【インタビュー】世界一多忙なメタル・ギタリスト、ガス・G
1998年にギリシャのパワーメタルバンド、ファイアーウインドを結成したガス・Gは、ナイトレイジやドリーム・イーヴルと並行しながら勢力的な活動を続けてきた。この10年間で10数枚のスタジオアルバムに参加を果たし、ファイアーウインド、ドリーム・イーヴル、アーチ・エネミーでのサポートなどで世界中をまわり、世界一多忙なメタル・ギタリストと言われるようになる。
◆ガス・G画像
2009年にはオジー・オズボーンのギタリストとして抜擢され世界中の注目を浴びることになるが、独自のプレイスタイルを持つ彼はソロアルバムも2枚リリースし、5年間休止していたファイアーウインドのニューアルバムも先頃リリース、初のソロ名義での来日公演を実現させることとなった。ファイアーウインドのシンガー、ヘニング・バッセやアマランスのエリーゼを帯同した今回の公演は、ガス・Gのこれまでのキャリアの集大成といえるものとなった。
来日公演では、ソロアルバムを中心にしながらファイアーウインドの楽曲も多く披露された。ガス・Gのプレイは正確なピッキングによる一音一音がクリアに粒立っており、出音も非常に心地よい。曲中のキメ所でのステージアクションも、しっかりと客席へのアプローチもしながら、ミストーンのない完璧な演奏を見せつけてくれる。以前より明らかに洗練されたそのステージングはオジーとの経験によるものかもしれないが、そこにはギターが大好きなひたむきな青年の姿も感じられる、超絶テクニック志向や決して派手なギタリストではないが心底上手いギタリストだ。
ギタリストのソロ公演のため、「客席にギタリストはどのくらい来ているか?」と、ガス・Gが問う場面もあったものの、メロディックで優れた楽曲を持つバンドキャリアによりそのセットリストは非常にバランスの良いものだった。歌えるフレーズ満載の楽曲たちは終始飽きさせる事がなく、3曲参加の予定だったエリーゼはラストのオジー・オズボーンのカバーでも飛び入りし、華を添えていた。歌ものが多く演奏され、シンガーのヘニングやエリーゼの魅力も存分に堪能できたものの、そんな彼らのボーカルもアクセントになってしまうほど、ガス・Gのギタープレイはエネルギッシュで魅力あふれるものだった。
──ソロでの来日は初めてでしたが、いかがでしたか?
ガス・G:とても嬉しいよ。ソロアーティストとして初めてのライブだし、日本自体には何度か来ているけど特別な気持ちだよ。これまで全てが順風満帆なわけではなかったけど、素晴らしい道のりだったし楽しくやってきた。自分の好きな事、音楽で世界中をまわってプレイできて楽しい時間だったからね。
──バンドとソロ活動を並行し、多種多様なプレイ・スタイルも持つところは、あなたのギターヒーローであるピーター・フランプトンとも共通していますね。
ガス・G:ありがとう。ピーター・フランプトンは大好きだから、凄く嬉しい褒め言葉だよ。
──アルバム『BRAND NEW REVOLUTION』にはインストがありますが、あなたの魅力が凝縮された曲だと思います、もっとインスト曲は書かないのですか?
ガス・G:ソロ・アーティストとしては、特に方向性は定めていないんだ。自然と出てくるもの/その時に書きたいものを書いていて、たまたま『BRAND NEW REVOLUTION』のときは1曲しかできなかった。実はもう新しいソロアルバムを作っていて、次はインスト曲が多いよ。これも自然となったもので、その時々のタイミングだね。僕は「10曲書いて」と言われて書けるタイプのミュージシャンではないんだ。
──ファイヤーウインドの新作『Immortals』は初のコンセプトアルバムでしたが、以前からあったアイディアですか?
ガス・G:たしかにしばらく前からコンセプトアルバムについて話してはいたけど、真剣に進めてはいなかった。ファイアーウインドが5年くらい休止期間があって久しぶりにアルバムを作る事になってね、せっかくだし今がその時かなと思った。
──プロデューサーのデニス・ワードとはどのような経緯で?
ガス・G:共同プロデュースだよ。デニスとは2009年に一緒に取り組んでいた作品があったんだけど、未完のまま棚上げになっていたんだ。僕がオジー・オズボーンに参加したり、デニスはユニソニックを始めたりして忙しくなってね。その作品にはコンセプトがあって、今回のファイアーウインドと同じく古代ギリシャの戦争についてだった。昨年、当時のデモを聴き返してみたら凄くハマっていたので、今回新たなアイディアを足して作ることにしたんだ。デニスには歌詞や歌メロは作って欲しかったし、共作者として曲作りも助けて欲しかったんだよね。コンセプトアルバム制作にはデニスが打ってつけさ。彼はエンジニアでもあり、プロジェクト全体を監修することに長けているから、何から何まで一緒にやってくれた。共同プロデュースとして本当にふさわしいよ。
──新ボーカリストのヘニング・バッセはいかがですか?
ガス・G:とても良いよ。彼は長年のファイアーウインドのファンでね、10年前のファイアーウインドのツアーでシンガーをつとめた事もあるし、2015年には僕のソロツアーにも参加してくれた。頼りになるし良い友人でありどんなスタイルも歌えるシンガーなんだ。
──ファイアーウインド「Back On The Throne」はオジー・オズボーンを彷彿させますが、オジーとの活動は影響を受けましたか?
ガス・G:もうオジーとは8年もやっているからね、当然影響はあるけどファイアーウインドには独自のサウンドやスタイルがあると思っている。実はこの曲はオジーの為に作ったリフなんだよ。でも結局使わずにオジーはブラック・サバスをやり、これは寝かせていたものなんだ。このアルバムは大作だから、ずっと同じような曲ばかりだと単調になってしまうのを避けるためにちょっと違う曲ということで収録した。以前の2006年のアルバム『Allegiance』にも「Ready To Strike」というホワイトスネイクのような曲があったでしょ(笑)?アクセントになるしファンにも反応が良いから、パワーメタルだけではなくてハードロックも入れたんだ。少しリスキーかもしれないけど、「Back On The Throne」はアルバムのコンセプトにも合っていたからね。
──日本のファンへメッセージを。
ガス・G:日本のみんな、これまでずっとサポートしてくれてありがとう。また次回も会えるのを楽しみにしているよ。
取材・文 Sweeet Rock / Aki
写真 Yuki Kuroyanagi
<GUS G ~Japan Tour 2017~with Special Guest Elize Ryd>
1.My Will Be Done
2.Burn
3.Brand New Revolution
4.Hands of Time(FIREWIND)
5.Back on the Throne(FIREWIND)
6.Eyes Wide Open
7.Come Hell or High Water
8.Vengeance
9.World on Fire(FIREWIND)
10.The Fire & The Fury(FIREWIND)
11.The Quest
~Dr.Solo~
12.Terrified
13.What Lies Below(with Elize)
14.Long Way Down(with Elize)
15.Children of the Night(DREAM EVIL)
16.Redemption
17.I Am the Fire
~Encore~
18.Breaking the Silence(FIREWIND)(with Elize)
19.Crazy Train(Ozzy Osbourne)(with Elize)