【ライブレポ】ブライアン・セッツァー・オーケストラ、来日公演@東京ドームシティホール
結成25周年の節目として4年振りの来日公演となったブライアン・セッツァー・オーケストラが、東京ドームシティホールで来日公演を行った。
来日初日の会場となった東京ドームシティホール。オープニングSEはデューク・エリントン「Take the A Train」。ピアノ旋律の中、オーケストラの面々に続きステージに現れたブライアン。数多くのヴァージョンを輩出した1940年に生まれたスイングジャズ「PENNSYLVANIA 6-5000」でBSOの幕が開いた。
メインで使用するギターはオレンジの定番グレッチ6120 Nachbille(1959年製)。早いリズムの「HOODOO VOODOO DOLL」から矢継ぎ早に「THIS CAT'S ON A HOT TIN ROOF」へ。一瞬、アンプのつまみを調整し、「ハロー、トキオ!」のかけ声と共に、軽いウォームアップのごときソロギターから、定番の「STRAY CAT STRUT」へ。印象強いベースラインをより強調しながら、実に気負いのないプレイにため息が漏れる「RUNAWAY BOYS」。
オーディエンスを煽りながら始まった「GENE & EDDIE」では、以前から変わらず、リフのフレーズに様々なパターンを織り込む演出がたまらない。そのそつないクールなアイディアに凜としたプロフェッショナルさを感じ入る。
「SLEEPWALK」は、ジェフ・ベックのフレイヴァーにも通ずるフィンガリング、そしてトレモロの使い方が極まり美しい。
ギターを黒のグレッチに持ち変え、ジャケットを脱いだブライアン。黒のグレッチも#6120だが、2015年製の比較的新しい機種とのこと。「DIRTY BOOGIE」から「JUMP JIVE AN' WAIL」へ。「JUMP~」はルイ・プリによる1956年のジャズ・スイング・ソング。BSOの1998年のアルバム『The Dirty Boogie』で同曲をカヴァーし、翌1999年に第41回グラミー賞を受賞した楽曲の生の迫力は正に強烈。ギターソロ同様にホーンセクションのソロまで心待ちにしてしまう。続く「RUMBLE IN BRIGHTON」のパワーリフに突き動かされ、「SEXY,SEXY」で会場はよりホットに。
全編にわたり、アドレナリン大放出となる感情に観衆を惹き込んでゆく。
グレン・キャンベルが1968年に発表したシングル「WICHITA LINEMAN」のカヴァーには、個人的にふとカーペンターズのフレイヴァーを思い出した。そして続くのが、惜しくも昨年(2017年)亡くなってしまったトム・ペティによる名トラック「RUNNIN DOWN A DREAM」。そのロックスピリットをブライアンが継承した。
予告通りの4ピース・スタイルへとシフト。グリーンのグレッチHOT ROD(2010年製)に持ちかえ、全員ヒョウ柄シャツの出立ちに。ギターにおけるファズとリバーブの溶け具合がなんとも絶妙な、ジョニー・キャッシュからの「ROCKABILLY BOOGIE」には歓喜。 JIMMY LLOYD(James Lloyd Logsdon)による最も有名な曲「ROCKET IN MY POCKET」は、もはやBSOにおけるお馴染みのトラックだ。
ピアノの抜けた3ピース編成で奏でる「FISHNET STOCKINGS」でダックウォークを披露。モニタースピーカーに脚をかけたまま奏でる絶妙なコードソロが小気味いい。やがてオーケストラと合流し、クライマックスの「ROCK THIS TOWN」へと導かれた。公演中幾度か登場するドラム・ソロもホーンセクションのソロも全てがオーケストラの花形であり山場だ。
鳴り止まぬ拍手を経てのアンコールでは、グリーンのジャケットを身に纏い、グリーンのグレッチを抱えたブライアン。完全な組曲として構成される「NUTCRACKER SUITE」はビッグバンドの醍醐味。壮大なアレンジを“適切にこなす”べく、いつものように譜面台に置いてあった(演奏を終えた面から)譜面をひっくり返すブライアン。そこはステージパフォーマンスのひとつとして演出されるお茶目なシーンだ。管楽器からギターへグラデーションを引くような橋渡し的ソロがハイライトのひとつとなり背中に電気が走る。
やがてコーラスの女性2人も加わり、ラストに控えるジョー・ガーランドの名曲「IN THE MOOD」にて盤石のステージングを駆け抜けたBSOの初日は滞りなく終了。笑顔のブライアンとの再会が叶い、ホール全員が朗らかな瞬間を迎えた。
終わってみれば絶妙なるフィンガリングは今日も健在。立ちくらみがするほど旨味成分満載の音色で弾き倒すグレッチとバンドのアンサンブルは極まりけり。ジャンルの垣根なく多くのファンを魅了し、うるさ型ギターファンまで満遍なくノックアウトするブライアン・セッツァーの機微。このツアーは、さらにトップギアへと入っていくであろうことを安易に予感させた。
少人数のバンドと比べればその維持や継続は難しかろう中、常に前進し続けるそのミュージシャンシップに今年も脱帽だ。キング・オブ・ロケンローラーにして、6弦の宇宙を魅せ続ける凄腕ギタリストの大本命。ブライアンを聴かずしてロックンロールを語るなかれ。
2月31日の東京公演はスペシャルゲストとして布袋寅泰の出演も決定している。
米澤和幸(LotusRecords)
ライブ・イベント情報
【東京追加公演】
1/31(水) 東京ドームシティホール
チケット:S¥9,800 A¥8,800
一般発売:12/2(土)お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp
【大阪】
2/2(金) なんばHatch
チケット:¥9,800(1Fスタンディング・2F指定)※入場時ドリンク代別途
一般発売:9/30(土)
お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/osaka
【福岡】
2/5(月) 福岡国際会議場メインホール
チケット:¥9,800
一般発売:9/30(土)
お問い合わせ:TSUKUSU 092-771-9009
【広島】
2/7(水) 広島JMSアステールプラザ 大ホール
チケット:¥9,800
一般発売:10/21(土)
お問い合わせ:YUMEBANCHI 夢番地(広島)082-249-3571
【名古屋】
2/8(木) 名古屋国際会議場センチュリーホール
チケット:S¥9,800 A¥8,800
一般発売:後日発表
お問い合わせ:CBCテレビ事業部 052-241-8118
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