【インタビュー】STORM OF VOID、「ヘヴィな音楽をやりたい気持ちはどこかにずっとあった」
伝説的バンドbluebeardやNAHT、さらにはTURTLE ISLANDなどで活躍してきたGeorge Bodmanと、世界に誇るポストハードコア・バンドenvyのDairoku Sekiという2名から成るSTORM OF VOIDが、本日9月20日にデビューアルバム『War Inside You』をリリースした。ゲストボーカルとしてNapalm Deathのマーク・バーニー・グリーンウェイと、ワシントンDCのポスト・ハードコア・シーンでFugaziと並び語られるJaw BoxやBurning Airlinesとして活躍をしてきたJ・ロビンズが参加した分厚い1枚である。
◆STORM OF VOID 画像
そして、そのサウンドが実に凄まじい。はっきり言って極まっている。超ド級のヘヴィネスを放つ8弦ギターと、複雑なリズムを力強く叩き切るドラムにまずふっ飛ばされながら、プログレッシブでドラマチックな展開に魅せられ、郷愁にかられるメロディーに否応なくグッと来る── そんな殺傷力のカタマリのようなアルバムだ。彼らのこれまでの活動やバックグラウンドに裏打ちされた力作であることは確かだが、今作は、なぜ今、いかにして生まれたのか? ライター鈴木 喜之氏が、George Bodmanに訊いた。
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■ このバンドは機材ありきで始めたんです
▲アルバム『War Inside You(ウォー・インサイド・ユー)』 |
ジョージ・ボッドマン:以前ダイロク君がDoveというバンドにいた時、僕が当時やっていたbluebeardというバンドで対バンしたのがきっかけだったと思います。Doveには現在toeでベースを弾いているサトシ君も在籍してて、彼とは名古屋に住んでいた頃からの友人なのでそれもきっかけで話をするようになったような覚えがあります。暫くして、ダイロク君はenvyに加入するんですが、それ以前にenvyが名古屋へライヴしに来た時は、当時僕も地元でやっていたバンドで対バンさせてもらっていたりもしましたね。
── その後かなり長い時間を経て、彼とSTORM OF VOID結成に至った経緯は?
ジョージ:envyのマネージャーを担当しているのが僕の親友で、今の仕事の同僚なんですけど、その彼が忙しい時に「じゃあ代わりに手伝うよ」みたいな話になって。それで6年くらい前に、彼らがアメリカで30日間に28箇所くらい回るようなツアーをやった際に、ツアマネとして同行しました。そこでダイロクくんと「昔からLed Zeppelinが好き」とか話していて、彼が「ようやくJohn Bonhamと同じキットを手に入れた」というので、僕もちょうど以前から欲しかったSunnのアンプを色々と集めてて、1回いっしょにスタジオに入ってみたいねってことになったんです。ちなみに、Sunnが欲しくなったきっかけはMelvinsのBuzz Osborneが使っていたのと、昔からJimi HendrixとかTHE WHOとかThe Stoogesとかのアンプを見るとSunnなので、「これは欲しいなあ、きっとヘヴィな音がするんだろうなあ」って。まだバンドのSUNN O)))の方はそんなに知らなかったですね。
── そうして一緒にスタジオに入って音を出したら、これは、と思うものがあったと。
ジョージ:そうですね。このバンドは本当に機材ありきで始めたんです。僕は、Sunnのアンプと8弦ギター。ダイロク君は70年代のラディックのボンゾ・キットを手に入れて。お互い、それぞれのバンド(※TURTLE ISLAND/envy)にも持っていったんですけど、どちらも音がヘヴィすぎるっていう理由で使わせてもらえなかった(笑)。そのフラストレーションを晴らそうと2人でやってみて、8弦だからヘヴィな音になるし、ドラムもすごく大きいバスドラとかで自然と重たい音になるので、じゃあそういう感じでやろうとまず最初に考えたリフを持ってきたら、デビューEPの1曲目、このデビュー・アルバムの8曲目「Ice Lang」が、いきなりすんなり出来上がっちゃった。それで、これはいける!と。
そして、envyのアメリカ・ツアーで対バンを務めてくれたTOUCHE AMOREっていうバンドが日本に来る時、お返しでenvyも何本か日本公演をサポートしたいんだけどタイミングが合わなくて出られない、という話を聞いて、「じゃあ、このバンドまだ始めたばかりで3曲くらいしかできないけど、やらせてくれない?」と、前座をやらせてもらったのが初ライヴになりました。
▲George Bodman |
ジョージ:Napalm DeathのベーシストのShane Emburyとツアーを回っている時に話をしていて、彼は世界中でバンドを作るのがもはや趣味のような人で、メキシコに行ったらBRUJERIAがあり、イギリスではNapalm Deathの他に元The WildheartsのGingerと組んだり、ヨーロッパではLOCK UPとか、とにかくたくさんやってるんですよ(笑)。それで、来日する度に「日本でバンド組みたい、ブラストビート叩ける日本のドラマーとジャパニーズ・ハードコアのヴォーカル入れてグラインド・バンドやりたい」と毎回話してて。そこで彼が「STORM OF ◯◯ってバンド名にする」ってギャグっぽく言ってたのを、「ああカッコイイ響きだなあ」と。その後、Shaneの話は実現しないままなので、「あの時の、STORMになにか加えた名前、もらっていい?」って聞いたら、「全然やっちゃってよ」と言ってくれたんです。
そして、僕の中でVOIDっていう言葉はずっとキーワードで、なにかピッタリきたんですよね。何やっても結局は虚しいみたいなのが、どっか根底にあるというか。TURTLE ISLANDのヴォーカリスト(永山愛樹氏)もよく言うんですけど、バンドやってても音楽作ってても、刻々と人間って変わっていくじゃないですか。この前まで正義だと思っていたものが、だんだん年をとるにつれて崩れていったり、よかれと思ってやってることも実はくだらないことだとわかったり、「常」は無いというか。それが楽しいんだし、そこを表現し続けていきたいなと思うけれども、同時に過去やってきたことが虚しく思えたりもする。情熱的になってる反面、虚しくそれを見ている自分もいて、STORM OF VOIDには両方がいる感じです。
▲Dairoku Seki |
ジョージ:アルバムを作っているうちに「全責任は負うから、すべてを自分の手で作り上げたい」という気持ちが僕の中で高まってしまって。本当に申し訳なかったんですけど、ベーシストにはその気持ちを飲んでもらいました。完全に僕のエゴですね。だけど、せっかくレーベルがついて制作費も出て、やれることができる環境に持ってこれたので、だったら自分が100%納得のいくものを世に残したいという気持ちが勝ってしまったんです。
自分がこれまで、NAHTやTURTLE ISLANDや、その他のバンドでやってきた20年間の中で、僕がレコーディング・スタジオで自分だけのために割けた時間は、すべて足しても5時間もないんじゃないかと思うんですよ。レコーディングの一番最後に「じゃあジョージ、残り30分で5曲分のギターよろしく!」みたいな感じで(笑)。まぁちょっと極端な例えですけど、だからこのバンドでようやく、ゼロから自分で書いたものを、自分のギターのためだけに、思い通りに弾く時間がやっとできたんです。
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