【インタビュー】植田真梨恵、寂しい夜に寄り添える1枚が「今、この時を楽しく、前向きに変える」

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■カッコいいじゃないですか
■リフからできたんです!って言えるのが

──そして先ほど言った’60年代ポップスの香りということでは、「I was Dreamin’ C U Darlin’」などがそうで、まどろむような心地よさがあります。また続く「パエリア」では、そのポップさがよりマジカルで遊び心のあるものになってます。「パエリア」はどんな音のイメージがあったんですか。

植田:ピアノでのライヴ<Lazward Piano>を一緒にやっているピアノの西村(広文)さんと、東京で空き日があった時にスタジオに入ったんです。「アルバムを出すかもしれないし、曲を書いておきたいんですけど」って(笑)。遊ぶような気持ちで、「リフものの曲が書きたいんです」って言ったんです。それでリフから作っていって。カッコいいじゃないですか、「リフからできたんです!」って言えるのが。

──こういう取材で言いたかったんですね(笑)。

植田:そう。リフからできたんです(笑)! この曲はバンド“いっせーのーせ”で合わせた時に、みんなでユニゾンするようなことをやりたいと思っていたんです。でも「パエリア」に関しては、ライヴだとまた違うアレンジにもなってくると思うんですよね。

▲植田真梨恵 画像ページへ

──収録された曲では、プログラミングでいろんな音響感も味わえますしね。

植田:『はなしはそれからだ』はグッと音数の少ない作品だったので、2枚目はもっと音のなかに迷い込んだような空気になるといいなと思っていて。アレンジは、そういうのが得意なjoe (daisque) 君にお願いしたんです。リフ押しで作って、結婚式でも歌えるような曲にしたいなと思いました。私の歌は大体……。

──ちょっと結婚式では、歌えないですよね(笑)。

植田:ふふふ。悲しい要素をついつい入れてしまうので、歌えないんです(笑)。信ぴょう性を増したくて、そういう影の部分を歌ってしまうところがあるんですけど。この曲ではそういう部分は歌ってないかなと思いますね。でも私がいちばんアルバムを全曲通して聴いて、泣く曲です。

──え、闇がないのに?

植田:なんていうか、“こうだったのにね”と思ってしまう。

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──そんなことまで考えてしまうんですね(笑)。アルバムのラスト曲が「犬は犬小屋に帰る」です。今回のブックレットのアートワークには、曲それぞれのキャラクターたちが描かれていますが、「犬は犬小屋に帰る」でのキャラクターはサラリーマンでしたね。このタイトルと絡めると、皮肉たっぷりに見えるんですが。

植田:はい、“そう見えるかな?大丈夫かな?”って思ったんですけどね(笑)。この曲は、年の瀬の、みんなが超忙しいし、ヘトヘトなんだけど、街はどんどん賑わっていって、寂しくなるみたいな。(笑)。その感じがすごく愛おしく思うんですよね。

──やるせなさも漂う歌だけれども、爽やかでソフトなギターロックに落とし込まれていて、アルバムのエンディングらしさもある。

植田:そうですね。まずメロディを書いて、曲ができ上がって。タイトルは「犬は犬小屋に帰る」がいいなと思って、なんとなく歌詞を書きはじめたんですけど。メロディも含めて、自分のひねた部分がすごく出てしまった気がして。それもあって、こういうハートフルなアレンジにいったのかな(笑)。アルバムの最後に、温かく「おやすみ」と言えるような曲がいいなと思っていたんです。

──オープニングの「Intro」から夢の中へと入っていく作品だけれども、この最後の曲でまた「おやすみなさい」となるんですね。「おはよう」ではなく。

植田:きっと、前作の『はなしはそれからだ』だったら、「おはよう」に繋がるのかなってイメージなんですけど。『ロンリーナイト マジックスペル』に関しては、今、この時をいかにうまく、いかに楽しく、前向きに変えるかみたいなところがあるから。寂しさに寄り添えるような、眠る前にアルバムを一回聴いて、いつのまにか寝ていたくらいの感じだといいなと。そういう寂しい夜のおまじないのような1枚になればいいなと思いました。

──“マジックスペル”というのは、そういう“おまじない”の意味合いがあるんですね。

植田:はい。

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