエネルギーを注ぎ込んだアルバムなんだ。日本でライヴを実現させたいね。プロモーターとかラジオ局とか雑誌とかにどしどし連絡して欲しいよ、「こんないいバンドがいる」ってね(笑)。
ヴァースオーヴァー『ヘルズ・インク』
BKMY-1066
2,222円(税抜価格)
※日本盤仕様(帯、プロフィール、インタビュー付)、デジパック仕様
1.Howl In Pain
2.Social Wars
3.Enemy
4.Rain Bender
5.The Asylum
6.Human Condition
7.Edge
8.Blame The Victim
9.Lady Death
10.Waiting Room
11.Playing God
12.Bob And Jack
Produced by Gustavo Carmo
Line-up ;
■Gustavo Carmo(G)
■Rodrigo Carmo(Vo)
■Leandro Moreira(B)
■Mauricio Magaldi(Dr)