【特別対談】中村あゆみ×プロレスラー・鈴木みのる「ベスト盤に収録される曲は、彼のほうが詳しいんじゃない？」

■ 中村あゆみ＝ゴジラ説（笑）

▲ベストAL『A BEST～Rolling 50』通常盤

── でも今回のベストに、「風になれ」は収録されなかった。なぜですか？

中村：その話も出たんです。でも、2年後にみのる君の30周年があるから、やるならそこでお披露目したいと思ったので。彼のために作った曲だから。それを出したあとに自分のアルバムに入れるのはいいんですけど。

鈴木：作った時からずっと言ってくれてるのが、“これはあなたにあげた歌だから、私のアルバムには入れない”ということ。

中村：そしたら、私の知らないところで勝手にアルバム作っちゃった（笑）（鈴木みのる×中村あゆみ『「風になれ」完全版BOX』／2015年リリース）。鈴木みのるの代表曲なんだよね。私が歌ってるんだけど、「風になれ」という曲は鈴木みのるの人生そのものだったりするから。しかも、これだけ違う形があると、入れるなら新しくしようかってなるの。


鈴木：一体何バージョンあるんだ？っていうぐらいありますからね。リリースしたのが三つで。

中村：鈴木みのるの30周年に合わせて、積み上げていく時間が必要だったりするんで。イメージが固まったら、彼に聴いてもらって、どう？っていうことになると思う。そこから作品にしていって、30周年に間に合えばと考えています。

── 楽しみです。

鈴木：あゆみさんに聞きたかったんですけど、今回のベスト、やっぱりこの年代（80～90年代）の歌なんですね。これ以降の歌もあるじゃないですか。じゃなくて、ここの年代にまとまったのはなんでかな？って。

中村：それはね、第一弾だから。

鈴木：ああ、そういうことか。

中村：たぶん、もう一個“5”が増えた頃に第二弾をと考えている…のかもしれない（笑）。その時だったら、「風になれ」は入れていいんですよ。

鈴木：確かに。このベストは、「風になれ」はない時代だから。このあとなんですよね。

中村：今回は、聴き手の世代を40代から50代に想定していて。30～40代がメインになる曲は、まだ眠らせておいて、その時に「風になれ」がどーんと出たらいいんじゃないかな？とか。

鈴木：「やせっぽちのジョニーE.」は入ってないのか。…今、完全に、できあがってからのクレームになってますけど（笑）。

中村：それはライブDVD（初回限定盤付属）のほうに入ってるから。「涙のTwistin' Heart」とか、入れてないでしょ？　それもDVDのほうに入れてるから。この次は、たぶん40代がメインになるから、比重が変わるんじゃないかな。

鈴木：それぞれのアルバムの時代背景が、自分の中にあるんですよ。

中村：新しくアレンジした曲も、けっこういいよ。「ともだち」や「Cry」は、佐野元春さんのところで弾いてる西本明さんがピアノで入ってくれたり。「ともだち」は歌詞も変えてる。23の時に書いた、当時の自分へのアンサーソング。だから、両方並べて聴いてもらえるといいですよ。

鈴木：この間俺のラジオに来てくれた時に、そこの部分を熱く語られて。まだ聴けてない自分が悲しかった。

中村：当時は“本当の友達がほしい”とか書いたんだけど、50歳を前にした時に、アドレス帳に名前があって連絡を取れる友達じゃなくて、“本当の”がつく友達はいるかな？って思ったの。総じて今回はそういう、Rolling50に合わせたアルバムになってると思う。あとね、まだ聴かせてないけど、ボーナス・トラックに入ってる「翼の折れたエンジェル-BALLADE-」（通常盤のみ収録）、なかなかいいよ。大人になった鈴木みのるの世界観があると思う。

鈴木：歌詞は一緒でしょ？

中村：もちろん。

鈴木：やっぱり俺、翼が折れてるんだ（笑）。

中村：そうじゃなくて！　何て言うのかな、こういうふうにやっと歌えるようになったよね、という感じ。折れてるようで、折れてない感じ。いい感じの大人感が出てると思う。ギターは今剛さんで、これがまたいいんだよね。ちょっとせつなくなる。たぶんひとりで車の中とかで聴いたら、男の人はグッとやられちゃう気がする。変化させないで、そのままがいいという曲もあるの。新しくアレンジした曲も、絶対このイントロは変えてほしくないとか、そこはすごくいい具合に守られてると思うんだよね。で、ここは大人に成長させていいよね、というところだけを変えてるから。


鈴木：全然話違うかもしれないけど。この間、飛行機の中で『シン・ゴジラ』を見たんですよ。今の技術でゴジラを表現して、ストーリー設定も今なんだけど、今言ったみたいに、昔のままの部分もすごくあって。だから、あゆみさん、ゴジラなんですよ（笑）。

中村：でも私、復帰した時（2004年）のライブのタイトルが“恐竜は生きていた”だった（笑）。全部そっち系なんだよね（笑）。

鈴木：やっぱり（笑）。

中村：私は自分のことを、お花で言うとかすみ草とかだと思ってるんだけど、人は全然違うことを思ってるから。ゴジラなのか、やっぱり（笑）。

鈴木：中村あゆみ＝ゴジラ説（笑）。

── いつまでも元気で暴れていてほしいです（笑）。このベストは、あゆみさんの今後の活動の基盤になりつつ、みのるさんの30周年にもつながっていくという、新しい物語の始まりになるような気がします。

鈴木：なりますね。そしてもしも今度「風になれ」をやるなら、歌を入れ直すだけじゃなくて、根本的に違うバージョンがほしいですね。

中村：そうよね。

鈴木：そのときもぜひ、ワーナーさんにご協力いただきたいなと思ってます（笑）。

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取材・文＝宮本英夫