【ライブレポート】<均整を乱す抗うは四拍子>、“V系新世代 四天王”の証

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vistlipは、スタイリッシュなライブで楽しませてくれた。都会的なオープニングSEに続けてステージに立った彼らはヒップホップ・テイストを活かした「FIVE BARKIN ANIMALS」やラグジュアリーなサビ・パートを配した「EVE」、パワフル&キャッチーな「偽善MASTER」などを披露。ハードでいながら煌びやかさや透明感を湛えた個性的なテイストは本当に魅力的で、対バンイベントという場で瞬く間にvistlipの世界を構築したことに圧倒された。

「楽しんでいますか、東京? あっという間のファイナルで、今日で<四拍子>が終わってしまって淋しいという人、いますか? いっぱいいるね。今回の<四拍子>は2回目だったけど、みんなが願ってくれれば、もう一度<四拍子>を…という願いも叶うと思う。このイベントがどれだけ力のあるイベントなのかを伝えていきたいから、今日は最高に熱くなろうぜ!」という智(Vo)のMCを経て、ライブは後半へ。


メロディアスな「Timer」やヘヴィネスとポピュラリティーを融合させた「GLOSTER IMAGE」、ハイエナジーな歌中とダンサブルなサビ・パートの対比が光る「HEART ch.」などが演奏された。メンバー全員がフィジカルなステージングを展開しつつ、常にサウンドがタイトなのもさすがといえる。高度な演奏力も彼らの洗練感を生み出す大きな要因になっていることを、改めて感じさせた。

イベントなどでは激しくいきあげることを目指すバンドが多い中、良質な楽曲と演奏でオーディエンスを魅了し、ライブを通して大きな波を作っていくという自分達らしいアプローチを採ったvistlip。客席にノリを強要することなくオーディエンスを熱狂させたvistlipのポテンシャルの高さには、目を見張るものがある。場内は華やかさと一体感に溢れた良い空気感の盛り上がりを見せ、vistlipは揺らぐことのないスタンスを持ったバンドであり、それが彼らの強さや魅力だということを改めて感じさせるステージだった。


トリを務めたBugLugは「最後まで残ってくれたからには後悔させねぇぞ! 俺達に着いてこい!」という一聖(Vo)の言葉に続けて、パンキッシュな「絶交悦楽論」からライブをスタートさせた。オープニングからアクセル全開で「絶交悦楽論」を聴かせた後、ヘヴィ&キャッチーな「BUKIMI」で畳み掛ける流れは“炸裂”という言葉がふさわしい。アグレッシブなBugLugにオーディエンスも熱いリアクションを見せ、ライブは怒涛の熱い滑り出しとなった。

その後は、一聖が「BugLugです」と挨拶。続けて「<四拍子>は、毎日が本当に素晴らしい、良いなと思えるツアーだった。なにより、もう一度己龍とR指定、vistlipのメンバーと会えたのが嬉しかったし。そして、各会場に来てくれたみんなに、もう一回お礼を言いたいです。ありがとうございました。本当に、生きてて良かったと思える瞬間が多かっただけに、今日のライブも思い切り遊び倒したいと思っています」とも。


一聖の穏やかなMCが終わると同時にBugLugは再びハード・モードに入って、「KAIBUTSU」や「ギロチン」「ENMA」などをプレイ。メンバー全員が激しいパフォーマンスを展開しながらワイルドなサウンドを叩きつけてくるBugLugを見ていると、一聖が復帰してからの彼らは変わったなと思わずにいられない。現在の彼らは“1本1本のライブを大事にする”という域を超えて一瞬一瞬にかける気合がハンパじゃない。その結果、緊迫感や圧倒的な突進力を持ったステージになっていて、こういうライブはバンドの儚さや脆さを肌で感じた彼らだからこそ提示できるものといえるだろう。

形態としてのハードネスではなく、内面の衝動や熱さをぶつけるBugLugのステージは感情を駆り立てる力に満ちている。ライブを通してオーディエンスはハイボルテージなリアクションを見せ、さらに緻密に構築された照明とLED映像演出が独特なBugLugの世界観を創出、場内は膨大なエネルギーが渦を巻く空間へと化した。独自のライブのあり方を身につけたことを感じさせたこともあり、今後のBugLugの活躍も本当に楽しみだ。


BugLugのライブに続けてステージに出演バンドのメンバー全員が姿を現して、最後に一大セッションも行われた。ボーカルは黒崎眞弥(己龍)とマモ(R指定)、智(vistlip)、一聖(BugLug)、ギターは参輝(己龍)に一樹(BugLug)、楓(R指定)、優(BugLug)。ベースは瑠伊(vistlip)、ドラムは将海(BugLug)という布陣で、己龍の「アナザーサイド」とR指定の「波瀾万丈、椿唄」、vistlipの「SINDRA」、BugLugの「ギロチン」をメドレー形態で披露。20人のメンバー達が笑顔を浮かべてステージを行き来する賑やかな情景とアッパーなサウンドに客席は大歓声をあげ、新木場STUDIO COASTの場内は充実したツアーの締め括りにふさわしい華やかな盛り上がりを見せた。


最初に<均整を乱す抗うは四拍子>に参加する面々を聞いた時は、少し意外な印象を受けた。己龍、R指定、vistlip、BugLugに共通したイメージはなく、彼らの競演がどんな空気感になるのか想像できなかったからだ。だが、実際に体感した<均整を乱す抗うは四拍子>は違和感は全くなく、異なる個性を持ったバンドが並び立ったライブは本当に観応えがあった。異色ともいえる顔ぶれにも拘わらず散漫な雰囲気のイベントにならなかったのは、ポテンシャルの拮抗した4バンドが揃っていたからこそといえる。長丁場のライブでいながら見飽きることは全くなく、あっという間の4時間だった。

もう一つイベントを観ていて気づいたことだが、<四拍子>に集った4バンドは、いわゆるヴィジュアル系のセオリーに捉われずに独自のスタイルを築き上げたという点が共通している。翳りを帯びた和テイストやヘヴィネスを活かしつつアッパーなライブを展開する己龍。“病み”を爽快に昇華してみせるR指定。激しさと洗練感を両立させたvistlip。内面の熱さを露わにすることで生まれるハードネスをフィーチュアしているBugLug。オリジナリティーを持ったバンドだからこそ彼らは強い輝きを発しているし、リスナーからの支持も篤い。今回の<均整を乱す抗うは四拍子>のファイナルを飾った新木場STUDIO COASTは、立錐の余地がないほどの超満員だった。ヴィジュアル系シーンが停滞していると言われる中、彼らのあり方は大きなことを示唆しているといえる。非常に観応えのあるイベントだっただけに、再び彼らが一堂に会する機会があることを、強く願わずにいられない。

取材・文◎村上孝之
写真◎田辺佳子

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