【インタビュー】アキマツネオのT.Rexトリビュート、舞台裏あれこれ
12月2日に年内最後のRama Amoebaワンマンライブが吉祥寺ROCK JOINT GBで開催される。今年はアキマツネオが『T.Rex Tribute~Sitting Next To You~presented by Rama Amoeba』を監修、このトリビュート・アルバムと連動したロック対談本『CHILDREN OF THE REVOLUTION~ロックが僕達にもたらしたもの~』も発売されるなど、精力的に動いた1年だった。
ここでは恒例のイベント<グラム・ロック・イースター>を満員御礼で終えた翌日の9月17日、代官山蔦屋書店で行なわれた『Sitting Next To You』発売記念トークショーでの発言を紹介しよう。対談本をアキマと共同で監修した大久達朗を聞き手に、2つのプロジェクトの舞台裏について語られた。
──T.レックスのトリビュート・アルバム『Sitting Next To You』を作り終えて、いかがですか?
アキマ:トリビュート・アルバムは去年も出したんだけど…ほら、映画でも(シリーズの)1作目が素晴らしい時って、たいていシリーズ2はダメになるじゃない(笑)?だからそのプレッシャーは結構大きくて。でも去年とはまた違った今回ならではの“上積み”ができて、それは本当良かったよね。
──僕としては、T.レックスのこととか、どういう思いで音楽を作ってるかとかを、アキマさんに喋っていただきたかったんです。
アキマ:「T.レックスを通じて」だけってわけじゃないけど、とってもラフなカンジでみんなとも喋ったよね。こういう機会じゃなければ一生喋らなかったようなことでもあるし。昨日(9月16日)のライヴでもそうだったんだけど、ライヴの後の打ち上げなんかもみんな気軽に喋ってくれて、凄く楽しかったよ。日高くん(日高央/The Starbems)なんかとも改めていろいろ話して。
──日高さん、昨日のライヴでも「出演者の中で俺が最年少だ!」って言ってましたよね(笑)。
アキマ:たいして(年齢)変わらないんだけどね(笑)。
──日高さんはギリギリ40代ですから(註:日高氏は1968年生まれ)。最初はアコギ1本のシンプルな曲やりたいって言ってたんですよね?
アキマ:そう。彼がそういうのをやってくれたら、T.レックスの世界もまたもっともっと広がると思うんだけどね。昨日のライヴでも転換(セット・チェンジ)の時なんかに、もし彼がそこでアコギ1本とかでなんかやってくれたら良かったんだけどね。
──それ、日高さんに「やってくれ」とお願いしたんですか?
アキマ:いや、その場では言ってない。打ち上げではその話をした(笑)。前から考えてはいたんだけど、彼はグラム・ロック・イースターに出たのは昨日が初めてでしょう?だからちょっとイキナリそれやってもらうのは酷かなーと思って(笑)
──来年はあるかもしれないですね。
アキマ:今までのグラム・ロック・イースターでは、そういうのをやるのはPANTAの役目だったんだよね(笑)。
──T.レックスのトリビュート・アルバム『Sitting Next To You』って、いろいろと「ありえない」部分がありますよね(笑)。普通の音楽とくらべて「すっごく変な箇所」と言いますか。ちょっと専門的な部分もあるので、本の中では詳しく書いてないんですが。
アキマ:うん。変な場所から歌が始まるところね。
──「Midsummer Night's Scene」(註:ジョンズ・チルドレンの1967年録音曲)はなぜかイントロが3小節しかないですね。
アキマ:普通ならイントロは4小節あって、そこから歌が始まればスンナリと曲が始まるわけだけど。多分、オリジナルが録音されたとき、あそこのイントロは普通に4小節録音したと思うんだよね。だけど、最初の1小節をバッサリとカットしてしまったと思う。
──そのせいで、最初の音がイキナリ変な鳴り方してますよね。
アキマ:そう、変な音の始まり方。
──で、今回アキマさんはそれを同じ方法で同じく再現してみた。そういうコダワリも凄いなと思ってるんですが。
アキマ:元の曲のムードってあるでしょ?曲の形だけなぞっただけでは(ムードは)出ないからね。それではそのムードが伝わらない。俺があの曲を聴いていつも凄いなって思うところがあって、曲の真ん中くらいでコーラスが入るんだけど、あそこのコーラスは進むにつれてどんどんスピードもタイミングも狂っていく。
──はい、リズムと全然合ってないんですよね。
アキマ:それで、曲をそのまま聴いてると「うわーこれどんどんズレて行ってるな、なんだこれ?」って思った瞬間くらいでズバっと切り替わって、場面が転換するんだよね。
──その後通常のサビに入りますね。
アキマ:あそこってね、あの曲に対してもの凄くいい効果を生んでいる。グチャグチャと頭をかき回されたカンジで「うわーなんだコレ?」って混乱してきたその直後に、パッ!と変わるっていうね。
──あの曲を歌った加藤さん(加藤ひさし/THE COLLECTORS)もおっしゃってたんですけど、当時はおそらく偶然変なことになってしまったんでしょう。でもその「偶然生まれてしまった変なこと」を研究し尽くして曲のムードを再現しなければならない。
アキマ:今回のトリビュート・アルバムではね、(オリジナルに)忠実にコピーしたほうがいいっていう曲は忠実にコピーした。で、そうじゃない曲はそうじゃなく。結局その曲が生きる方法、それからその歌を歌うボーカリストの人が一番カッコ良く生きる方法を考えてやってみたんです。
──なるほど。
アキマ:これも「Midsummer Night's Scene」の話なんだけど、急に場面というかムードがパッと変わる瞬間もね、実はあそこもリズムが合ってない。実はほんの少しだけ正確なタイミングよりも詰まって(早く)サビが始まっているんです。曲のリズムを頭のなかでカウント取りながら聴いてもらえればわかると思うんだけど、そのリズムとは合わない変なタイミングでいきなりサビが始まるっていう。
──そんなところにも注目して聴いていただけたらな、と。
アキマ:対談本のなかでも、何カ所かそういう細かいポイントをいろいろ喋ってるところがあるよね。本を読んでからCDをもう一回聴いてもらえば、あ、なるほどねという箇所も結構あると思う。
──吉井さん(吉井和哉/THE YELLOW MONKEY)は、今回のアルバムでは2曲とも「デヴィッド・ボウイ役」を担っていますが、その役どころを理解しての参加だったんでしょうか。
アキマ:そうね。アルバムの最後に入れた「Sitting Next To You」は、オリジナルといっても音源は何もなくて、存在するのは曲の「破片」のようなものしかない。だから「この曲で、ボウイのパート歌ってよ」ってお願いした後に、彼から何回も何回も電話がかかってきてね「(歌の)2番はどこですか?」「いや、その中のどっかに入ってるから」「いやそんな箇所ないですよ~」みたいなやりとりを何度もした(笑)。彼はなんか凄い悩んじゃったみたいで(笑)、何度もやりとりしたけれど、それはそれで面白かったね(笑)。
──アルバムを作った今年の春から夏にかけて、アキマさんの思い出ってなんですか?
アキマ:思い出? いやーアルバムと本のことでもう頭ん中パンパンだった(笑)。
──僕の思い出をひとつ言ってもいいですか?
アキマ:なに?
──いつもアキマさんは、スタジオ入りしたらもうすぐ根を詰めて緊張しっぱなしで作業されますよね。でも夜の7時すぎ頃になると、休憩タイムが昼や夕方よりもちょっと増えるんですよ。
アキマ:うん(笑)。
──毎日そうなので観察してたら、アキマさんが休憩所でiPad広げてベイスターズの試合状況をマメにチェックしてたっていう。
アキマ:(笑)。
──「うわ~もうなんだよ~」…ってガックリ肩を落としながらスタジオに戻ってくる事がよくありまして(笑)、今年はベイスターズは調子が良くないんだな、と(笑)。
アキマ:もうね、負けてるとホントにガックリする(笑)。
──周囲の人は「ホラ、さあアキマさん!お願いしますよ!」という状況なのに。
アキマ:でも例年よりは今年は勝っているほうだから(笑)、俺の機嫌もいいほうだよ(註:2017年度の結果はセ・リーグ3位)。
──こんなカンジで、やる事も話も面白いので、アキマさんを本にしたいと思ったんです。
アキマ:最初はね、対談してて「こんなんで本になんかなるのかな?」って思ってたよ(笑)。でも読んでみたら面白かったね(笑)。
──この本はアキマさんが喋ってることを全部文字にしたもの。
アキマ:なんかさ、喋ってるときは「音楽の対談本」じゃないんじゃないか?って思ったけどね。でもいろんなアーティストとかアルバムをカッコよく入れてくれたから、「おお、なんかソレっぽい音楽の本みたいなカンジになってんじゃん」って思った(笑)。
Photos:Kumi Noro
『T. Rex Tribute ~Sitting Next To You~ presented by Rama Amoeba』
2017年9月13日発売
VICL-64822 ¥2,778+税
1.Get It On / ROY(THE BAWDIES)
2.Celebrate Summer / オカモトショウ(OKAMOTO'S)
3.Light Of Love / アキマツネオ feat. 廣瀬“HEESEY”洋一(THE YELLOW MONKEY)
4.20th Century Boy / 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
5.Metal Guru / シシド・カフカ
6.The Slider / 村越 “HARRY” 弘明
7.Dreamy Lady / 志磨遼平(ドレスコーズ) feat. 越川和磨(THE STARBEMS)
8.Midsummer Night's Scene / 加藤ひさし(The Collectors)
9.Life's A Gas / アキマツネオ & 橋本愛奈(Ciao Bella Cinquetti)
10.The Soul Of My Suit / 日高央(THE STARBEMS)
11.The Prettiest Star / 吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)
12.Sitting Next To You / アキマツネオ & 吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)
『CHILDREN OF THE REVOLUTION~ロックが僕達にもたらしたもの~<シンコー・ミュージック・ムック>』
2017年9月13日発売
¥ 1,620(本体 1,500+税)
著者:アキマツネオ/大久達朗(監修)
サイズ:A5判
ページ数:192ページ
ISBN:978-4-401-64519-0
多数の豪華アーティストが参加して制作されたT.REXトリビュート・アルバム『T.Rex Tribute ~Sitting Next To You~ presented by Rama Amoeba』をプロデュースしたアキマツネオ(元マルコシアス・バンプ/現 Rama Amoeba)と、このアルバムにゲスト参加したアーティストによる「ロック対談集」。日本の音楽シーンを牽引する彼らのルーツを解析するとともに、音楽への取り組み方、クラシック・ロックの新しい聴き方等も提示する、邦洋問わずロック・ファン必読のR&Rクロストーク集。
CROSSTALK with Tsuneo Akima
vs 吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)
vs 廣瀬“HEESEY”洋一(THE YELLOW MONKEY)
vs 加藤ひさし(THE COLLECTORS)
vs オカモトショウ(OKAMOTO’S)
vs ROY(THE BAWDIES)
vs 日高 央(THE STARBEMS)
vs シシド・カフカ
vs 菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
vs 越川和磨(THE STARBEMS)
SPECIAL INTERVIEW
アキマツネオ(Rama Amoeba)