【インタビュー】LITE「海外からどう見られるかは行かないとわからない」DIYスタイルが導き出す世界の現在地
約3年5ヶ月ぶりの5thアルバム『Cubic』をリリースしたLITE。彼らは10年以上、海外と日本の両方で活動を繰り広げてきたポスト・ロック・バンドである。
◆LITE 画像
今作も、日本では自主レーベル「I Want The Moon」より、アメリカとヨーロッパでは良質なバンドの集うインディー・レーベル「Topshelf Records」からリリースされる。さらに昨年バンドは初の中国ツアーも実現した。
ちなみにギタリストの武田信幸は、多忙なバンド活動の傍ら、数年前に行政書士としての資格も取得。ミュージシャンのためのお金のセミナーなどを開催したり、海外にツアーするバンドが得られる公的な助成金の申請の手助けをしたりしているそうだ。
バンドの現在地について、そして独特な活動スタイルについて、じっくり語ってもらった。
取材・文◎柴 那典
◆ ◆ ◆
■ 中国は貪欲な人たちが来ていると思います。濃度が高い
▲武田信幸(G) |
武田(G):そうですね。変わってきてると思います。最初はマイク・ワットに連れて行ってもらったんで、その時のお客さんはマイク・ワットのファンがほとんどだったんですよ。白髪の50代、60代の人が来てくれたり。でも、そのうち僕らがヘッドライナーで廻れるようになったら、最近はガラッとお客さんが入れ替わって。
──最近はどんな感じなんでしょう?
武田:だんだんお客さんが若返ってる感じです。対バンも若くなったんです。で、そのバンドが高校生の時に僕らの音楽を聴いていて「一緒にライブができるなんて夢のようだ」って言ってくれたり。時代が一周したと思いましたね。世代が受け継がれてて、こういうシーンがちゃんとあるんだなって。
──不思議ですよね。00年代初頭に生まれたポスト・ロックというシーンが、ちゃんと新陳代謝してジャンルとしての歴史を重ねている。
武田:そうですね。市民権を得てますよね。それは実感します。
──日本だとどうですか?
武田:正直、あまり新陳代謝が行われてる気がしないんです。というのは、イギリスの<ArcTanGent>っていうフェスがありますけど、あれに出たときに思って。あそこに出ると確実にシーンがあるとわかるんです。いろんな国から国境関係なくファンが集まっていて。
楠本(G,Syn):ヨーロッパ中の人が来てるもんね。
武田:そういう一方で日本のシーンは、やっぱりtoe以降、ポストロックシーンはうやむやで、ぽつぽつ点在してる印象です。
──そこに関しては僕自身もメディアの人間として実感することは大きいですね。00年代の後半にインストバンドやポスト・ロックをメディアが持て囃した。正直、僕もそこに加担した一員だと思っているんです。でも、自戒を込めて言うと、その盛り上がりが一巡した後、若い世代が出てきてるか、裾野がどれくらい広がってるかには、あまり寄与していない。
楠本:実際、新しいバンドって日本に少ないんですよね。新陳代謝はなかなか行われていないかもしれない。
──<ArcTanGent>って、どれくらいの人数が、どれくらいの熱気で盛り上がってる感じなんですか?
武田:人数は3000人くらいだと思いますけど、ただ熱気はハンパじゃないです。
楠本:ヨーロッパは、10人のライヴだろうが、何百人のライヴだろうが、あんまり盛り上がり方が変わらない感じがするんです。勝手に、周りとか関係なしに、いいライヴだったら盛り上がる。
武田:僕らのライヴでダイブが起きたのは、<ArcTanGent>が初めてです。そこでダイブするの!?って(笑)。
──バンド同士の横の繋がりも出来ますか?
武田:それも大きいですね。その辺を歩けば知り合いがいて、今度一緒にツアー廻ろうぜって話になる。
楠本:シーンがそこにギュッと集まってる。
──しかもそこが一緒に年を取っていくわけではなく、若い子も入ってきている。
武田:そんな感じですね。
──LITEは一方で去年に中国のツアーもやっていますよね。多くの日本のバンドにとって未開拓だと思うんですが、どんな感じでしたか?
武田:恐れながら行きましたけど、終わってからはまた行きたいねって話になりました。
▲楠本構造(G,Syn) |
武田:そう、真剣に観てくれるし、盛り上がってくれる。
──どうやってLITEのことを知るんでしょうね。
武田:普通のfacebookとかSNSは検閲がありますけど、若い世代の尖った人は、海外にアクセスポイントを持って情報を仕入れたり、情報を駆使してる人が行き着いてる感じです。
──なるほど。何らかの方法でアクセスしている。
武田:あと、僕らのツアーを組んでくれたプロモーターの「NEW NOISE」がMOGWAIを呼んだりBATTLESを呼んだり、イギリスのMaybeshewillを呼んだり、現地にシーンを広めることに尽力していて、その影響もあると思うんです。このイベントは信頼できるからここに集まろうっていう。
楠本:この人だから間違いない、知らないけど行ってみようっていう人もいると思います。
──またゼロからお客さんに出会った感はあった?
武田:そうですね。
◆インタビュー(2)へ
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