【インタビュー 前編】RayflowerのSakura, IKUO, 都が語るアルバムとツアーの関係性「未完成こそが完成形」

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■“何かをやり遂げる”という縦軸
■それが手品というのはどうなのかな(笑)──都

──都さん自身の今回のツアーの感触は?

都:ライヴの雰囲気は抜群にいいし、内容もどんどん良くなってきていますね。長いツアーに出ると中弛みしてバンド側のライヴの完成度が下がってしまうことがあったりするけど、そういうことが全くない。本当に確かな手応えを感じています。それに、嬉しいことに何ヶ所かソールドアウトしてるし、前回よりも全体的に動員数が上がっているんですよ。スケジュールの都合で平日にもライヴをしているんですけど、それでも大勢の人が来てくれることに感謝しています。

──先ほどIKUOさんからもそういう発言がありましたね。最近は平日のライヴを避けるバンドが多くなっていますが、良いライヴであれば平日でもお客さんは入りますよね。

都:そこは信じています。ライヴもそうですし、楽曲もそうですけど、良いものであればリスナーはちゃんと応えてくれる。今回のツアーはそれを証明している部分もあって、全国のライヴハウスシーンの活性化に少しでも役立てるといいなと思っています。

▲都(Key)

──もうひとつ、『Brilliant Anthology』を聴いて感じたことですが、勢いに任せられるタイプではないし、冷静に演奏するのも違う楽曲が多いですよね。つまり熱すぎず冷たすぎない温度感というか。なので、ライヴで表現するには高いスキルが必要な気がします。

IKUO:そういう曲はボーカルが命だという気がしているんですよ。だから僕は、その熱量に合わせるようなイメージで、田澤くんがいけばこっちもいくし、抑えれば自分も抑えるという演奏。田澤くんはピッチもリズムも良くて、安定しているので感情が露骨だから、その熱量に合わせやすいというのもあります。

Sakura:歌ものである以上、フォーカスが当たるのはメロディであり言葉であったりするから、当然だよね。バンドだから全員がそこにベクトルを向けているというだけのことで、バンドならそうあるべき。もちろんツアーに出てライヴを重ねることで、自然とそうさせている部分もあるだろうけどね。

──ただ、ドラムは全力で叩くほうがラクで、小さい音で鳴らすほうがよっぽど難しいという話をよく聞きます。

Sakura:ピアニシモは一番難しいよね。でも、ドラムという楽器も俺の中では歌だから、抑揚は自然とつくもので。スキルに関しては、もうドラム歴30年だからさ(笑)、自分が思う音量だったり、ニュアンスだったりは意識しなくても出すことができる。だから、抑揚づけという部分での難しさは感じないし、小さい音で叩くための練習をすることもないしね。ツアーの話から少し逸れるけど、“こういう楽曲で、こういうアプローチというのはどうですか?”ってIKUOさんがいつもプレイで示してくれるんだ。そこで挑戦させてもらって鍛えられているというのもあるね。

都:Rayflowerは、良しとするところがメンバー間で揃っているんです。YUKIくんも今回のアルバムでさらに変わりましたし。今までの音源はギターがダブル(LRチャンネルに同じ演奏内容のバックギターをそれぞれレコーディング)だったけど、今回は1本にしたんですよ。彼もやはり「歌を一番大事にしたいから」と言っていて。ギターソロも、より歌心のあるフレーズを弾くようになった。歌心ということでは、もちろんSakuraさんもIKUOさんもすごいものがありますし、そこはRayflowerの大きな強みです。

──同感です。プレイヤーとしての高いポテンシャルを持っていながら、音楽が好きなメンバーが揃っていますよね。

Sakura:それは間違いない。“ポテンシャルの高いエンジン”というと、F1みたいな最高速度をイメージする人が多いと思うんだけど。そうじゃなくて、車としての快適さや質の高さを実現させる手法もある。Rayflowerはそういう方向性のバンドなんだよ。

──その例えは絶妙です。結果的にRayflowerはあまり音楽の知識がない人も、音楽に詳しい人も楽しめるバンドになっていますよね。ツアー中のオフステージで印象に残った出来事なども話していただけますか。

都:12月中旬に“新潟→金沢→長野→高崎”というツアー行程があったんですけど、電車移動が難しいということで、全員で車移動したんですね。金沢から長野への移動日に、僕がどうしても食べたい豚汁屋さんがあったんですよ、道すがら……といっても少し遠回りになるんですが。で、辿り着くのに思ったよりも時間が掛かって遅めの昼食になってしまったり、僕の記憶の中ではめちゃめちゃ美味しかったけど、改めて食べてみたら“普通じゃん”みたいな反応だったりしたらどうしようと思い始めて(笑)。でも、お店に到着したら、その佇まいを見て、Sakuraさんが「おっ!」と言ってくれたんですよ、シメシメですよね(笑)。豚汁も記憶通り美味しくて、みんな「来て良かった」と言ってくれたので、ホッとしました(笑)。

IKUO:本当に美味しかったですよ。他にもいろいろ印象に残っていることはありますけど、一番の衝撃は、今回のツアーには“都さんのマジック”のコーナーがありまして(笑)。なぜ、そういうことになったのかという経緯説明はYUKIくんのインタビューに任せますけど、バンド内にマジシャンが1人生まれて、それが今後どうなっていくのか?という(笑)。

Sakura:都は「新木場STUDIO COASTファイナルへ、たくさんのお客さんに来てもらうためなら、俺は何でもやるぞ!」とツアー当初から言ってて。でも、手品というのはベクトルが違うんじゃないかと。集客するためのモチベーションが、“えっ!?そこなの?”っていう(一同爆笑)。

都:“たしかにそうやなぁ……”とツアー半ばで思うようになりました(笑)。ツアーって全行程を通して“何かをやり遂げる”という縦軸がひとつあると、ストーリーが生まれて良い結果を呼ぶじゃないですか。“その縦軸として手品というのはどうなのかな”と(笑)。

IKUO:いやいや、楽しいですよ(笑)。都さんがどんな手品をするのかは僕らも本番まで知らなくて、ファンと同じ目線で見ているんです(笑)。

Sakura:ファイナルまで邁進してもらいたいです(笑)。

IKUO:やり遂げていただきたいです(笑)。

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