【インタビュー 前編】RayflowerのSakura, IKUO, 都が語るアルバムとツアーの関係性「未完成こそが完成形」
約2年ぶりとなる2ndフルアルバム『Brilliant Anthology』を引っ提げて、Rayflowerが全21公演の全国ツアー<Rayflower TOUR 2017〜2018 “Brilliant Place”>を開催中だ。2018年2月まで足掛け4ヶ月間で開催される自身最大規模のツアーはアルバム『Brilliant Anthology』収録曲を中心に据えたもの。“Anthology”は“歌集”を意味する言葉であり、“Brilliant Anthology”には“5人の発する輝かしさ”という趣意がある。そして“Brilliant Place”とはそれらが目がくらむほど煌めく場所、つまりライヴ会場だ。
◆Rayflower 画像
「楽曲に完成形はなくて、常に未完成なものなんですよ」とはSakura(Dr)の言葉だ。アルバム収録曲がライヴの場で確実に成長を遂げて咲き誇る。そのひとつの集大成となるステージが2月16日の新木場STUDIO COASTツアーファイナルとなる。BARKSではこのステージを控えたRayflowerに、“アルバムとツアー”に焦点を当てて語ってもらった。その前編はSakura、IKUO(B)、都(Key)。5人の凄腕ミュージシャンだけが築き上げられる独自のバンドサウンド構築法から爆笑の全国行脚裏話、そしてライヴハウス論まで、Rayflowerの内部で起きている進化が明かされるロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■“アゲる”と“惹き込む”という
■2つの要素を兼ね備えている──IKUO
──ツアー<TOUR 2017〜2018 “Brilliant Place”>の話をする前に、2ndフルアルバム『Brilliant Anthology』がライヴの場で、どんな変化や進化を迎えているか、その印象などを話していただけますか。
都:『Brilliant Anthology』制作の際に、大きなテーマやコンセプトなどは特になかったんですよ。1stフルアルバム『Color&Play』リリースから2年経って、そろそろ新しいアルバムを出したいとか、ツアーもしたいとか、それくらいボンヤリとした感じでした。ただ、音楽業界ではよくある話ですけど、ツアーを組むなら、アルバム制作前にツアータイトルを決めないと間に合わないというスケジュール的な現実もあって(笑)。
──ははは。
都:でも、作品やツアーのタイトルって付けやすいところがあるんですよ、Rayflowerというバンド名なので。“華やかさ”だったり“煌びやかさ”といった言葉を連想しやすいじゃないですか。それに、前ツアーで感じたことを踏まえることもできたので、<TOUR 2017〜2018 “Brilliant Place”>というツアータイトルを思いついたんです。その言葉からインスピレーションが広がって作った曲もありましたけど、でも、それがアルバムのコンセプトになったわけでもなく。今の自分達の中から自然と出てくるものを1曲ずつ形にしていった感じ。結果、煌びやかさやアッパーさが軸になりつつ、影の部分も入って、バランスの良いアルバムになったなと思います。
▲IKUO(B) |
Sakura:アルバム自体の印象はないんですよ、俺は。というのは、Rayflowerでは通例だけど、ドラムは完成形が見えない状態でレコーディングしているから。最初にレコーディングする俺のところにはデモ音源しか届いていないのでね。だから、完成したアルバムを聴き返すという行為は、ツアーリハに入る時に楽曲を思い出すためで、じっくり聴くということはない。つまり、『Brilliant Anthology』の印象はどうですか?という質問に対しては、何も答えられないんです。
──なるほど(笑)。
Sakura:それだと答えとして大人げないからもう少し話すと、ツアーリハの時に、“他の楽器がどんなことをしているのか”、“どんな歌詞が乗っているのか”を初めて聴くわけで、俺の本当のドラムアプローチはそこから始まるんです。それに対してどんなドラムを叩くかを考えて、ツアーで育てていく。まだツアー中なので、“どんなアルバムだったか?”が言えるのは少し先になるなという、今はそういう感じです。ただ、IKUOさんが言ったように、ジメッとしていたこれまでの印象から、カラッとした感じに変化したなというのはあるね。曲によっては“日陰”なものもあるけど、お茶の間に合う日陰だと思う(笑)。
──翳りのテイストが変わったと?
Sakura:そうそう。それもツアーに出た今だから感じることで、ドラム録りの最中は実感がなかったんだよね。つまりRayflowerに関しては、自分は作り手でいながら受け手の感覚なんだ。バンドの場合、普通は一緒に作っていくじゃない?“こういうものになるよね”という共通認識をお互いが持ったうえでレコーディングするんだけど、Rayflowerはちょっと違う。でも、それが面白かったりするから不満はなくて。Rayflowerのローカルルールとして受け入れているんだよね。
都:メンバーはみんな忙しいし、時間的な制限もあって手探りの状態でアルバム制作を進行せざるを得ないんです。けど、そういうやり方で『Brilliant Anthology』みたいな素晴らしい作品を完成させてツアーを廻れる。これは若いバンドには不可能だと思うんですよ。僕自身も若い頃は、バンドで合宿に入って曲を作ったりしてきたから、みんなで一緒に作ってこそバンドだということも分かっています。でも、それに縛られる必要はない。Rayflowerは熟練したメンバーが揃っているからこそ、今のやり方で十分納得できる音楽が作れるんです。
Sakura:そうだね。ただ、曲が育つということに関して言えば、音源通りに演奏することを良しとしているバンドも、楽曲って、ライヴを重ねることで必ず育っていくんです。楽曲に完成形はなくて、常に未完成なものなんですよ。だって、演者には毎回最高のもの……昨日の最高をさらに超えようという意識があるから。逆を言えば、未完成こそが完成形なんだろうけどね。俺は、ライヴをやっているバンドの曲というのはそういうものだと捉えている。
──そういう意識で臨むことで、すべてのライヴが一期一会になりますよね。9月の『Brilliant Anthology』リリースを経て、10月11日から<TOUR 2017〜2018 “Brilliant Place”>が始まりました。今回の全国ツアーに際してテーマなどはありましたか?
都:それも特になかったんです。Rayflowerをやるうえで重視することはメンバーそれぞれにあると思うけど、僕が思う一番大事なものはライヴをすることで。このバンドでの初ライヴはイベントだったんですけど、その時は“一度やってみよう”くらいの気持ちだったんです。でも、そのステージがすごく楽しくて、「もうちょっとやってみない?」と。だから、ライヴをするためにずっと続いているという感覚なんです。ただ、プロフェッショナルというレールに乗るためにはライヴだけじゃなくて、リリースもキャンペーンも撮影もしないといけない(笑)……という風に、やるべきことがいろいろあるじゃないですか。僕は、そこをクリアすることで得られるご褒美みたいなものがライヴだと思っているんです。なので、今回のツアーもまずは自分達が楽しめて、充実感があって、ライヴに来てくれた皆さんに喜んでもらえるものにしたいなと思っていました。
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