【インタビュー】ZYUN.「泣きながら生まれてきた全ての人たちに聴いてもらいたい」
■泣きながら生まれてきた僕たちが泣くことができなくなった大人になったり
■伝えようとしていたあの頃があるのに言葉を知ったら伝えなくなってしまった
――まるでお経のようだよね(笑)。次の「“ganbare”」は? あえて「頑張れ」を言う曲なんですね。
ZYUN.:僕は今まで「頑張れ!」とは言ってこなかったんです。「頑張ろう!」って言ってきて。それは「頑張れ!」って言うと、「一人で頑張って!」って言われているような気がして、淋しい思いをさせちゃうんじゃないかと思ったんですよね。あと「頑張れ」って、言った方も突き放しているとしたら、自分も一人になっちゃうんですよ。言った方も、言われた方も淋しい。
――歌詞の中にも描かれてますね。
ZYUN.:だから言ったことなかったけど、デビューして、みんなに「頑張れ、ZYUN.」って言われると、すごくパワーになるんです。「頑張れ」は嫌いだったのに、好きにさせてもらえた。それで、みんなにも、嫌いだったものや苦手だったものが受け止められたり、少しでも好きになってくれたらいいなと思って、「“ganbare”」っていう歌を描こうと思ったんです。だから、この曲は降りてきたと言うより、「頑張れ」っていう曲を描きたいと思ったのが先なんです。ノートに「“ganbare”」だけ描いて、降りてくるまで待ちました。
――相手を寂しくさせてしまう、気安く言う「頑張れ」とは違う種類の「頑張れ」があるということだね。
ZYUN.:うん。この曲は「かげおくり」と繋がっているような気がします。「帰る場所は用意しとくから」って歌詞にも現れているけど、一人で立ち向かわなければいけないことって、人生の中でたくさんあるんです。でも帰る場所は僕が用意しておく。頑張っていた、その場所が無くなろうとも、必ず君が戻ってくる場所、帰る場所というのは僕の音楽で作っているよっていうことなんです。基本的には僕の場所はそういう場所でありたい。僕は世界中からひとりぼっちをなくしたいと思って歌っているので。
――絶対に寂しくはさせないわけですね。
ZYUN.:そうです。あ、あと最後の一文は、ぜひ歌詞カードを見て、「やっぱりZYUN.だな」っていうオチを感じてほしい。本当はこう歌っていないから、スタッフさんからは訂正がきたんですけど、これじゃないとダメなんですって、そのままにしてもらいました。この曲は、まずは歌詞を見ないで曲を聴いていただいて、そのあと歌詞カードを見てほしい。
――「あの日のサドスティム」から「“ganbare”」までは、この数ヶ月に描いたけど、このあとの「MonSter」と「NON≒FiCTiON」は少し前のものということですね。
ZYUN.:はい。最初にも話したように「MonSter」は作った当時のままで、「NON≒FiCTiON」は、僕にメッセージをくれたファンの子の声があったから、今こうなったという証にしたかったからリアレンジを友達でもあるBACK-ONのヴォーカルのKENJI03にお願いして。
――「Signal」は、四つ打ちリズムが鼓動のようだからか、聴いているとドキドキしてきます。スキャットもすごく自然に入ってきて、トラックと一体化しているから気持ちよかった。
ZYUN.:いつもだったらDメロをガッツリ入れるんですけど、スキャットになっちゃったんだよなぁ(笑)。これは僕がよく行く渋谷のカフェで一人で書いたんです。すごくドラマティックで人間味のある曲だなぁと思っていて。待つのは嫌いじゃなくて一人の時間は得意なんだって言ってるけど、本当は退屈、待つのも嫌い。建て前と本音が交互にくるんです。僕の中で、この7曲の中で一番リアルなストーリーかもしれない。今まで「これ、僕の実話なんです」って、あまり言ったことないんですけど、この曲だけは、ほぼ僕の実話なんじゃないかと思います。この曲が降ってきた時を切り取った日記みたいな感じです。ZYUN.の1日はこうだったんだっていう。
――でも今の若者たちも同じことを思っていそうで、共感ポイントも多いと思う。
ZYUN.:だといいですね。「上辺だけの言葉でも人生変えるほどのpower持ってるんだよ」ってありますけど、これは今のSNSやネットの中で、とても思うことだったりします。上っ面だけの言葉だから、別に響かないでしょ?と思って、みんな言ってるけど、そんなことないって思う。その時のノリやギャグ、その時のテンションで言っていても、人の人生を終わらせることができちゃうと思うんです。自分の人生を終わらせることもできるし、二人の人生を変えてしまうこともある。言葉のパワーって、自分がたいしたことないって思ってても、相手が笑ってても、実はもしかしたら、相手の心を殺しちゃってるかもしれないんですよ。
――一度口に出すと言葉は取り消せないしね。
ZYUN.:うん。だから、この曲の中で、「上辺だけの言葉でも人生変えるほどのpower持ってるんだよ」っていうところは一番重たいかも。実はこの曲を作っていた時、同じカフェに二人のOLがいたんですね。すごい仲良く喋ってたのに、片方がどこかに行った瞬間に、残った一人が誰かに電話して、「早くきてくれない? すごいつまんないんだけど」って言い出したんですよ。すごい悲しくなっちゃって。
――それで建て前と本音が並ぶ歌詞にもなり。
ZYUN.:そう。でも、彼女の場合、どっちが本音かわからないんですよ。電話の相手には「マジでつまんないんだけど、早く来て」って言ってるけど、本当は一緒にいる相手のことはすごく好きだけど、電話の相手に早く来てほしいからそう言ってるだけとか。そうなると、好きな相手といることを「つまんない」って言ってる自分の心はすごく悲しくなっている。こういう悲しい気持ちにならないために僕はニュースを見なくなったのに、こんなところでもそんな場面に遭遇しちゃうのかと思って、途中で耳栓をしたんです。でもそれが現実なんですよね。そういう現実を受け入れた上で僕らの音楽をやって、この人たちと寄り添って生きていきたいなと思えたから良かったんですけど。
――ラストの「君が居ればそれだけで」はものすごいラブソング!
ZYUN.:はい。好きとか愛してるは今まで言わないでいたんですよ。あまりにも単純で本来は言う必要のないことだから。自分の好きな相手にしか見せないところや、誰にも見せないところが凝縮された曲です。こういう風に「今がすべてだ」って言っていたって、過去にヤキ持ちを焼いてもしょうがないと言うけど、絶対に妬いちゃうものですよね。今も、過去も、未来も全部ほしい、全部の理由に自分がなりたいってどこかで思ってるだろうなって。僕もこういう風に思うんだなって。
――カタカナ、ひらがな、漢字、あらゆる文字で「好き」が書かれていますよね。この曲までの間にずっと存在を肯定され続けてボディブローのように効いていたものが、「君が居ればそれだけで」でノックアウトされて倒れこむみたいな。
ZYUN.:ははは(笑)。そのまま寝てくださいという。
――Good nightって歌ってるし。
ZYUN.:そう。今回のアルバムは大きなテーマがありまして。「泣きながら生まれてきた全ての人たちへ」って帯に書かれているんです。それが全てで。泣きながら生まれてきた僕たちが、泣くことができなくなった大人になったり、泣きながらでも言葉がわからないながら伝えようとしていたあの頃があるのに、言葉を知ったら伝えなくなってしまったその矛盾。でもその矛盾が人間であり人生だからそれでいいんだよっていう。でも、伝えることを大事にしようと。さらに、「ZYUN.に会いたい」と思ってもらえるようなものにしたかった。もっと近くで歌を聴きたいと思ってもらえる、そんなアルバムになったらいいなと思って。
――初回盤にライブCDが入っているのもそういうことかな。
ZYUN.:はい。MCもそのまま入っています。初ライブで緊張もしていたし、歌詞を間違えているのもそのまま。でもありのままの自分を知って欲しかったから。プロの歌手としてピッチが外れていることや息継ぎが出来ていないことがどうなのか、歌詞を間違えることがどうなのか、それは作品としてどうなのかってこともあるのかもしれないけど。でも僕のアーティストとしてのあり方ってこうだよっていうことで。自分自身と向き合うというよりは寄り添ったアルバムになったので。このアルバムを聴いた人には、やっぱりライブに来てほしい。生で温度を感じてほしい。
――1月には大阪、名古屋、東京でライブもありますね。
ZYUN.:うん。このツアーにつながるアルバムになったらと思います。絶対、僕のライブに来たら、今まで自分が嫌だったこととか、自分を認められなかったことを認められると思うんです。僕がそういう風に、音楽で、みんなの存在で救われているから。こういう人が生きているんだから、自分はもっとラクに生きられるんじゃないかって思ってもらえたら。生きるアイテムとして僕のライブ、音楽というものをそばに置いてくれたらいいなと思います。
取材・文●大橋美貴子
2nd Mini Album『MonSter』
¥3,700 (in tax)
MUCD-1363 ~4
<通常盤/ CD>
¥2,000 (in tax)
MUCD-1365
初回・通常盤CD 収録曲
1.あの日のサドスティム
2.羅列
3.“ganbare”
4.MonSter
5.NON≒FiCTiON
6.Signal
7.君が居ればそれだけで
初回盤ライブCD 収録曲
『ALIVe ~Advent baptism~』
1.Wake up and “D”
2.I.D
3.勾玉
4.My Star
5.かげおくり
6.D.C.T
7.なんとなく
ライブ・イベント情報
2017.1.14 (土) 心斎橋Music Club JANUS(大阪)
2017.1.15 (日) ell.FITS ALL(名古屋)
2017.1.22 (日) 日本橋三井ホール(東京)
◆インタビュー(1)へ戻る
この記事の関連情報
【インタビュー】「DAM CHANNEL」20代目MCに森 香澄、サポートMCにチャンカワイが就任「プライベートな部分も引き出せたら」
2024年3月のDAM HOT!アーティストはアーバンギャルド、フジタカコら4組
【イベントレポート】<ビッグエコー35周年記念カラオケグランプリ>決勝大会が大盛況。応募4,061件の頂点決定
2024年2月のDAM HOT!アーティストはOHTORA、我生ら4組
2024年1月のDAM HOT!アーティストRKID'z、EINSHTEINら3組
2023年12月のDAM HOT!アーティストは学芸大青春、the paddlesら4組
2023年11月のDAM HOT!アーティストはACE COLLECTION、3markets[ ]ら4組
T-BOLANのメンバーと一緒のステージで歌えるチャンス、大好評実施中
2023年10月のDAM HOT!アーティストはNORTH、グラビティら4組