【インタビュー】GALNERYUSが放つ、壮大な物語
2003年にメジャーデビューして以来、圧倒的な作品クオリティと高水準の演奏パフォーマンスにより注目を集め続けるGALNERYUSが、新作『ULTIMATE SACRIFICE』を完成させた。1年10ヶ月振りの通算11作目となるニューアルバム『ULTIMATE SACRIFICE』は、新ドラマーFUMIYAを迎え前作に続く第2弾として製作された壮大なコンセプトアルバムだ。尽きることのない創造心が結実した新作は、どのようなアルバムになったのか、メンバーに話を訊いた。
──レコーディングはいかがでしたか?
SYU:疲れました。締切がシビアだったので連チャンの作業工程になったりで、とにかく凄く集中力が必要で。良いメロディがひらめいても前の曲に似てるとボツにするので、新たな良いメロディを生み出す作業が一番大変でしたね。でもストーリーを作って曲を並べて行くことには、少し慣れたかな。文章を書く力もこなれた感はあると思います。
YUHKI:前作が凄く充実した作品だったので、作る前からそれを超えなければいけないプレッシャーがありましたね。
──前作を超えていると思いますよ。
SYU:おおっ、そう言って貰えると非常に報われます。成仏した(笑)。
小野:GALNERYUSのアルバムは全部大作だけど、前作と今作は物語がしっかりと詰まったコンセプトアルバムで、1曲1曲がその内容を表すものだから、僕としては作業しやすかった。レコーディングにおいての労力も僕が一番少ないし。
SYU:だいたい一発OKで。
YUHKI:楽勝でしたもんね(笑)。
小野:んなわけないじゃない(笑)。
SYU:FUMIYAは、新ドラマーとして加入して初めてのアルバムだったから、凄くプレッシャーだったと思う。元々GALNERYUSが好きで、ガルネリ愛に溢れた歌心あるドラムをプレイしてくれるし、これからもっと成長もしてくれると思う。
──前作制作の時点で、今作の構想もあったんですか?
SYU:ありました。次作もあることを念頭に「to be continued」的な終わりにしましたから。前作で出し切ってしまったので大変だったけど(笑)。
──アルバムでは、人間の喜怒哀楽が描かれていますね。
SYU:メタルバンドがコンセプトアルバムを作るにあたって、泣けるストーリーや描きやすい世界観は、やっぱり悲壮的な物語だと思って。主人公が死んでしまうとか仲間も亡くなる、とかね。今回では主人公が恋をしてしまうので、恋をしている感じの曲もあります。悲しみが主体だけど、色々な感情がね。
──ストーリーと曲調のマッチングには苦労しますか?
SYU:それが最大に怖れる部分でもあります。最初は細かいストーリーは決めず、1曲目は出陣の曲、2曲目は怒りの曲、3曲目は戦いに出る曲…と簡単な文章を連ねて、それに合わせた曲を書いていくんです。実際は思いのほか泣ける曲や切ない曲になってしまったりすると、逆に物語に泣ける部分や切ないストーリーを足すという共同同時作業みたいな感じですね。YUHKIさんが2曲作ってますが、作詞の小野さんとTAKAさんもストーリーを共有して、前後の曲との流れも踏まえつつ書くという。
YUHKI:結果的にはうまい具合に曲ができたよね。全体的に悲しい話だけど、5曲目「WITH SYMPATHY」は友情的な手を組む場面だから希望的なメジャーコードを使ったり。
SYU:前後の流れから「WITH SYMPATHY」は素晴らしいアクセントになったと思います。風景が浮かぶような壮大な曲で。
──多くのリスナーが曲単位で聴く時代に、コンセプトアルバム自体が挑戦ですね。
SYU:コンセプトアルバムって敷居高いというか「聴くの面倒だな、全部聴かないとわからないんでしょ?」って思われますよね。でも素晴らしいコンセプトアルバムって、どの曲も楽曲として成立していると思うんです。考え方は普通にアルバムを作る事と変わらないし、ひとつひとつの曲は成立しているしね。前のツアーでも「Raise My Sword」だけ演ったりとかもしてるし。
──では、それぞれ曲ごとにお話を。
SYU:「ENTER THE NEW AGE」は新たな時代の幕開け、新たな名作の誕生みたいな気持ちで書きました。ライブで入場するときを念頭に置いて、ここから次曲に向けてテンションを上げていく曲です。
──そして、続く「HEAVENLY PUNISHMENT」で絶望。
SYU:うん。息子が戦いに行くことになるんだけど、王座に着いた父親が亡くなり、そのタイミングで母親も殺される。絶望と怒りが小野さんのハイトーンに全て込められてます。
小野:いきなり絶望から始まりました(笑)。サビから始まるアルバムって、僕が入ってからは初めてじゃないかな。
──そして「WINGS OF JUSTICE」は、戦士の曲。
SYU:小野さんの突き抜けるハイトーンはとにかく武器なんで、2曲目から3曲目にメロスピが続く「ガルネリの戦法」ですね。ストーリーは、僕はこんな人になりたかったという気持ちで書いた自分が思うヒーロー像です。息子は実は父親よりも才能があったというもの。
──「THE SHADOW WITHIN」は悪者について、ですね。
SYU:ここは新総統の過去場面。大いなる敵で憎むべき存在なんですが、この人も奴隷制度でひどい目に遭い、家族がみな殺しにされているんです。新総統だけ息を吹き返し怒りや復讐心が決意を固める曲ですが、ただおどろおどろしいのではなく同情も感じる事もできる曲調かな。
──「WITH SYMPATHY」はYUHKIさんの曲ですね。
SYU:この曲では自治区の戦士なるキャラが登場するんですが、同じ国の民なのに自治区を形成してるって事は自国に対して反感を持ってるわけです。なので本来は主人公と手を取り合う事は難しい相手なんだけど、衝突を繰り返すうちに仲良くなって絆を深めていく。
YUHKI:上手く形にできて良かったけど、曲にするのは相当難しいんだよ(笑)。
──ストラトヴァリウスぽくもありキース・エマーソンもあり、まさに“WITH SYMPATHY”と思います。
YUHKI:ちょっとアイリッシュなメロディを使って、間奏もブリティッシュ風味なギターですね。
SYU:僕には書けないタイプの曲なんだよね。ケルト風なメロディが自然と身体に入ってて、うまくできた。
──そして「WHEREVER YOU ARE」は、唯一ロマンスの場面になる。
SYU:そうです、こんなのはなかなかなかった。小野さんの声がまたイイ。メロディもギターソロもベタ、往年のメロディックハードロックの要素もありつつ、日本人の古き良きワビサビもある曲にしたかった。小野さんに歌わせたら天下一品なのもわかってたからね。
──往年の「アイ・サレンダー」(レインボー)ぽい、こういうのもGALNERYUSならではだと思います。
SYU:まさに、今のガルネリに合っている。メタルの枠を崩さないメロハー(メロディックハードロック)って実は凄く難しいんですよ。
──続く「RISING INFURIATION」は衝撃の場面で。
SYU:多分、今回のアルバムの中で全員が一番苦労した曲だと思います。
YUHKI:一番苦労しました(笑)。
SYU:YUHKIさんが前作よりテンポ上げてくる…まずそこだよね、190 BPM超の16分音符が何小節続くのさって(笑)。あんまり大変そうには聴こえないけどね。
YUHKI:苦労が感じられないサラッとした仕上がりになってるんだよ(笑)。おどろおどろしい内容だけど、小野さんも上手く歌詞を乗せてくれたから。
SYU:歌詞も素晴らしくフィットしてると思う。
小野:ノリと韻をなるべく踏んで、イメージはしやすかった。
SYU:主人公が気付く部分も英語で上手く表現できている。
YUHKI:怒りもSYUのデスヴォイスとみんなのコーラスで表現したかったから、やりたい事は全部やれたかな。
──そして「BRUTAL SPIRAL OF EMOTIONS」からは、組曲になりますね。
SYU:チャプター分けをしてるので大作ぽいですけど、基本は2つの曲でできていて、チャプター1はファイナル・ファンタジーやドラゴン・クエストのバトルシーンのメタルバージョンとして聴いてもらえると楽しいかな。戦闘シーンの音楽をメタルでちゃんとやるとこうなるみたいな。バラードの小野さんの歌は泣いちゃうよね。
YUHKI:泣いちゃう。個人的に今作で一番好き。
SYU:小野さんはハイトーンだけでなく抑えた歌い方も絶品でね。高いところだけでなくローで色気を出す部分ももっとフィーチュアして行きたい。
小野:必然性があるからテンポが190 BPMになったり、歌メロも必然性があって高いところやオクターブ下があるわけだから、バンドのボーカリストとしてそれをしっかり歌えなきゃいけないよね。SYUくんとYUHKIさんはコンポーザーとしても凄く才能があるので、なかなか追いつけないところもあるけど。
SYU:いやいや、小野さんの実力は前から知っていたから、僕の作ったガチガチのデモからのプラスαはむしろ好きな事をやって下さいという感じでお願いしてますよ。
YUHKI:それは、メンバー全員に対してそうだよね。
SYU:プラスαの個性を出してくれるのが今のメンバーだよね。マジックが生まれるんだよ。
──そして最終曲「ULTIMATE SACRIFICE」はクライマックスの大作となりましたね。
SYU:全てが終了するところです。新総統との最後の戦いで“ULTIMATE SACRIFICE”という意味があったんだという。MVではカットしていますけど、イントロダクションを聴くだけでもう号泣、絶望します。
YUHKI:後半7曲目からの流れは、自分たちも気に入っていて山が高いよね、ドラマティックな展開が。
SYU:怒りも絶望も悲しみもまとった感情が交錯する曲で、昭和歌謡のワビサビ感とかメロスピの泣きも混ざってGALNERYUSらしい曲。自分たちの好きな事を最大限に詰め込んだ曲です。
──この曲をMVに選んだ理由は?
SYU:これと「HEAVENLY PUNISHMENT」と「WINGS OF JUSTICE」が候補だったんですけど、これが一番琴線に触れる曲だし、5秒でも良さがわかるのはこの曲。長い曲なのでフェードアウト方式でMVにしようとなりました。MVに出演していただいたキャストさんの場面には未使用シーンがあるので、それはツアーの東京公演で披露しようかと思います。
YUHKI、小野:知らなかった(笑)。
SYU:豊洲PIT公演ではムービー・システムを導入するし、その映像の最後の部分で見せた方がお客さんも納得するのかなと。
小野:続きはライブでという事ですね。
SYU:「Angel of Salvation」のように尺をつまんで短くする手もあったけど、オリジナルのフル尺バージョンを聴いたときに違和感が強いんです。いっそ曲の途中でここまで、とした方がその続きを聴けばいいだけなのでこうさせてもらいました。ドラマティックなメタル好きな方は最後の最後まで聴いて下さると思うんだけど、最後まで意味があるからね。
YUHKI:最後の一音まで意味があるので途中で止めないで聴いて貰えると嬉しいです。
──皆さんにとって“ULTIMATE SACRIFICE(究極の犠牲)”は何だと思いますか?
YUHKI:そりゃあ、このアルバムを作る為にめっちゃULTIMATE SACRIFICE(笑)。
SYU:俺たちの3ヶ月だ(笑)。作るとなると、それしかできなくなってしまうんで。究極の犠牲でいうと食事の時間かな(笑)。
YUHKI:トイレにも行かないよね(笑)。みんな100%で出せるものを出しているのでね。
SYU:この物語のイメージは中世の騎士が近いけど、日本人の美徳感にも通じるような見返りのいらない愛情もある。基本的に人間は見返りが欲しいものだと思うけど、でもそれ以上の愛情を持っていれば、ただ尽くすだけでいいというそんな気持ちになれるのかな?
──ツアーも控えていますが、どんな内容になりそうですか?
小野:去年の<JUST PRAY TO THE SKY>ツアーと同じく、一部二部構成になるんじゃないかな。あのツアーを上回って行けたらなと思います。
YUHKI:今回の豊洲PIT公演も映像を使った視覚的にも楽しめるショーになると思います。
SYU:何事も100%以上の妥協ない精神で臨むようにしています。前作を作ったときにその心意気でいたら、周りの方々が更に認めて下さるようになった。自分を信じて妥協なく常に100%以上の力で全ての事を行うのは意義があることだなと改めて思います。そしてFUMIYAの活躍も楽しみにして貰いたい。新生GALNERYUSにご期待下さい。
取材・文:Sweeet Rock / Aki
編集:BARKS編集部
GALNERYUS『ULTIMATE SACRIFICE』
WPCL-12714 ¥2,800+税
1.ENTER THE NEW AGE(Music: SYU / Lyrics: TAKA)
2.HEAVENLY PUNISHMENT(Music & Lyrics: SYU)
3.WINGS OF JUSTICE(Music & Lyrics: SYU)
4.THE SHADOW WITHIN(Music & Lyrics: SYU)
5.WITH SYMPATHY(Music: YUHKI / Lyrics: SHO, TAKA)
6.WHEREVER YOU ARE(Music & Lyrics: SYU)
7.RISING INFURIATION(Music: YUHKI / Lyrics: SHO, TAKA)
8.BRUTAL SPIRAL OF EMOTIONS
I.Blinded By Anger(Music: SYU)
II.Burning Within(Music & Lyrics: SYU)
III.Soul Carried By The Wind(Music & Lyrics: SYU)
9.ULTIMATE SACRIFICE
I.Wishing To Liberate(Music & Lyrics: SYU)
II.The Battle In Desperation(Music: SYU / Lyrics: TAKA)
III.The Reality In The End(Music & Lyrics: SYU)
IV.Phantasmagoria(Music & Lyrics: SYU)
V.The Living And The Dead(Music: SYU)
<JUST PRAY TO THE SKY Chapter II TOUR 2017>
10月29日(日)札幌 cube garden
11月11日(土)大阪UMEDA CLUB QUATTRO
11月17日(金)福岡DRUM Be-1
11月20日(月)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
11月21日(火)広島SECOND CRUTCH
11月23日(木祝)名古屋 ElectricLadyLand
11月25日(土)松本Sound Hall a.C
11月26日(日)新潟 studio NEXS
12月22日(金)東京TOYOSU PIT
◆GALNERYUSオフィシャルサイト
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