【インタビュー】CONCERTO MOON、強靭な音を叩き付ける最新作を語る
日本のヘヴィ・メタル・シーンが“冬の時代”にあった1990年代半ばに結成され、期待の新星として華々しく頭角を現したCONCERTO MOON。メジャー・デビューから20年を迎える2018年に向けて、彼らの活動は再び精力的になりつつあるが、その原動力とも言えるのが、オリジナル・メンバーの島紀史(g)を筆頭に、久世敦史(vo)、河塚篤史(ds)、中易繁治(b)からなる現在のラインナップである。昨今のライヴでも好調さは明らかで、ステージで強靭さを高めてきたバンド・サウンドは、その証明だ。
そんな折にリリースされたのが、通算12枚目となる最新アルバム『TEARS OF MESSIAH』。すでにここ数作を軽々と凌駕するセールスに結びついているようで、その理由としては、前評判が高かったことに加え、充実した内容が口コミで広まったと解釈すべきところだろう。制作に向けては、新たに契約したレーベル『Walkure Records』側とのミーティングが、まずは自身の強みを再確認するキッカケになったようだ。
「新たに一緒に仕事をするレーベルの担当者が、どういうものを求めているのかはまず聞きたかったんだ。それによって楽曲に変化があったかどうかはわからないけど、彼からは『CONCERTO MOONのハードでスピード感があり、メロディックな歌が載っている曲が好きだ』と言ってもらえてね。とはいえ、もちろん、過去の代表曲の焼き直しをするわけではないよ。自分たちの音楽に一本芯は通っている。そういった中で、その枝葉を広げたようなカラフルなアルバムにしたいと思ってね」(島)
その象徴と言えるのが、絶妙なギター・サウンドも印象的な「Lift My Life」だ。島は作曲時点ではグレン・ヒューズが在籍していた第4期DEEP PURPLEのようなイメージもあったようだが、「このリズム隊だからこそ」という河塚と中易それぞれのアプローチが個性を際立たせた。
「この曲は以前からデモだけはあったんですが、島さんが『このメンバーで演りたい』と仰ってくださって、日の目を見たんですね。16ビートのフィールが効いた、CONCERTO MOONでは珍しい雰囲気の曲ですし、それでいてバンドの軸足がブレない、現在の4人での振り幅の一端を見せられていると思います」(河塚)
島は本作におけるこの二人の貢献度の高さを指摘する。ギター、ベース、ドラムからなる基盤のアンサンブルは、まさしく彼らの強みを体現する大きな要素だ。中易は次のように話す。
「どの曲にも共通して言えることなんですが、今のメンバーからなるこのバンドに関しては、自分はドラムとベースの組み合わせを、いわゆる“リズム隊”という捉え方はしていないんですね。あくまでギターも含めたスリー・リズム・ユニットとして、いかに気持ちよく聴かせられるか、その楽曲が求めているであろうアプローチを具現化できるかを常に意識しているんです。僕は島紀史というギタリストのリズム・ギターが大好きなんですが、そのドライブ感をどう押し出し、切れ味を立たせるか、そして河塚さんのシャープでありながらスウィングするプレイを最大限引き立てるにはどうするか、最近主流のクオンタイズされたドラム・トラックからは得られないニュアンスをどのように活かすか。そういったところにポイントをおいて、すべての曲をプレイしました」(中易)
メンバー間の音楽的な信頼感が、この『TEARS OF MESSIAH』の根底にあることは容易に想像できるだろう。実際に久世は「今回のアルバムは前作『BETWEEN LIFE AND DEATH』(2015年)のときとは違って、ライヴやリハーサルなど、メンバーと同じ時間を多く過ごしたことが、音となって表れていると思いますね」と振り返りながら、自身の歌唱の在り方も冷静に客観視する。
「(今回のポイントは)自然体で歌入れしたことですね。力任せに勢いとノリだけで乗り切るのは自分的に嫌でしたし。ヴォーカルはメインだからとよく言われますが、曲の一つのパートとして自然に溶込みたかったんですよ。それが結果、いいものに仕上がったと思っています」(久世)
言わば、自ずから個々が一つのあるべき焦点へと集束していったわけだ。メロディックなパッセージにCONCERTO MOONらしさを感じさせつつ、今までありそうでなかった「Noah’s Ark」でミュージック・ビデオを撮影した辺りにも自信が見えてくる。
「曲を作っているとき、『とにかくこの曲が入っているので、今回のアルバムは大丈夫だろう』と思えるようなものを作れた瞬間の感覚っていうのがあるんだけど、「Noah’s Ark」もまさにそうだった。しかも、ギターを一切持たずに曲のすべてがイメージできたんだよね。スピード感もあって、バックビートの効いた感じの跳ねたリズムもあって。我々のことを知らない人にも気に入ってもらえるようなキャッチーさがあるんじゃないかな」(島)
歌詞の意味合い的には、今やライヴでの定番曲にもなった「Savior Never Cry」(2011年発表の『SAVIOR NEVER CRY』に収録)との連関も感じさせる「Tears Of Messiah」も、同じように初期の段階から手応えがあった。
「これは「Noah’s Ark」よりも前にできてたけど、サビの部分のメロディを思いついたときに、何か自然と『この曲は“Tears Of Messiah”って曲にしよう』と思ってたんだよね。疾走感もありつつ、ヘヴィな感じも表現できたと思うから、アルバム・タイトル曲に相応しいものにはなったなと。これが3曲目にあることで、すごくパンチの効いた構成にもなったと思うよ」(島)
「この曲は録音中から、リーダー・トラックになる予感があって、そのつもりで演奏もしたんですね。結果、タイトル・トラックとなったわけですから、やはりそれだけの内容、強さを持った曲だったんだなと。演奏もタイトで、よい仕上がりだと思います」(河塚)
島のルーツがよくわかる「Don't Wanna Cry No More」や、中易がこのバンドでは初めて作曲を手掛けた「Time Of Revenge」などを堂々とプレイしている姿も印象深い。どんなバンドでも相応の“化学反応”はあるはずだが、現在のCONCERTO MOONは、そこに対して自覚的に臨めている。本作のキーボードは、島とはJill’s Projectで活動を共にする名手・岡垣正志(元TERRA ROSA、APHRODITE)に全面的に客演を仰いだが、それも明確なヴィジョンを持ちながら、創造性を発揮できる環境があるゆえだ。
『TEARS OF MESSIAH』は、ライヴで培ってきた音の魅力をそのまま封じ込めたアルバムでもある。本作のリリースに伴う本格的な国内ツアーは、2018年3月末からスタートする予定だ。スケジュールは間もなく明らかにされるが、メンバー自身も各地のステージを心待ちにしている。
「(2017年11~12月のプロローグ・ツアーと比べて)ライヴ本数もグッと増え、全国各地へと馳せ参じる予定です。個人的には、ロック・コンサートの醍醐味のようなものも取り入れていきたいと細々画策中で、少しでもよい内容になるようメンバー一同、日々取り組んでおりますので、どうぞ楽しみにしておいてください」(河塚)
「ロードに出る重要性ってあるわけじゃないですか。現実的にはいろいろと大変なことはあるよ。でも、そこでよいものを一人でも多くの人に見せていくことが大切だし、何よりも、今、自分のバンドにそういうポテンシャルが備わっていることがわかっているのは大きいよね。実際に観てもらえば、感じ取ってもらえるんじゃないかな」(島)
取材・文●土屋京輔
リリース情報
2017年10月25日(水)発売
【CD+DVD デラックス・エディション】
規格番号:WLKR-028
販売価格:税抜3,500円+税
【通常盤】
規格番号:WLKR-029
販売価格:税抜3,000円+税
■収録曲目
1. LIGHT IN THE SHADOW
2. NOAH'S ARK
3. TEARS OF MESSIAH
4. LIFT MY LIFE
5. STAY DOWN THERE
6. DREAMS ARE ALL GONE
7. RUNNING OUT OF TIME
8. DON’T WANNA CRY NO MORE
9. STICK IT OUT
10. TIME OF REVENGE
■DVD収録予定内容 (デラックス・エディションのみ)
・島紀史による全曲解説
・「TEARS OF MESSIAH」メンバー座談会
・Making of「TEARS OF MESSIAH」
・Live Clip「LIGHT IN THE SHADOW」
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