【ライブレポート】Takuya IDE、独立後初ワンマン「今の僕を見続けてください」
2017年12月31日に龍雅-Ryoga-を脱退、2018年1月には25年所属した事務所を離れ独立したラッパー・Takuya IDEこと井出卓也。1月10日の発売と同時にソールドアウトとなった独立後初のワンマンライブが、3月3日渋谷SOUND MUSEUM VISIONにて行われた。
◆ライブ画像
今回のライブタイトルは<DAY 1>。映画の撮影の初日など、準備を続けてきて迎える行動の1日目という意味で、過去を否定するのではなく「今までがあったから“今”があり、独立後も常に“今”を生き続ける想いをぶつけた迫力のライブとなった。
幕開けは、今までの長い芸能生活や私生活の歩みを感じさせる記憶の断片のような映像。過去と今の覚悟をぶつけた新曲「DAY 1」を皮切りに、KREVAなどのツアーを回るDJ・MPCプレイヤー熊井吾郎と、元ヒステリック・ブルーで楽曲制作なども精力的に行うドラマー楠瀬拓哉の「縦」のビートに合わせ連続して畳み掛けるラップで会場を圧巻。3曲目「Dante」ではギターを弾きながら高速ラップをするという新しいスタイルを披露。「ついてこられる奴だけ、ついてこい」と言わんばかりの気迫で高度なラップスキルを展開させ、セールスポイントの一つである“クシャッとなる笑顔”を完全に封印。ハードコアなHIPHOPでライブは進んでいく。
「井出卓也と熊井吾郎でTakuya IDEです」と井出が言うように、熊井の生のMPCと井出のラップは絡むようにシンクロ。また、そこにプラスして、ゲストである楠瀬拓哉の卓越したドラムの技が会場の空気すべてを揺らし、観客の身体に「リズム」を叩き込んでくる。生のMPCと生のドラムのみと言うリズムだけのライブ音の構成。完全に「縦」の音、つまりメロディではなく、リズム&ビートに特化した形でも単調になることがないのは、井出が「HIPHOPは人生」「僕ができる表現は言葉」というように、井出本人が紡ぐ強い歌詞があるからだろう。井出卓也の「語彙力」と「言葉を聴かせる力」は、青山学院大学を卒業している見識の広さ、俳優という仕事を通じて培ってきた「言葉の大切さ」を知るがゆえなのではないだろうか。
中盤はゲストが続く。後ろからの強い照明の中シルエットで体を震わせ登場したのは世界的クランパーKTRこと後藤慶太郎。熊井と楠瀬が繰り出すビートに見事にクランプが重なり、そこに井出のマシンガンのような日本語が撃ち出され、ただただリズムの世界の迫力に会場は飲まれた。井出と後藤は2年半同じグループに所属していたというだけあり、息のあった2人のラップで会場はより一層ヒートアップ。
後半は、「今日も言えなかった。いや、言わなかったのかな。帰り道思うんだ、ああ言えば良かった」といった、誰しもが「ああ、わかる」と言いたくなるようなバラード調のラップ「Silent」、「今日くらい何もしなくていいよ。いつもやってるから」と一日家から一歩も出ずにダラダラする自分を許してくれるような新曲「ホームステイ」など、日本語ラップの幅と表現の広さを披露。ジャンルを問わない玉手箱のような音楽の世界に、井出卓也の紡ぐ言葉の面白さが重なる。そこからはチャームポイントの笑顔全開、軽快な流石のMCとポップなノリの良いラップで会場を盛り上げ、2時間15分に渡るライブを息を吐かせる暇もない構成とスピード感で完走した。
覚悟を決めたと井出本人が語るように、自分の持つすべてを表現し、新たなTakuya IDEを宣言したライブ。6月30日に歌手RiRiKAと渋谷duo Music Exchange、サカノウエヨースケと7月14日表参道Wall&Wallでのツーマンも発表され、これからの井出卓也と熊井吾郎によるTakuya IDEの日本語ラップの世界が新たな風を吹かせてくれる予感でライブは幕を閉じた。日本語ラップの面白さを丁寧に伝えてくれる井出が書く詞に、既存のファンだけではなく、幅広い年齢層や男性ファンも増えていくことだろう。
出演:Takuya IDE(井出卓也)、熊井吾郎
ゲスト:吉野晃一、後藤慶太郎、楠瀬拓哉
取材:寒川柊
写真:阿部稔哉
ライブスケジュール
7月14日 Takuya IDE TWO-MAN表参道Wall&Wall withサカノウエヨースケ
◆Takuya IDE 井出卓也 オフィシャルサイト