【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第3回ゲスト:松岡充 [MICHAEL / SOPHIA]

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■ミュージシャンも俳優も同時進行する
■“松岡充というジャンル”で捉えてた──ASH DA HERO

──当時の松岡くんは、両極なものを同時に表現する以外に、詞を書くときに何を心がけていました?

松岡:今も変わりはないと思うけど、緻密な設計図を作るわけです。たとえば、同じ4文字の言葉が幾つかあるとして、このメロディとアンサンブルで聴いたときのタッチ感はどうか?とか、言葉選びの計算を。それでちょっと思い出したのが、この前、出演した『プレバト!!』ってバラエティ番組。お題が出て、俳句を詠む番組で、これまで2回出させてもらったんですけど、1回目は俳句ってものをナメてたんです。というのも、「俳句の夏井先生もプロだけと、申し訳ないけど、こっちも音楽のプロなんだ」と。200曲以上の歌詞を書いてきたんだ、と。俳句ね、はいはいって感じで軽く考えてたんですね。俺の片鱗だけでも入れておこうかな、ぐらいに俳句を書いたんですよ。審査する人がすごい方だったら、僕の俳句が窓をボンボン開けるように、延々とつながっていることに気づくだろうって。それでちょっと仕掛けた十七音を謳ったわけ。そうしたら、俺、結果は“凡人”だったの(苦笑)。句を説明する時間すら与えられなかった。よくよく考えたら、十七音の中で窓を開けたいと思わせられなかった俺の負けだと。これじゃ引き下がれないって、“もう1回、出してくれ”ってお願いして。2回目は1番で、“添削いらず”になったけど。

ASH:素晴らしい。

松岡:そのときに思ったのが、俳句といえども歌詞と全く同じなんだなと。歌詞を書くときって、最後の2音を諦めなかったら、もうひとつ色を表現できる、もうひとつ柔らかい感触を表現できるって。そうやって言葉を紡いでいるんです。俳句は十七音しかないけど、楽曲なら2番や3番まである。可能性の大きなフィールドを与えられる者としては、絶対に諦めちゃいけない。おざなりにしちゃいけない。このぐらいの響きの言葉でいいかとか、それは絶対にないようにしてますね。

ASH:だから読んでいておもしろい歌詞のロジックと、聴いていてバックコーラスでそこを表現しているんだ!?っていうトリッキーさもあるんですね。

松岡:そこをちゃんと捉えておもしろいと思ってくれていたんだ! 何度も言っちゃうけどそんなASHくんが今はこうやってアーティストになって。そのちょっとの要素に僕も入っていると思うと、作品を生んですごく良かったなと思うし。

ASH:あと松岡さんの楽曲は、多重コーラスのハモリが極端に少ないと思うんですよ。でも音の配置がすごくおもしろくて。今、ハイレゾで聴いたら、あそこにポロッと入ってる言葉がより浮き出てくるんだろうなとか思わされる。そういう遊びがたくさんあって。僕も曲を作るとき、誰も気づいてくれなくてもいいけど、ここにこれを入れたいんだってことがあるんですね。それは間違いなくSOPHIAや松岡さんのボーカリゼーションからの影響。間違いなく血が入ってるんですよ。

──SOPHIAの活動休止後、MICHAELをスタートさせましたが、楽曲や創作に対する姿勢に何らかの変化も?

松岡:MICHAELには縛られるものが何もないんです。曲の締め切りもないし(笑)。自分達で制作費出して、自分達で創るから。もうムチャクチャでしたよ。最初に作った音源は、ギターはずっと右チャンネルからだけ。左チャンネルはピアノの左手だけの音とか。ちゃんとステレオで聴かない限りは、おかしなことになるっていう(笑)。ボーカルもずっと右チャンネルからだけとか。

──作り方がアーティスティック過ぎる。

松岡:うん、そのおもしろさ。

ASH:おもしろいと思います。話を聞いて、僕も真似したいなって(笑)。いわゆるライブを想定して、その音の配置にしているってことですか? ギターが右チャンネルからってのはリアリティを追求しているってこと……です?

松岡:左チャンネルと右チャンネルに分けてしまえば、センター位置で聴くと、両方の中和性が楽しめる。でもちょっと自分が右に寄れば、右チャンネルの成分が強い変わった聴こえ方になる。さっきの話じゃないけど、要は真ん中を表現したいんだよね。ここからここまでの人間の幅を表現したいとしたときに、この人は良いものなのか悪いものなのか、若いのか年老いているのか、なかなか限定はできない。年老いても精神が若い人はいるし。それに、若い時代のことを歌いたいわけじゃない、ただ、青春は歌いたい。となると両極を表現して、あとは聴く人がどういう時代のどんなテンション感で、どういう機材や場所で聴くかによって、千差万別でいいんじゃないかって。MICHAELを始めて、そう思うようになったところはあるかな。

ASH:それを音で表現したっていう。

松岡:そう、具体的にね。ヴィジュアルでもそう。ヴィジュアルもバッチリと分けることもあるし。松岡充個人の活動もそうですよ。バンドマンやっているのに、いきなりドラマや映画に出たり、ミュージカルやったり。しかもグランドミュージカルから入るとか。 “振り切っている”というのが、今は自分の中でのひとつのジャッジかな。

ASH:松岡さんのそのスタンスって、ある種、異端だと思うんですね。ミュージシャンが俳優に転身することや、その逆もあるんだろうけど。松岡さんは両極端を表現して、しかも同時進行。テレビドラマ『人にやさしく』に松岡さんが出ていたのは、僕が中学の頃なんですよ。受け手の僕は、それがすごく自然なことだろうなって思ってたんです。松岡充というジャンルみたいな感じで捉えてたんです。

松岡:また、すごいことを(笑)。

ASH:いや、松岡充というジャンルを、デビューしたときから自然に作り上げていってたんだろうなって。SOPHIAの曲やライブを観たり聴いたりしていて、すでにミュージカルを観ているような感じもあったんですよ。ミュージックビデオも映画っぽかったし。1990年代後半ぐらいから、考えられた映像ばかりだったし。

松岡:ちゃんと観てくれてる。

ASH:SOPHIAのビデオ集も持ってます(笑)。

松岡:嬉しいっていうか、やって良かったなと、今思いますね(笑)。そんな人がアーティストとして活躍しているなんて、あの頃の俺に“もうちょっと頑張れよ”って言いたいよね。

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