【ライブレポート】ハッピーバースデー、ダウト!未来を見据えた10周年ワンマン

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ダウトが結成10周年記念である2017年3月4日、フリーワンマンライブ<ダウト祝十周年大感謝祭!!「天上天下唯我独尊」>を東京・上野水上野外音楽堂にて行なった。このライブの開催が発表されたのは2016年10月の末のこと。オフィシャルサイト上では当日までのカウントダウンの表示がスタートし、ライブへの期待はその数字と反比例してぐんぐんと増していくばかりだった。

◆ダウト ライブ画像

所属事務所を離れ自主での活動を始めてからまもなく1年になるダウトだが、国内はもちろん国外でもライブを行ない、コンスタントに作品をリリースし続けるなど、その活動の規模が縮小することはなかった。むしろ勢いが増したようにも感じられ、表舞台以外でもライブやグッズの手配に打ち合わせにと奔走し続けてきた様子はSNSなどを通して多くの人に伝わっていたことだろう。

2016年夏のワンマンツアーでも思ったことだけれど、ダウトのライブは演出が徹底している。あの日のステージには祭の提灯、壁にはお面や特大の豚の蚊取り線香が飾られるなどフロア内は完全に夏祭り会場だった。もちろん、今回の10周年ライブにも多くの演出が施されていて、開場中は和風のBGM、ステージのバックには紅白幕、上手/下手には“全身全霊”と書かれたビニール製の和柄特大バルーン、さらに関係者向けに配られたセットリストは水引のデザインという驚きのこだわりよう。ダウトはヴィジュアルや楽曲に“和”のテイストを用いることが多く、上野という立地もまたよく似合っていた。


ほぼ客席が埋まった頃、SEに合わせてステージ中央に掲げられた日の丸がゆっくりと上昇。直人(Dr)、玲夏(B)、ひヵる(G)、威吹(G)、幸樹(Vo)の順でメンバーが登場し、「心技体」の和風のイントロがしっとりと開演を告げた。

ステージから客席の中央までは真っ赤な花道が真っ直ぐに伸び、2曲目「シャングリラ」で早速飛び出してくるフロントの4人。上野水上野外音楽堂でヴィジュアル系アーティストがライブを行なうのはダウトが初めてだということも重なってか、その表情はまさに水を得た魚、新しいおもちゃを手に入れた子どものようだったとも表現したくなるほどにいきいきとしていた。

「君たちのおかげで3,650日ダウトとして過ごさせていただいて、今日無事に10周年を迎えることができました。ハッピーバースデー、ダウト!」幸樹がそう言い、大きな拍手がわき起こる。その言葉は、次に演奏された「明星オリオン」のサビ、「果てしなく続く道で 僕らは出会って 途方もない闇を照らしたのは オリオン」という歌詞にぴったりで、メンバーとファンが10年間かけて築いてきた絆が具現化されたような、目の前に広がるその光景に思わずグッときてしまった。



だんだんと日も落ち始め、夕日が差し込む会場に水音とカモメの鳴き声が入った演歌の前口上が流れ「中距離恋愛」。威吹のギターソロが哀愁たっぷりに響き渡り、「赤い傘と貴女」では憂いを帯びた幸樹の歌声に会場中が真剣に耳を傾けていた。

MCを挟み、「暴れていきましょう!」という煽りから「綺麗事」「53」と攻めのナンバーへ。久しぶりだという「メンバーコール」のあとは、「感電18号」「卍」「DANCE NUMBER」とお祭り騒ぎもピークに。「MUSIC NIPPON」で開場時にメンバーには秘密で配られた扇子を会場全員が一気に手に持つと「お前らが手に持ってるのなんだそれ!?」とサプライズは大成功の様子で、メンバーは驚きと喜びが入り混じった笑顔を見せた。

本編ラストの曲の前には、1人ずつからこの日の感想や10年間を振り返っての想いが語られた。直人は「夢みたーい!」と叫び、これまで浴びたことのないような自分を呼ぶ大きな声がとても嬉しかったとコメント。玲夏は「今日みたいな時間がずっと続けばいいな。続けようじゃないか。泣きそう。」と言い、「10年間(幸樹、ひヵる、威吹)と2年間(直人)ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。ミナセもなー!」と現メンバー、2014年にバンドを卒業したミナセへ向けてもメッセージを送った。



ひヵるは「一応年齢不詳なんですよ、僕」と前置きをしてから、人生の約3分の1をメンバーとともに過ごしているということが今朝ふと頭に浮かんだと感慨深げに言って「これからもがんばっていきます」と意気込み、威吹は事務所を抜けることに不安があったと正直な気持ちを吐露するも「みなさんの応援があって続けられていると思っています。みなさんが愛おしくて本当に嬉しいです」とファンへ感謝を伝えた。そして最後に幸樹が「今日は少しだけ未来の話をしたいなと思っています」と切り出し、ゆっくりと語り始めた。

これまでダウトは日本武道館でのライブを目標としていて、近い未来にその予定を実現しようとしていたという。しかし、その決断はダウトを終わらせる一歩になるのではないかと感じ、「自分たちにとって、ファンにとってダウトとはなんだろう?」とメンバー同士で朝まで話し合ったそうだ。その結果、現状で日本武道館でのライブを強行した場合、きっと数年後に後悔をするだろうという結論に至ったと明かした。

「明日のない武道館(ライブ)をするよりも、武道館(ライブ)をやったあとにまた僕らの明日を語れる、そんな日を僕らは選びました。なので、君たちにお願いがあるんですけども、もう少し…もう少しじゃなくて、めいっぱい、待ってもらっていいですか? 必ず君たちを連れて行く約束はします。だから、そこが終着駅じゃなくて、そこがあくまで通過点だったと言える日が必ず来ると思うので、それまでめいっぱい全身全霊で君たちと駆け抜けたいと思ってます。」──幸樹

「いつか武道館ライブをやります」という宣言は誰にでもできることだと思う。しかし、自分たちを応援してくれているファンに「もう少し待っていてほしい」という、ある意味で言うと、弱い部分を見せることはとても勇気がいったのではないだろうか。10周年という節目はメンバーとファンとの関係をまた一段階進化させ、さらに強いものへと変えるきっかけにもなってくれたのだと感じさせられた場面だった。そして「花咲ビューティ」ではファン同士が当たり前のように手をつなぎ、ダウトへの愛を胸に、身体も声も心もひとつにして大合唱。メンバーの背中を押すような温かい歌声で11年目の門出に華を添え、本編を締めくくった。


アンコールでは急遽「バラ色の人生」がセットリストに組み込まれ、幸樹が会場内を動き回り、客席の1番後ろまで来て歌唱。ラストは「俺らの10年間見せてやろうぜー!」とダウトの始まりの曲である「フラッシュバック」を披露し、おなじみの三三七拍子で大団円となった。

上野にはちらほらと桜が咲いていて、春の訪れとともに10周年の花を見事に咲かせたダウト。結成から1年や2年といった短い期間で志半ばに散ってしまうバンドも多いなか、ひとつの方向、目標に向けて10年間歩み続けるというのは並大抵のことではないだろう。彼らが15周年、20周年と、その花をもっともっと大きくしていってくれることを心から願う。

取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)


■セットリスト

SE.晴天の霹靂
1.心技体
2.シャングリラ
3.太刀風横丁
4.明星オリオン
5.ダァァティィ・ロマンチッカァァ
6.フェンダー
7.中距離恋愛
8.赤い傘と貴女
9.綺麗事
10.53
11.万國、大東京
12.JUDAS
(メンバーコール)
13.SAKURAリフレイン
14.感電18号
15.卍
16.DANCE NUMBER
17.MUSIC NIPPON
18.花咲ビューティ

EN1.バラ色の人生
EN2.フラッシュバック

両A面Single「バクチ / 魁swallowtail」

2017年4月26日(水)発売
■全身全霊テープ盤
S.D.R-311-D / ¥1,200(税抜き) / TAPE2曲
[TAPE]
A面. バクチ
B面. 魁swallowtail

■全身全霊豪華盤
S.D.R-311-A / ¥5,500(税抜き)/ CD2曲+DVD
[CD]
1. バクチ
2. 魁swallowtail
[DVD]
上野水上公園野外音楽堂LIVE

■初回限定盤
S.D.R-311-B / ¥1,800(税抜き)/ CD2曲+MV
[CD]
1. バクチ
2. 魁swallowtail
[DVD]
「バクチ」MV+MAKING

■通常盤
S.D.R-311-C / ¥1,200(税抜き) / CD2曲
[CD]
1. バクチ
2. 魁swallowtail

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