【ライブレポ・インタビュー】野口五郎、変わらぬ美声を響かせた45周年記念ライヴ、板野友美と早見優がサプライズ出演でデュエットを披露
2017年2月5日(日)、野口五郎のデビュー45周年を記念するコンサート<GORO NOGUCHI 45th Anniversary Festival 2017>が、渋谷Bnkamuraオーチャードホールにて開催された。“デビュー45年 祭 スペシャルコンサート”と銘打たれたこの日のライヴでは、野口五郎が若い頃よりさらにパワーアップした歌声で名曲の数々を熱唱。サプライズゲストとして板野友美と早見優も登場、まもなく発売される新作アルバム『風輪』の収録曲を野口五郎とデュエットし、満員の聴衆を大いに沸かせた。
◆野口五郎~画像~
ステージは、ベートーベンの「悲愴」第一楽章のテーマで厳かに始まった。ストリングスやホーンセクションも擁するバンドの重厚なサウンドの中、ギターを抱えた中央の野口五郎にスポットライトが当たる。五郎はきめ細かく歪んだ甘いトーンで、一転して明るい第二楽章のテーマを伸びやかにプレイ。そしてマイクに向かうと、荘厳なストリングスに導かれて「愛の賛歌」、さらに2012年のシングル曲「僕をまだ愛せるなら」と、ドラマチックなバラードを歌う。五郎らしい感情あふれる張りのある高音がホール全体に響き渡り、満員の客席は大喝采で応えた。
話術に長けたことでも知られる五郎のコンサートでは、MCも楽しみのひとつ。しかし最初のMCで彼は“イギリスがEU離脱し、アメリカでは……”となぜか時事問題を語り出し、いったいどこへ行くのかと客席を戸惑わせたが、“そんな激動の時代の中、今日ここに僕に会いに来てくれたことを感謝します”とさすがの着地で大きな拍手を呼ぶ。そして“「甘い生活」や「私鉄沿線」は、1位を獲った曲だから僕にとって金メダル。でもその陰に隠れて銀や銅の曲もある。今日はそんなかわいそうな曲を披露します”と語り、「青い日曜日」、「告白」、そして「きらめき」と、アイドル時代のナンバーを立て続けに披露した。
ファンなら誰もが愛するアイドル時代の名曲は、アレンジもほとんど当時のままだし、歌のキーもオリジナルのままで、当時の雰囲気がそのまま再現されていた。しかもハイトーンを伸びやかに響かせる五郎の歌声は、当時と変わらないどころか、さらにパワフルで深みを増している。当時以上の表現力と迫力で、隠れた名曲を華やかに再現してみせた。MCで本人も語っていたが、彼はすべての曲でキーを変えずにオリジナルのまま今でも歌っている。子供のころからひたすらに音楽を愛し、歌い、演奏し続けてきた五郎だからできることなのだろう。
この日は、そんな彼の貴重な歴史を垣間見せるシーンも盛り込まれていた。11歳のときにのど自慢番組に出演した際の映像がスクリーンに映し出されたのだ。映像の中の少年は、ギターを弾きながら、とても11歳とは思えない表現力で荒木一郎「今夜は踊ろう」を歌う。子供のころからこんなにうまかったのか、と驚いている暇もなく、その映像が終わるや否や、今度は“今の五郎”が生で同じ曲を披露。続いて幼少期の写真や、バンド演奏する少年時代の五郎の姿ととにもに、そのころ歌ったザ・ワイルドワンズの「青空のある限り」が流れ、再び生で同じ曲を演奏。楽しそうにギターを弾きながら歌う五郎の姿に、手拍子が沸き起こった。
当時、のど自慢でつねに優勝を競い合い、互いに強烈な印象を残していたという天童よしみのエピソードなど、爆笑トークを交えながらステージは進行する。中盤は「君が美しすぎて」「青春の一冊」「愛ふたたび」と、若いころからのファンが涙するようなナンバーが続き、「愛がメラメラ」でサンタナばりの甘いトーンでギターソロを披露すると、客席からはサイリウムが振られた。
この日は途中にカラオケタイムも設けられた。しかしこれが驚きの連続だった。五郎が一人でカラオケに来たという設定のミニコントからの流れで、サプライズゲストが登場。最初は戸惑っていた客席も、それが早見優だとわかると大拍手。早見優は『風輪』収録の「愛が生まれた日」を、五郎自ら制作したというカラオケでデュエットし、艶やかな歌声で喝采を浴びた。続いてもう一人のゲスト、板野友美が登場すると、突然のトップアイドルの登場に客席はどよめいた。ここまで未発表だったが、実は板野友美も「東京ナイト・クラブ」で『風輪』に参加していたのだ。この曲を、アイドル時代とは違う抑えたトーンで妖艶に歌った彼女にも盛大な拍手が送られた。そしてゲスト2人が参加した「愛の奇跡」でカラオケタイムは華やかに締めくくられた。
終盤は古今東西の名曲がズラリ。五郎が“先生”と呼ぶ筒美京平にまつわる曲ということで、筒美京平作曲の堺正章「さらば恋人」、ジュディ・オング「魅せられて」、そして実兄の佐藤寛作曲、筒美京平編曲の「私鉄沿線」と70年代歌謡の名曲が続き、さらに「ある愛の詩」「愛は限りなく」「アドロ」と世界的名曲も披露。「されど青春」「歌がある限り」でドラマチックに締めくくられるまで、歌声の力強さはまったく変わらなかったし、アンコールの「All By Myself」、「A Song For You」では途中でマイクから離れ、生の声を広いオーチャードホールいっぱいに響き渡らせた。艶のあるパワフルな歌声、伸びやかなハイトーンが、終始観客を魅了し続けた2時間だった。
取材・文●田澤仁
セットリスト
1.悲愴~愛の賛歌
2.僕をまだ愛せるなら
3.青い日曜日
4.告白
5.きらめき
6.今夜は踊ろう
7.青空のある限り
8.君が美しすぎて
9.青春の一冊
10.愛ふたたび
11.愛がメラメラ
12.愛が生まれた日 w/早見優
13.東京ナイト・クラブ w/板野友美
14.愛の奇跡 w/早見優、板野友美
15.さらば恋人
16.魅せられて
17.私鉄沿線
18.ある愛の詩
19.愛は限りなく
20.アドロ
21.されど青春~歌がある限り
EN1.All By Myself
EN2.A Song For You
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