【インタビュー】破天荒なライブも話題のジ・オーウェルズ、「ロックの人気を復活させたい」
── 作曲のプロセスは、どんな感じだったんですか?
マリオ:今作のプロセスは、これまでの作品とは違ってた。俺とギタリストのマットとドミニクの3人で、まず曲の骨格を作ったんだ。アコースティック・ギターを使ってね。その後、それをメンバー全員に聴かせたんだよ。以前は全員が同じ部屋に集まって作曲してたんだけど、全員がお互いのアイディアを叫び合ってて、上手く行ってなかったからね。
── 歌詞は主にあなたが書いているんですか?
マリオ:うん。でも、新作には他のメンバーが書いた歌詞も入ってるよ。歌詞のテーマについて、前よりもみんなの意見や提案を受け入れたんだ。そのおかげで、これまで歌ったことがないテーマも書くことができたよ。
── アルバム最後を飾る7分強の「ダブル・フィーチャー」は、ライヴで聴いてもすごくカッコいいロックンロール曲ですね。この曲は何について歌っているんですか?
マリオ:今作の作曲中、俺は『It Follows』っていうホラー映画にすごいはまっててさ。完全にあの映画を基にした曲ってわけじゃないんだけど、この曲のテーマのインスピレーションになったんだよ。ホラーっぽい雰囲気を持つ曲にしたかったんだ。
── 確かに、ホラー的な雰囲気がある曲ですね。あと、奇妙な雰囲気がある曲という点で「クリーチャー」も好きなんですが、この曲のテーマは?
マリオ:これは、俺の困った友人達に向けて書いた曲なんだよね。特に何もしてなくて、将来何の仕事をしたいかも分かってなくて。俺は若い時にやりたいことを見つけられたから、かなりラッキーだと思うんだけど、そうじゃない人は一杯いる。すごく時間がかかる人もいるんだよ。故郷には、そういう友人が沢山いるんだ。
── 最新シングルの「ブラック・フランシス」もすごくクールな曲ですが、この曲についても教えて下さい。
マリオ:俺達自身のこと、このバンドと俺達の地元をからかってる感じの曲なんだ。ここシカゴの音楽シーンって、かなり変なんだよ。誰かが成功すると、すごく嫉妬されたり、憎まれたりするんだ。N.Y.やL.A.出身のバンドだったら、TVとか雑誌とかに出るのってよくあることだろうけどさ、シカゴでバンドが成功すると、そういう土壌がないから、叩かれるんだ。
── もしかして、アルバム・タイトルの『テリブル・ヒューマン・ビーイングズ』はそこから来てるんですか?「酷い人間達」っていうタイトルはちょっと皮肉だなと思ってたんですけど。
マリオ:そうだよ。なぜか俺達の評判って酷くって、「こいつら、クソだぜ」って言うような、あまり良くない人間が多いんだ。それで、このタイトルを思いついたんだ。
── 地元の人間が成功したら、誇りに思うべきなのに。
マリオ:うん、でも、俺はシカゴに住んで3年になるんだけど、生まれ育ったのはここから30分ぐらい離れた郊外の街(エルムハースト)なんだ。シカゴは俺達の故郷じゃないんだから、シカゴを代表するべきじゃないって思ってる人もいるんだ。そんなことにこだわる人がいるのはおかしいと思うけど、それが彼らのプライドなんだ。
── ロサンゼルスに引っ越すべきですね。
マリオ:だよね。マジで行きたいよ。
── 音楽に話を戻しますが、ザ・ストロークスがメンバー全員が好きなバンドだったそうですね。その他に、あなたはどんな音楽を聴いて育ったんですか?
マリオ:俺は、そんなに音楽を聴く子供じゃなかった。このバンドのメンバーと出会って、彼らに色々教えてもらったんだ。ザ・ストゥージズとか、ザ・ブラック・リップスとか。それで彼らみたいなバンドになりたい、彼らとショウをやって、俺達のことを知ってもらいたいって思った。とにかく彼らと一緒にプレイして、友達になりたい、同じ部屋で時間を過ごしてみたいっていうのが、俺達の原動力だったんだよ。
── このバンドで達成したい一番の夢は何ですか?
マリオ:俺はクールなアンダーグラウンド・バンドでい続けるっていうアイディアが好きじゃないんだ。本当の成功が見てみたい。今のメインストリームの音楽はヒップホップとDJに支配されてて、ロックンロールはクールじゃない音楽になってる。俺は、ロックの人気を復活させたい。今は一番成功してるインディー・バンドだって、大物ラッパーの足下にも及ばない状況だからね。そのために必要なことなら、全てやりたいよ。俺にとって大事なのは、可能な限り大勢の人達に俺達の曲を届けることなんだ。
── ジ・オーウェルズなら、きっと達成してくれると信じてます! 最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
マリオ:日本に戻ってプレイしたいよ。俺はまた日本に行きたいからさ、君達がその実現を助けてくれたら嬉しいね。
インタビュー◎鈴木美穂
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マリオ・クオモ ─ vocals
ドミニク・コルソ ─ guitar
マット・オキーフ ─ guitar
グラント・ブリナー ─ bass
ヘンリー・ブリナー ─ drums
イリノイ州シカゴ郊外にあるエルムハースト出身。いとこ同士であるマリオ・クオモとドミニク・コルソ、そして双子のグラント&ヘンリー・ブリナー兄弟、そしてこの4人と家族ぐるみのつきあいがあったというマット・オキーフからなる5人組。2009年ころから一緒にバンドをはじめ、地元を中心に活動をしていたのだが、2011年、とある有名なブロガーの目に留まり、音楽業界から注目されるようになる。高校に在学中の2012年、まずバンドは先のブロガーの所有するレーベルよりアルバム『リメンバー・ホエン』を発表、2013年に高校を卒業後、音楽活動を本格化させていく。まずシングル「モールラッツ(ラララ)」を発表、Pitchforkにてレビューを受けると、6月には初のEP『アザー・ヴォイシズ』を発表、9月にはセカンドEP『フー・ニーズ・ユー』を発表、その間も絶え間ないツアーを続け、徐々にその名を全米中に広めていく。同年8月にはロラパルーザ・フェスティバルへ出演、セカンドEPのタイトル・トラック「フー・ニーズ・ユー」はNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)に取り上げられ、「現在最もスリリングで、カリスマ的な魅力を備えたティーン・ガレージ・バンドだ」と絶賛されるようになる。
David LettermanやJools Hollandといった米音楽番組に出演、そのバズはさらに広がりを見せていく中、2014年2月にはアークティック・モンキーズのUSツアーのサポートに大抜擢、全米だけでなく英NME誌からも大きな注目を集め始める。徐々にジ・オーウェルズへ大きな追い風が吹き始める中、彼らはATLANTIC/CANVASBACKより、ティービー・オン・ザ・レディオやヤー・ヤー・ヤーズを手掛けるデイヴ・シテックをプロデューサーに迎えた全世界デビュー・アルバム『ディスグレイスランド』を発表。SUMMER SONIC 14にて初来日公演を行った。また、収録曲「フー・ニーズ・ユー」はiPad Air 2のCMソングにも抜擢。しばしの活動休止期間を経て、2016年にはライブにて活動を再開。「理由なくカート・コバーンを殴った唯一の会場」ことダラスの会場ツリーにてステージ上で喧嘩に巻き込まれ、活動開始後早速報道されている。
2017年02月17日発売
WPCR-17630 ¥1,980(本体)+税
M-1. They Put a Body In the Bayou / ゼイ・プット・ア・バディー・イン・ザ・バイユー
M-2. Fry / フライ
M-3. Creatures / クリーチャーズ
M-4. Vacation / ヴァケーション
M-5. Black Francis / ブラック・フランシス
M-6. M.A.D. / M.A.D.
M-7. Buddy / バディー
M-8. Hippie Soldier / ヒッピー・ソルジャー
M-9. Heavy Head / へヴィ-・ヘッド
M-10. Body Reprise / ボディー・リプライズ
M-11. Ring Pop / リング・ポップ
M-12. Last Call / ラスト・コール
M-13. Double Feature / ダブル・フィーチャー
M-14. Vanilla / ヴァニラ(※Bonus Track)
※国内盤のみボーナストラック収録