【インタビュー】Rhythmic Toy World、パーソナルな領域に積極的に踏み込んだ意欲作『TALENT』

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■「ポエトロジーライド」がなかったらこのアルバムはなかった
■自分の足りなさを認めた瞬間に自分の強さになったんです


──そういう意味で言うと、「フラッシュバック」はアレンジも歌詞も個性が際立った曲だと思います。この曲が生まれた背景を教えてもらえますか。

内田:12月くらいに、朝から事務所に行ってデモ作りをしているときにイントロが浮かんだので、すぐにバーッと作っったんです。僕は突然テンポチェンジするのが好きなんですよ。おおらかな感じで始まっていきなりデッドヒートが始まる、みたいなイメージで。2番になってレゲエ調にしているのは、飽きがこないようにというのと、1曲の中にどれだけ色んな音楽要素を詰められるかっていうことが自分たちのポテンシャルの高さに繋がって行けばいいなっていうこともあって。もともと楽曲の幅広さがあるバンドだと思っているので、想像を裏切りたかったというのもあって、展開を色々やってみようと思って作りました。


──想像を裏切る、というのはまずメンバーの想像を裏切るところから始まっているんじゃないですか?

内田:そうですね。裏切り、失望され。

岸:いや、失望はしてないよ(笑)。これは曲が先に出来て、歌詞が送られてきたらすごい文字量だったんですよ。

磯村:デモのメロディに合わせてもどうやっても入らないんですよ。それで聴いたらメロを変えるって言っていて。RECするまで俺らは内容はわからなかったですね。出来上がりを聴いて「なるほどね」って、最終的にまた裏切られるっていう(笑)。

──「内田さんってこういう人なんだ」っていう歌詞ですよね。医者を目指してたんですか?

内田:そうなんですよ。Wikipediaみたいですよね。この曲を聴いてもらえば僕がわかるという曲です。

須藤:ウチペディアだよね(笑)。


▲岸明平

──歌詞の生々しさとか飾らなさがこのアルバムを象徴している気がします。

内田:そうですね。自分たちのストーリーみたいなことって、意外と人に伝えることがなくて。こういうインタビューとかでも言っている気もするんですけど、それって情報量も少ないし、目にする機会も限られているので、楽曲で自分の今までのストーリーを描くべきなんじゃないかなって。それで高校生のときにミュージシャンを目指そうと思ったときから今までを描きたくて。僕が高校生の頃ってHIPHOPがすごく流行っていて、自分もハマっていて。そのときの気持ちを思い出して、ラップをやってみたいなと思ったんです。この曲はぜひ、カラオケに入れてもらってみなさんに挑戦してほしいですね。

──この曲があって次に音楽愛を歌う「ミュージックマン」があるところにストーリーがあって良いなって思うのですが、やはりみなさんは色んなことがあっても音楽に救われてきたという思いがありますか。

内田:(須藤を差して)俺を止めてくれたもんね。そんな大げさな話じゃないけど(笑)。


▲須藤憲太郎

須藤:ロングロングタイムアゴーなんですけど(笑)、学生時代に女の子にトラウマになるくらいひどいフラれ方をしまして。「もう嫌だ、ダメだ」って死のうと思ってベースを抱えて飛び込もうとしたんですけど、ベースのローンがまだ36回あったので死ねないなと。その後、大好きなマキシマム ザ ホルモンさんが<湘南音祭>っていうフェスに出るので観に行って、アーティストが出すパワーに圧倒されて、いつの間にか最前まで行っていて「生きててよかった!」ってなって。こういう僕でも救ってくれるパワーをくれるっていうことに感激して、本気で向こう側の人になりたいなと思って、そこからみんなを誘ってバンドを始めたんですよ。だから音楽に救われたというのはまさに僕のことです。

岸:今の話は須藤版「フラッシュバック」だね。

内田:ボーナストラックで、トラックだけ一緒で内容だけ自分のものに変えるって面白いかもしれない(笑)。

須藤:スドペディア完成しました(笑)。

──では、お1人ずつ推し曲を教えてください。

磯村:僕は最後の「ユメイロ」です。もともとDVDの初回盤同梱シングルでアコースティック・バージョンで録った曲なんですけど、それが僕は好きだったんです。もう完成された曲だったんですけど、それをロックバラードみたいな感じでバンドアレンジしようってなったときに、正直、ドラムはいらないじゃんって思ったんですよ。これはこれでいいんじゃないかって。でも、それでメンバーに「ドラムはこういう感じで大丈夫かな?」って相談してできたアレンジなので、それがライヴでどう化けるのかな、お客さんにどう響いてどう届くのかが気になります。すごく思い入れがある曲ですね。

須藤:3曲目のウチペディア、スドペディア、いや「フラッシュバック」です。

内田:今のところスドペディアではないけどね(笑)。

須藤:歌詞の面白さもそうなんですけど、トラックの面白さもあって。1曲の中に色々な表情が見えてくるのがライヴで楽しそうだなって。それと僕的には“バンドを組んだが即解散”のレゲエ調の裏打ちのところがライヴでこういう(体をうねらせながら)“うねりを言わせる”感じが楽しみですね。

岸:「未来ワンダー」もライヴでどう化けるかが楽しみですね。ここまで同期を入れた曲はこれまでなかったですし、照明にも映えそうだなって。「未来ワンダー」は先行試聴会のときに曲に合わせてみんなでオタ芸を踊って、それがすごく楽しかったんですよ。ライヴでもお客さんがすごくノレると思し楽しんでもらえると思います。それと「ユメイロ」もすごく推したいです。直孝の弱いところを一番さらけ出している気がしてすごく好きな歌詞ですね。

内田:『TALENT』という言葉が想起されたのは、「ユメイロ」を作ったからというのが大きいかもしれません。僕が他に推したい曲は「ポエトロジーライド」です。最近、色んなところでお話する機会があってその中で感じたことなんですけど、この曲がなかったらこのアルバムはなかったなと思って。この曲が一番古い曲なんですけど、内容的には自分の足りなさとか空回りしている感じとかをちゃんと自分で認めた瞬間があって、それに気付いた瞬間に自分の強さになったっていうワンシーンの曲なんですよね。自分の中で思想がパンって転換した瞬間を描いた曲で、その転換があってからその後の曲たちが生まれているので、そういう考え方の転換がなければ他の曲がこういう歌詞にはならなかったという意味で言うと、「ポエトロジーライド」が根っこになっている気がします。だから僕的には流れで聴くのもよし、「ポエトロジーライド」を聴いてから他の曲を聴いてもよし、っていう感じですね。


──今日は渋谷のライヴハウス「Club Crawl」でのインタビューとなりましたが、此処はみなさんにとってどんな思い入れがあるライヴハウスなのでしょうか。

磯村:初めてワンマンをやったライヴハウスなんですよ。

内田:2013年4月17日がミニ・アルバム『軌道上に不備は無し』の発売日で、4月20日がここで初ワンマンだったんです。200人キャパくらいあるので、そんなに自分たちで集客したことがなかったし大丈夫かなって。それに自分は30分ライヴをやって声が枯れていることなんてざらにありましたし。結果ソールドになったんですけど。そういう意味で忘れられないですね。

磯村:今のライヴスタイルがそのワンマンから始まったんじゃないかなって。内田がフロアに降りて歌っていて。

内田:フロアにマイクスタンドを立てて歌ったんです。

磯村:そういうことをやっているバンドがいなかったし、お客さんも同じ目線で一緒に歌ってくれているっていう光景が、たぶんその後の制作にも活きていて。「みんなで歌える曲」っていうのをイメージし始めたのが、たぶん此処でのワンマンだったんじゃないかなって。だから自分たちのイベントをやるならClub Crawlになっていて。一番俺らのわがままを聴いてくれるというか、スタッフさんたちもすごく協力的にやってくれるので。

内田:あとは壊してもあんまり怒られないというか。

岸:それはダメだろう(笑)。

──リリースツアー<転生?なにそれ美味しいの?ツアー>がファイナルのTSUTAYA O-EASTまで行われます。このタイトルについて教えてください。

内田:「JIGOKU」に出てくる歌詞なんですけど、僕は自分の弱さを見つめて自分の強さに気付けるというのが自分の中のキーだったので、そこに気付くための苦しみを自分で経験する勇気を持たないと、その分の見返りはこないよって。だから僕は「転生なんて必要ない」と思っていて。今の自分のままでいかに強くなれるかっていうメッセージを込めています。TSUTAYA O-EASTでのワンマンは初めてなんですよ。イベントで出演したときにダイブしてすごく怒られたことはあるんですけど(笑)。だから、今回はワンマンで僕らが主役なので、誰にも怒られずにダイブしたいですね。僕を支えるつもりで観に来てください。

取材・文●岡本貴之


リリース情報

3rd Full Album『TALENT』
2017年9月6日リリース
STR-1045 全12曲 ¥2,500(tax out)
JAN:4571316560756
発売元:STROKE RECORDS
販売元:JAPAN MUSIC SYSTEM
01.未来ワンダー
02.JIGOKU
03.フラッシュバック
04.ミュージックマン
05.大丈夫
06.ポエトロジーライド
07.バベル
08.ドンシンフィー
09.メインアクト
10.涙の使い道
11.いつか(TALENT ver.)
12.ユメイロ(TALENT ver.)

ライブ・イベント情報

<転生?なにそれ美味しいの?ツアー>
9月21日(木) 千葉 LOOK ※ワンマン(OA有)
9月28日(木) 金沢 LIVE HOUSE vanvanV4
9月30日(土) 富山 Soul Power
10月3日(火) 神戸 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
10月4日(水) 岡山 CRAZYMAMA 2ndRoom
10月6日(金) 福岡 LIVE HOUSE Queblick ※ワンマン
10月15日(日) 四日市 Club Chaos
10月18日(水) 札幌 COLONY ※ワンマン(OA有)
10月27日(金) 静岡 Live House UMBER
10月31日(火) 高松 DIME
11月2日(木) 名古屋 CLUB QUATTRO ※ワンマン
11月4日(土) 大阪 Music Club JANUS ※ワンマン
11月17日(金) 前橋 DYVER ※ワンマン(OA有)
11月18日(土) 郡山 CLUB #9 ※ワンマン(OA有)
11月24日(金) HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
12月7日(木) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd ※ワンマン(OA有)
12月15日(金) 水戸 LIGHT HOUSE ※ワンマン(OA有)
2018年
1月26日(金) 東京 TSUTAYA O-EAST ※ツアーファイナル・ワンマン
<その他ライブ・イベント>
9月16日(土)『小田原イズム2017』
小田原アリーナ
9月17日(日)『ヒステリックパニック ツアー』
甲府KAZOO HALL
w)ヒステリックパニック and more
9月24日(日)『ヒステリックパニック ツアー』
岩手 the five morioka
w)ヒステリックパニック and more
10月14日(土)『KNOCK OUT MONKEY ツアー』
豊橋club KNOT
w)KNOCK OUT MONKEY
10月29日(日)『近畿大学工学部学園祭』
近畿大学工学部 広島キャンパス
11月11日(土)『八王子天狗祭 2017』
エスフォルタアリーナ八王子
12月1日(金)『忘れらんねえよ主催ツレ伝ツアー2017』
新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
w)忘れらんねえよ


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