【詳細レポ】藍井エイル<LAST BLUE>、「心からありがとう 君の笑顔は私の光だよ」
藍井エイルが2016年11月4日および5日、デビュー5周年記念にして無期限活動休止前のラストライブ<Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 at 日本武道館 ~LAST BLUE~>を開催した。先ごろ公開した速報レポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。
◆藍井エイル 画像
体調不良が重なり、決まっていたスケジュールをキャンセルして音楽活動を休止していた藍井エイルから、“無期限の活動休止”という衝撃の二ュースが届いたのは10月14日のこと。無期限の活動休止を発表した直後、オフィシャルFacebookには国籍、性別、世代関係なく、藍井エイルを愛する世界の人々から驚くほどたくさんの悲しみと応援のコメントが寄せられていた。なぜ? どうして? 詳細が発表されないまま迎えた11月4日および5日の日本武道館ワンマン公演<Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 at日本武道館〜LAST BLUE〜>、その2日目のライブを観た。
“心からありがとう 君の笑顔は私の光だよ”。これは、ライブ中に場内に舞い降りてきた銀テープに藍井エイルが青色のペンで書き記していた言葉だ。
この日のライブが始まってから、アリーナ、1階席、2階席の観客をまっすぐに見つめ続け、指差し、思いの丈をぶつけるような鬼気迫るパフォーマンスを繰り広げる藍井エイルを観ながら思った。藍井エイルは本当はまだまだ歌いたいし、ずっとここにいたいのではないかと。それでも彼女が下さなければならなかった自身への苦渋の決断。それに対して責任を取るべく、2日間限定でステージに戻ってきたのだろう。藍井エイルは歌と同じように、ものすごく純粋で生真面目な人だ。だからこそ、これまで自分と繋がり支えてくれた人たちを悲しみのまま置き去りにはできなかったのではないか。みんなの笑顔を取り戻して、これからもその笑顔を絶やさず生きていけるようにエールを送らなければ、活動休止なんてありえない。そうしてこの2日間だけ、これまででもっとも希望の光と輝きを放つ特別な藍井エイルとなってステージに立ち、いま自分ができる史上最大級のエールをみんなに最後の最後まで送り続けた。これが、藍井エイルが残した光、<LAST BLUE>だった。
紺碧の青に包まれた武道館。ステージには新井弘毅(G)、土屋浩一(G)、黒須克彦(B)、楠瀬タクヤ(Dr)、重永亮介(Key)、篤志(DJ)というエイルバンドに欠かせないメンバーが全員集合した。舞台後方からバックライトに包まれた藍井エイルがシルエットとなって浮かび上がる。静寂に包まれ、緊張感がマックスに高まった場内。青いドレスを着た藍井エイルが左手をあげ、真っ白い光に包まれたあと、「ただいま、武道館!」と叫んで、代表作の一つである「シリウス」でライブが開幕した。明るいポップチューンの幕開けにもかかわらず場内には“歌えるの?”“声は出るの?”“元気なの?”“表情は?”という張り詰めた空気が広がる。そんなオーディエンスの不安を次の「AURORA」のパワフルなハイトーンで拭い去るこの日ならではのオープニングは、見ているだけで緊張に包まれた。冒頭から続けざまにアニソンファンに彼女の人気を決定づけた曲を歌ったあとにMC第一声だ。
「こんばんは! 藍井エイルです。今日は全員で最高の時間を作りましょう。よろしく!」──藍井エイル
その声と表情でたちまち客席には安堵感が広がる。そうして解き放たれた観客たちが、いつものライブと同じようにタオルを振り回して「コバルト・スカイ」で場内に一体感を作り上げ、客席のテンションは急上昇していく。ものすごい数のレーザーが武道館に広がった「アヴァロン・ブルー」を起点に、曲はダークゾーンへと展開。アニメの世界とも見事に合致した屈指の壮大なバラード「GENESIS」が始まると、ドラマティックな曲展開に合わせて彼女の歌声が情感たっぷりに、この日は極限まで切なさを増幅させた。その圧倒的な歌のスキルに場内からは大きな拍手が沸き起こる。
「新曲、聴いて下さい」と始まった「アカツキ」も神がかっていた。オーディエンスがこの曲に合わせてサイリウムを赤に切り替えた場内、藍井エイルはこれまで聴いたことがないような悲鳴のような叫び声を響かせ、歌の深い痛みを表現して見せたのだ。こうして、観客をぐいぐい藍井エイルの楽曲の世界観に浸らせていった先にあったのは、デビュー曲「MEMORIA」だ。アニメのエンディングテーマだったこの曲の“君と過ごした証は確かにここにあるから“”溢れ出す涙は君へのありがとう“という歌詞を、観客一人ひとりを見つめるようにして届けていく藍井エイルに、ファンは静かに涙を流し、拍手を送った。
「HaNaZaKaRi」から始まった後半戦は「アクセンティア」で、「さあ、声出すよ!」と煽ると場内の照明がいっきに灯る。オーディエンスがハンドクラップとシンガロングを響かせると、藍井エイルは彼らに“たとえどんな明日がきても怖くなんてないから”とエールを返す。新曲「レイニーデイ」は新井が藍井エイルに送った応援ソング。ここでは足踏みしながら手拍子を入れる新しいパフォーマンスも誕生した。GLAYのHISASHIが書き下ろした「シューゲイザー」からは暗闇や夜空を切り裂いて光を求めて疾走するロックモードへ、間髪入れずにシフトしていく。武道館が揺れまくった「シンシアの光」で、“何があってもずっと鳴り止まないのは光、輝きの音”だと歌った藍井エイルは「ラピスラズリ」で“終わりのない夜を壊して涙を明日へとつなげよう”と伝え、「IGNITE」では“恐れずに自分を解き放て”と、サウンド以上に熱のこもった歌で観客を次々と鼓舞していく。
彼女が今回、ここまで熱いメッセージを続けざまに届けた理由の答えが、次の「Bright Future」の一節、“君の笑顔が 続くように”のためだったと思えたとき、オーディエンスの大合唱をよそに目頭がジーンと熱くなった。前回の武道館のような派手なセットやLED、映像などの演出は削ぎ落とし、MCもほとんどなく、ここまでシンプルなパフォーマンスで歌だけを届けてきた全ては、このメッセージをファンに伝えたかったからだろう。そうして迎えた「サンビカ」の“できないことなんてきっと無いから〜君の笑顔がこの胸にある”からの観客の“Glowin! Glowin! Glowin!”の連呼は、その笑顔と声が眩しすぎて、涙が止まらなかった。受け止め、記憶に刻み「サイコー!!」と叫ぶ藍井エイルの輝かしい笑顔。彼女の目も滲んでいるように見えた。
「ここまでずっと全身全霊込めて歌ってきました。最後まで全力で歌を届けるので、全力で楽しんでください」──藍井エイル
とこの日初めてMCらしい言葉を伝え、本編終盤に「翼」、銀テープが舞った「INNOCENCE」の2曲で、この先にある未来へ一人で踏み出す勇気までしっかり描いて見せた。「最高の思い出、最高の時間」と語り、この日の観客の叫びや歌声を「特別な声」という言葉で表現した彼女は、最後に「ありがとう! 武道館! みんなで最後に飛ぶよ」と観客とともにジャンプを決めてステージを後にした。
“エイエイルー”のアンコールに呼ばれ、赤いタータンチェックのコートを着て一人ステージに現れた藍井エイル。アリーナ席にはそんな彼女に向けて、メッセージを綴った横断幕も掲げられていた。まず最初に彼女は、8月から活動を休止したことについて語った。
「たくさんの心配とご迷惑をおかけしてごめんなさい。そして、待っててくれて本当にありがとうございました。今日のこの<LAST BLUE>が終わったら、私は無期限の活動休止に入ると発表させてていただいたんですが、この5年間を振り返ってみると、すごく楽しい思い出で溢れてるなと思ってます」──藍井エイル
そして今、この2日間のセットリストはファンと築き上げた5年間の軌跡をテーマに作ったことを伝えた。結果、ライブではベスト盤『BEST -E-』『BEST -A-』収録曲をほとんどプレイ。また、この5年間の出来事を振り返って、デビューしたときは口元を隠して活動していたことや、「AURORA」から顔を解禁したこと、最初のツアーは3本しかなくて初期の頃はメンバーと一緒に車に乗って地方を回っていたことなど、懐かしいエピソードを披露していく。以降、どんどんライブ本数が増え、武道館まで駆け上がることができたのは、「みんながいたから」だと感謝の気持ちを伝えた。この後、エイルバンドのメンバーを一人ずつ呼び込み、アンコールはデビュー前の藍井エイルのスタート地点となった「frozene eyez」を観客にプレゼント。
「ブドーカーン! 今日、最高だぞ! みんなに会えたこと、心の底から誇りに思ってるから。明日からも思いっきり笑顔で、明日からも思いっきり自信持って行こうぜー!! どんなに離れてても、私たち、いつだって繋がってるぞー。一つになろうぜ、ブドーカーン!」──藍井エイル
そう言って始まったのは「ツナガルオモイ」だった。“君に出会えた奇跡を誇りたい”“ツナガルオモイ 僕らの合言葉 不器用にでもずっとそばにいたいんだよ”。みんなに向けた精一杯の気持ちが一気に溢れ出し、聴くものの胸を締めつける。歌が終わっても、それは止まらなかった。赤いコートを脱ぎ、真っ白いワンピース姿になった藍井エイルがマイクを手に、ステージ中央に立った。
「ラスト1曲となりました。大切な5年間を振り返ると、感謝の気持ちが溢れます。ありがとうございました。(観客の拍手が鳴り止まず、涙を浮かべて声を震わせながら)私を見つけてくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう。私の楽曲を愛してくれてありがとう。いつも元気な言葉をかけてくれてありがとう。いつも素敵な笑顔を見せてくれてありがとう。いつも小さな背中を押してくれてありがとう。あったかい手のひら、いつもありがとう。大切な時間、一緒に作ってくれてありがとう。かけがえのない思い出、いっぱいくれてありがとう。これまで幸せな時間をくれてありがとう。支えてくれたファンのみなさんとスタッフのみなさんに心から感謝します」──藍井エイル
泣きながら、それでも自分の気持ちを一生懸命言葉にして伝える藍井エイルに、客席は次第に鼻をすする声と嗚咽に包まれていった。コンサートで、こんなにたくさんの男性ファンがタオルを目に押し付けながら、声を上げて号泣しているところを初めて見た。
「最後に、藍井エイルに関わってくれたすべての人に、目一杯感謝の気持ちを込めて歌わせていただきたいと思います。では聴いてください」──藍井エイル
そういって美しいバラード「虹の音」が始まると、客席のサイリウムが席ごとに色を変え、鮮やかなレインボーカラーを作り出す。これは、ファンが彼女のために用意したサプライズだった。“君がくれたものは温かく優しい 変わらない”まで歌った後、最後の最後に“ありがとう…”を涙声で声をつまらせながらも届けた藍井エイル。そうして、曲のエンディングがまだ続くなか、彼女は一人ステージを去った。
終演後のスクリーンには、これまでライブを行なうたびに撮り溜めてきたファンとの記念写真と、彼女が綴った“ありがとう”という文字が映し出された。この夜は記念撮影はなかった。“エイエイルー”コールの締めもなかった。「戻ってくる」とも「待ってて」とも言わず、復帰の約束もしないまま無期限の活動休止に入った。この潔さも藍井エイルなのだろう。これからは、彼女からもらったたくさんのエールを胸に、みんなが笑顔を絶やすことなく、藍井エイルに“あなたが戻る場所はここだよ、まだ繋がっているよ”と希望の光を灯し続けていくのだろう。いつでも藍井エイルが戻ってこられるように。
なお、この日の武道館公演の模様を収めた映像作品『Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 ~LAST BLUE~』が2017年2月15日にリリースされることが決定している。
取材・文◎東條祥恵
■<Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 at日本武道館 ~LAST BLUE~>セットリスト
2016年11月5日(土)OPEN:16:00 / START:17:00
01.シリウス
02.AURORA
03.コバルト・スカイ
04.アヴァロン・ブルー
05.GENESIS
06.アカツキ(新曲)
07.クロイウタ
08.KASUMI
09.Lament
10.MEMORIA
11.HaNaZaKaRi
12.アクセンティア
13.レイニーデイ(新曲)
14.シューゲイザー
15.シンシアの光
16.ラピスラズリ
17.IGNITE
18.Bright Future
19.サンビカ
20.翼
21.INNOCENCE
encore
22.frozen eyez
23.ツナガルオモイ
24.虹の音
■Blu-ray / DVD『Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 ~LAST BLUE~ at 日本武道館』
2016年2月15日(水)発売
▼Blu-ray版
■初回生産限定盤:Blu-ray+2 LIVE CD+Photobook ¥9,800-(税込)SEXL-90~92
【Sony Music Shop】https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=SEXL-90
■通常盤:Bluray ¥6,200-(税込)SEXL-93
【Sony Music Shop】https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=SEXL-93
▼DVD版
■初回生産限定盤:2 DVD+2 LIVE CD+Photobook ¥9,800-(税込)SEBL-223~226
【Sony Music Shop】https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=SEBL-223
■通常盤:2 DVD ¥6,200-(税込)SEBL-227~228
【Sony Music Shop】https://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?cd=SEBL-227
◆5周年記念ベストアルバム特設サイト
◆藍井エイル オフィシャルサイト
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