コトリンゴ、音楽と映像で紡いだ『この世界の片隅に』スペシャルライブ

コトリンゴが4月11日（火）、映画『この世界の片隅に』のサウンドトラック発売を記念したスペシャルライブを東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて開催した。

◆スペシャルライブ 画像

同公演は、全国各都市で開催され盛況を博した記念ライブの追加公演として行なわれたもの。出演者はコトリンゴをはじめ、サウンドトラックのレコーディングにも参加している副田整歩（Sax、Fl、Cl）、徳澤青弦（Vc）、須藤ヒサシ（B）、鈴木カオル（Dr）による“カタスミクインテット”の5人だ。

演奏者が登場し、ステージ下手のピアノの前にコトリンゴが腰掛けてライブはスタート。サウンドトラックの1曲目「神の御子は今宵しも」に続き、オープニングテーマ「悲しくてやりきれない」を歌い上げる。ステージ後方のスクリーンには『この世界の片隅に』の楽曲使用シーンが場面カットや動画によって映し出され、視覚的にも映画を振り返ることができるという趣向で、広島・中島本町を歩いていく8歳のすずや青空の下に咲くたんぽぽの情景が演奏にさらなる情感を与えていく。


ライブはサウンドトラックのほぼ全ての楽曲にコトリンゴのオリジナル曲を織り交ぜた構成で、サントラの「引き潮の海を歩く子供たち」から「朝のお仕事」「隣組」に続いては、自身の楽曲「みっつの涙」と「ツバメが飛ぶうた」が披露された。また、コトリンゴが「私の好きなシーン、No.2かな？」という「ありこさん」と、それに続く「ヤミ市」では木琴が活躍。あまり出番がなく持て余していた、自宅にある3台の木琴のうちの2台を持参したという。「ありこさん」ではコトリンゴと鈴木カオルが、コトリンゴがピアニカに持ち替えた「ヤミ市」では副田整歩が木琴を担当。そこからピアノソロによる「りんさん」に繋ぎ、スクリーンには表裏一体とも言える二人の女性、すずとりんの出会いのシーンが映し出される。

そしてコトリンゴの好きなシーンNo.1でもあるという、すずが台所に立って楠公飯などの料理を作っていく場面の曲「ごはんの支度」は、さまざまな日用雑貨を楽器として使用しレコーディングされた楽曲だ。ライブではドラムの鈴木が、菜箸やボウルやざるを使って軽快なリズムを作り出していく。


それまでの楽しい雰囲気から一転、映画で描かれたテーマの重みを伝えるような楽曲が続く「あの道」からのパートに続いては、「こんにちは またあした」「つくりごと」などコトリンゴのオリジナル5曲が披露され、ステージはいよいよクライマックスへ。主題歌「みぎてのうた」と2番目のエンディング映像で使われた「すずさん」で、ライブ本編は幕を閉じた。

アンコールでは、戦後のシーンでラジオから流れたビッグバンドジャズの「New Day」をクインテットのアレンジで披露。さらに、コトリンゴ自身にとっても「大切な大切な曲」というエンディングテーマ「たんぽぽ」が、制作準備のために描かれたイメージボードの映写とともに披露される。完成した映画のカットと交互に映し出されることで、『この世界の片隅に』という作品の制作開始から完成、そして大きな評価を得るまでの歩みを感じさせるステージとなった。

公演中、「今年でデビュー10周年なんですけど、あっという間で、特別なことは何も計画していなかったんです。でも、『この世界の片隅に』のサウンドトラックを作らせていただいて、なんだかとても賑やかになって、これで10周年は十分だなと思っています」と語ったコトリンゴ。ライブの最後は、片渕監督との出会いとなった映画『マイマイ新子と千年の魔法』の主題歌「こどものせかい」を徳澤のチェロとともに届け、終演後には「いつまでもみなさんの中で、すずさんがフワフワと笑っていますように」というコトリンゴからのメッセージがスクリーンに映し出された。

なお、このライブは以後形態を変えて、コトリンゴのソロおよび徳澤青弦との共演で開催されることが決定している。